
この粗忽者
■野草を食べて空腹をしのぐほど貧乏な占い師・谷口遠子が住み込みバイトでもぐりこんだのは、大学付属の薬用植物園。冷徹な研究者・宇佐美に振り回されたり、園内の植物がらみのトラブルに巻き込まれながらも、満腹時のみ百発百中の占いで、次々難関を乗り越えていく…!?植物うんちくあり、ミステリーあり、ちょっぴりラブもありの新感覚ネイチャーコメディ!!
「さんすくみ」(→レビュー)の絹田村子先生の連載作です。巻数ついていないのでこれで完結でしょうかね。コメディなので、きちっとした締めがないという(笑)本作、タイトルから色々と想像する所があるかと思いますが、薬用植物園でのお話です。決してベジタリアンとか、女版岡本信人的なお話ではありません。ヒロインは、食うや食わずのギリギリの生活を送っている占い師・谷口遠子。所持金がなく、野草を求めて徘徊しているうちに、とある大学の薬用植物園へと迷い込んでしまいます。最近頻発しているという薬草泥棒として捕まったものの、占いによって犯人を見つけ出し、さらにバイトとして雇ってもらう所までこぎつけます。食い扶持を見つけたのは良かったものの、そこには冷徹で変わり者な研究者・宇佐美がおり、何かと振り回されてしまうのですが…というお話。
花食うと言いつつ、花を食べるシーンはあまりなく、むしろ草、それも毒草を口にする描写が非常に多いのが印象に残りました。大学付属の薬用植物園ということで、そこには様々な薬用効果のある植物が栽培されています。中には食用のものに見えて全然違う毒草があったり。そういったものに尽く引っ掛かるのが、このヒロイン。あらまし紹介だと、ヒロインがまともで研究者の宇佐美が変人かのように受け取られるかもしれませんが、二人ともかなり変わっています。ただタイプは真逆で、ヒロインが短絡的でアホなのに対し、宇佐美はやや身長で捻くれた感じ。

ヒロインは自分が得しようとしてドツボにはまり、結果まわりに迷惑をかけるような展開が多く、また宇佐美にあれこれ嵌められるパターンも多いという。一歩間違えればTRICKでの仲間由紀恵的なのですが、彼女の挽回ってそんなに多くなくて、結局やられっぱなしっていう所が泣ける。そこが魅力でもあるのですけれど。このパターンで毒草を引く率の高さたるや。
恋愛要素はほぼナシ。もしこれが連載続くという形になればあるのかもしれませんが、ひとまず現時点ではなし。恋愛よりも何よりも、まずは衣食住という感じが強いからでしょうか。占いの力は満腹時にしか発揮されないため、余計にその感が強くなります。読んでいて、これ占い料金を現物(ご飯)にしたいいんじゃないかとか思ったのですが、そうもいかないのか。
私は大学時代農学部だったので、こういった植物園というか農園は懐かしさを覚えます。ケシの花とか、そういえば栽培されているとかあったっけ。私は専攻がこういう系統ではなかったので、何ヶ月か限定で通っただけなのですが、キウイを収穫したりネギを植えたりと、なかなか長閑な日々でした。やはりそういう場では「これちょっと採っちゃっても大丈夫かな」とか下心が芽生えるわけですが、そんな欲求を心置きなく発揮してくれているヒロイン、ちょっと羨ましいです。
【男性へのガイド】
→専門知識が身につくほどでもなく、単純に職場コメディをみたいという方に。
【感想まとめ】
→絹田村子先生の作品らしい、ゆるめのコメディ。なのでポイントを絞って説明するのが難しいのですが、相変わらずなので、「さんすくみ」がお好きな方は変わらず楽しめると思いますよ。
作品DATA
■著者:絹田村子
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:flowers
■全1巻
■価格:429円+税
■試し読み