1巻レビュー→自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
4巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」
西炯子「姉の結婚」(6)
「欲しいもの」
それはいつも手に入らない
どこに行けば手に入る…?
■6巻発売しました。
真木誠との不倫関係を解消した後、地元での生活に閉塞感を抱きつつも仕事に打ち込む岩谷ヨリ。そんな彼女に、東京に出てくるようにアプローチし続ける人気作家・夢幻堂遥。一方、ヨリを諦めきれない真木は、ある気一空くを実行に移すことに…。アラフォー女性の不安と葛藤。オトナ女子必読の恋愛指南、第6巻!
〜幸せな妹、幸せな友達〜
早6巻、白ベースの表紙は彩り豊かな本棚の中でも毎回目を引きますね。物語は二人がそれぞれ、現在の生活に変化をもたらそうと様々画策する様子が描かれます。そのため、二人が相見えて何かするということはなく、完全に別行動での進行。
まずはヨリの身辺で起こった変化ということで、夢幻堂遥から東京へと誘われるという出来事がありました。ただこれは、どちらかというと目に見える選択肢。むしろ個人的に印象に残ったのは、ヨリの身近な二人の結婚でした。
〜いつから友達の結婚が堪えるようになるのだろう〜
まずは彼女のおひとり様仲間であった新川さん。カミングアウトの直前まで、ヨリは「仲間」なんて意識を持っていたようですが、その後に結婚を報告されます。それを受けて、お互い「おめでとう」「ありがとう」というやりとりをしていたのですが…

何気に友達の結婚報告が堪える
性別的にも年齢的にも、自分自身でなかなかこういう感覚を味わうことはないのですが、職場の同僚の女性のお話を聞いていると、段々と友達の結婚式に行くとツライ・堪えるようになってくるようです。その辺って、いつ頃から感じるものなんでしょうか。自分の精神状態に比例しそうなものではあるのですが、自分には想像のつかないような感覚がそこにはあるのでしょう。私は結婚式に行くたび「もし自分が結婚してもこんなに人呼べないわ…」と不安になるときはありますが、そんなのは可愛い悩みなのでしょう。
一方、こうしておひとり様同盟みたいなくくりで付き合うようになると、逆に報告する側も気を遣いそうですよね。内心「ごめん」とか言っちゃいかねなそうなのですが、それは決して口にしちゃダメ。「ありがとう」「おめでとう」は美しくあるべきやりとりではあったのですが、どこかよそよそしい感じがしなくもなかった…というのは、穿った見方をしすぎなせいですかね。
〜幸せな妹の結婚〜
続いては、ヨリの妹であるルイの結婚。キャラ的にササっと結婚しそうという印象でしたが、やはり。こういう人って、いますよね。わがままなんですけれど、愛されていて、そして自分の思い通りの人生を送っている人。素敵で、そして羨ましい生き方です。そんな彼女の相手役となったのは、昔はワルだったけれど今は穏やかな好青年。

非常に優しそうで、そしてルイのことが大好き。彼女の全てを受け入れているような雰囲気で、「この人絶対相手のこと幸せにできるな」感がすごい。
〜二人の結婚が表しているもの〜
印象的なのは、どちらも幸せに溢れている表情をしていること。いや、そりゃあそうか。結婚する時なんて、幸せなはずなんですもの。なんかこの作品で描かれてた結婚って、なんだかすごく歪んでいたんです。それは、家族という枠で捉えたときも同じ。6巻にて描かれますが、真木の家もヨリの家も、どこか歪みがあったように映ります。そこかしこにある歪み。正しい家族というのは決して存在しないけれども、理想はそれぞれの中に確かにある。それを欲求することが、根源的な結婚に対する原動力になるんじゃないかとも思うのです。新川さんの結婚もそうですが、何よりルイの結婚が、それを体現するシンボリックなものになってくるんじゃないのかな、とかちょっと思ったり。あそこだけは、いつまでも幸せたっぷりな雰囲気でいて欲しいものです。
あ、あとどっちも男の方からの猛烈アプローチなんですよね。真木もそうですけど、そういう文法じゃないとだめなのかしら。もちろん男性がプロポーズをする方が形にはなるんですけれども、精神的な力関係で、明確に追う側と追われる側が別れていまして。そんな中、ヒロインのヨリも、真木の妻も、真の意味では必要とされた経験がない人でした。そんな結婚できない(しづらい)人との対比として、描かれているのかもしれません。結婚が恋愛の延長であり、恋愛とはどこまでも相手を欲するものなのだとしたら、ヨリはそこまでして欲した存在がいなかった(ゆえに真木の恋愛云々の話が出てくるわけで)。これはやっぱり自ら動かないと、ということなのでしょうか。だから、ヨリが重ねるべきは新川さんでもルイでもなくて、そのお相手ということになるのかもしれません。
〜子供の存在〜
今回は、結婚を考える際に切っても切れない関係である、とあるファクターについてあれこれ描かれていました。そういえばこれまでガッツリこのテーマについては描かれていなかったような気がします。それが、子供の存在。今回描かれたのは3度。ひとつは、不倫相手の子供を身ごもった女性との再会。そしてもう一つが、ヨリ自身が妊娠したとウソをついたこと。そして最後のアレ。いやそう来ますか…。
物語的に一番大きな意味を持つのは最後ですが、ヨリのそれも結構印象的でした。彼女には子供をもうけたいという欲求があるのか、ってのがちょいと気になるところです。当時はそういうことはあんまり考えずにあのウソをついたのでしょうが、気がつけば妊娠出産が厳しい年齢へと段々と…。そういった欲求もまた、結婚への意欲として反映されてくるところだと思うのですが、ヨリの場合はその辺もやや弱い感が。とにかく理路整然と収まり良く生きるための選択肢として“結婚”があるようで。繰り返しになりますが、もっと収まらないほどに自らの欲求で動く姿が見たい…!
なんだかとりとめのない文章となってしまいましたが、色々と考えさせられることの多いお話でした。ほんと読み返すのも億劫な文章に…。内容も問題ありかもしれません、すみません。はい。
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
4巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」

「欲しいもの」
それはいつも手に入らない
どこに行けば手に入る…?
■6巻発売しました。
真木誠との不倫関係を解消した後、地元での生活に閉塞感を抱きつつも仕事に打ち込む岩谷ヨリ。そんな彼女に、東京に出てくるようにアプローチし続ける人気作家・夢幻堂遥。一方、ヨリを諦めきれない真木は、ある気一空くを実行に移すことに…。アラフォー女性の不安と葛藤。オトナ女子必読の恋愛指南、第6巻!
〜幸せな妹、幸せな友達〜
早6巻、白ベースの表紙は彩り豊かな本棚の中でも毎回目を引きますね。物語は二人がそれぞれ、現在の生活に変化をもたらそうと様々画策する様子が描かれます。そのため、二人が相見えて何かするということはなく、完全に別行動での進行。
まずはヨリの身辺で起こった変化ということで、夢幻堂遥から東京へと誘われるという出来事がありました。ただこれは、どちらかというと目に見える選択肢。むしろ個人的に印象に残ったのは、ヨリの身近な二人の結婚でした。
〜いつから友達の結婚が堪えるようになるのだろう〜
まずは彼女のおひとり様仲間であった新川さん。カミングアウトの直前まで、ヨリは「仲間」なんて意識を持っていたようですが、その後に結婚を報告されます。それを受けて、お互い「おめでとう」「ありがとう」というやりとりをしていたのですが…

何気に友達の結婚報告が堪える
性別的にも年齢的にも、自分自身でなかなかこういう感覚を味わうことはないのですが、職場の同僚の女性のお話を聞いていると、段々と友達の結婚式に行くとツライ・堪えるようになってくるようです。その辺って、いつ頃から感じるものなんでしょうか。自分の精神状態に比例しそうなものではあるのですが、自分には想像のつかないような感覚がそこにはあるのでしょう。私は結婚式に行くたび「もし自分が結婚してもこんなに人呼べないわ…」と不安になるときはありますが、そんなのは可愛い悩みなのでしょう。
一方、こうしておひとり様同盟みたいなくくりで付き合うようになると、逆に報告する側も気を遣いそうですよね。内心「ごめん」とか言っちゃいかねなそうなのですが、それは決して口にしちゃダメ。「ありがとう」「おめでとう」は美しくあるべきやりとりではあったのですが、どこかよそよそしい感じがしなくもなかった…というのは、穿った見方をしすぎなせいですかね。
〜幸せな妹の結婚〜
続いては、ヨリの妹であるルイの結婚。キャラ的にササっと結婚しそうという印象でしたが、やはり。こういう人って、いますよね。わがままなんですけれど、愛されていて、そして自分の思い通りの人生を送っている人。素敵で、そして羨ましい生き方です。そんな彼女の相手役となったのは、昔はワルだったけれど今は穏やかな好青年。

非常に優しそうで、そしてルイのことが大好き。彼女の全てを受け入れているような雰囲気で、「この人絶対相手のこと幸せにできるな」感がすごい。
〜二人の結婚が表しているもの〜
印象的なのは、どちらも幸せに溢れている表情をしていること。いや、そりゃあそうか。結婚する時なんて、幸せなはずなんですもの。なんかこの作品で描かれてた結婚って、なんだかすごく歪んでいたんです。それは、家族という枠で捉えたときも同じ。6巻にて描かれますが、真木の家もヨリの家も、どこか歪みがあったように映ります。そこかしこにある歪み。正しい家族というのは決して存在しないけれども、理想はそれぞれの中に確かにある。それを欲求することが、根源的な結婚に対する原動力になるんじゃないかとも思うのです。新川さんの結婚もそうですが、何よりルイの結婚が、それを体現するシンボリックなものになってくるんじゃないのかな、とかちょっと思ったり。あそこだけは、いつまでも幸せたっぷりな雰囲気でいて欲しいものです。
あ、あとどっちも男の方からの猛烈アプローチなんですよね。真木もそうですけど、そういう文法じゃないとだめなのかしら。もちろん男性がプロポーズをする方が形にはなるんですけれども、精神的な力関係で、明確に追う側と追われる側が別れていまして。そんな中、ヒロインのヨリも、真木の妻も、真の意味では必要とされた経験がない人でした。そんな結婚できない(しづらい)人との対比として、描かれているのかもしれません。結婚が恋愛の延長であり、恋愛とはどこまでも相手を欲するものなのだとしたら、ヨリはそこまでして欲した存在がいなかった(ゆえに真木の恋愛云々の話が出てくるわけで)。これはやっぱり自ら動かないと、ということなのでしょうか。だから、ヨリが重ねるべきは新川さんでもルイでもなくて、そのお相手ということになるのかもしれません。
〜子供の存在〜
今回は、結婚を考える際に切っても切れない関係である、とあるファクターについてあれこれ描かれていました。そういえばこれまでガッツリこのテーマについては描かれていなかったような気がします。それが、子供の存在。今回描かれたのは3度。ひとつは、不倫相手の子供を身ごもった女性との再会。そしてもう一つが、ヨリ自身が妊娠したとウソをついたこと。そして最後のアレ。いやそう来ますか…。
物語的に一番大きな意味を持つのは最後ですが、ヨリのそれも結構印象的でした。彼女には子供をもうけたいという欲求があるのか、ってのがちょいと気になるところです。当時はそういうことはあんまり考えずにあのウソをついたのでしょうが、気がつけば妊娠出産が厳しい年齢へと段々と…。そういった欲求もまた、結婚への意欲として反映されてくるところだと思うのですが、ヨリの場合はその辺もやや弱い感が。とにかく理路整然と収まり良く生きるための選択肢として“結婚”があるようで。繰り返しになりますが、もっと収まらないほどに自らの欲求で動く姿が見たい…!
なんだかとりとめのない文章となってしまいましたが、色々と考えさせられることの多いお話でした。ほんと読み返すのも億劫な文章に…。内容も問題ありかもしれません、すみません。はい。