
人間に
慣れねば
■内戦下に造られ、今も都内にセンプクする戦闘用兵器ロボット“ドール”。それを回収する任務にあたる警視庁内極秘チーム、通称“D班”所属の篠。そして彼を守る警備用ロボット“クロハ”(人間型)と“SHIMA”(ぬいぐるみ型…?)。この厳しい任務の果てに得られるものとは…!?ゆるっとビシっと任務遂行!!
ITANの公式サイトで連載されている、祀木円先生の作品でございます。物語の舞台となるのは、近未来の東京。20年前に激動の内戦期を経て、現在は治安も良く平静の世となっています。主人公は、そんな世で警察官をやっている青年・篠。ある日発令が出され配属されたのは、警視庁内の極秘チーム・D班。内戦下に造られ今も都内に潜伏している、非常に戦闘力の高い戦闘用ロボット“ドール”を回収するのがその任務。チームとは言っても篠は基本単独行動。ドールの開発元であるタミーに常駐し、彼の警備用ロボットであるクロハと、ぬいぐるみ型のSHIMAと共に、未だ捕まっていないドール達を追う…!というお話。

ロボットは大別して2種類。ターゲットになるドールや篠の警護をするクロハのような人間型(パッと見人間と見分けがつかない)と、SHIMAのようなぬいぐるみ型。
いやー、クセになる雰囲気で面白かったです。ベースというか、関連作品として無視できないのが、作者さんの代表作でもある「しゅんにゃん」。当方、恥ずかしながら存じ上げなかったので、後追いで読んでみたのですが、こちらも雰囲気は違えどハートフルで凄く良かったです。この「しゅんにゃん」に、ぬいぐるみ型のロボットが登場するのですが、本作はその世界観を受け継ぎ、たくさんのロボットたちが登場します。
「しゅんにゃん」は非常にハートフルで癒し作用の強い日常系のお話だったのですが、「トウキョウ・D」は戦闘用ドールの回収という大きな物語が流れているため、自ずとシリアスな方向へと流れていこうとします。ただすんなりとそういう雰囲気にならないのが、この作品の特徴であり、面白いところ。設定だけ見ればハリウッド並みのスケールになってもおかしくないのですが、ドール達は諸事情から東京の外に出れないため、ある程度スケールは小さめに。また積極的にこちらに攻撃をしかけてくるわけでもありません(不必要な戦いは好まず、ただ回収されなければそれで良いだけ)。加えて主人公の篠は任務に対してはあまり本腰でなく、天下りした元官僚のように、緩い日常を送ります。さらにそこに、癒し系で空気の読めないSHIMAが入ってくるので、もうユルユルに…。とはいえ篠の出自はドールにとって充分興味の対象になるもので、ちょいちょいと接点を持ちに来るという。ゆえに、ガチでぶつかり合わないけれど、なんやかんや接点はあるよという奇妙な関係の元、シリアスさと日常系ならではの緩さが混ざり合ったなんとも不思議な雰囲気を醸し出しているのです。

一歩間違えば命さえも…という状況なのだと思うのですが、今ひとつそんな雰囲気を感じられない空気感。キャラ達のテンションに加え、ちょいちょいと日常系のネタが投入されるからなのですが、その要因筆頭がシマ。もう可愛すぎて仕方ないです。表紙でシマにスポットが当たるのも納得ですね。一応こんな容姿をしていますが、家庭用警備ロボットなんです。ただドール達に比べると、どうしても戦闘力に劣るため、本作ではマスコット的存在に。でもいいんです、はい。
巻末のオマケマンガを読むと、どうも2巻で完結するっぽいのですが、本当なんでしょうか。ただ1巻終了時点でドールの回収数はゼロ。さらにカップケーキを作って幕切れるという自由っぷりで、全く完結への道筋が見えないという。面白いし、もっと伸ばしても良いんじゃないでしょうか(お願い)。
【男性へのガイド】
→女性キャラがほぼ登場しない以外は特に何もネックにはならないかと。
【感想まとめ】
→この雰囲気はクセになります。手近な所に置いておいて、ふと読み返したくなりそうな、ステキな作品と出会えました。
作品DATA
■著者:祀木円
■出版社:講談社
■レーベル:KC ITAN
■掲載誌:ITAN
■既刊1巻
■価格:581円+税
■試し読み:第1話