
早く大人になってやりたいと
ずっと思っていたのに
初めて一分一秒が
惜しいと感じた
■多少趣味は違えども、こよなく自分を愛する新本姉弟。かなり不思議な性格だけど、殊更モテる斉藤姉弟。ニート系な姉たちは親友で、リア充系(?)な弟たちも親友同士。見ためはリア充、中身は残念。そんな2人組の姉弟、親友達がおくる、かなりゆるだら、けっこう青春な日常コメディ!
コミックポラリス連載作、そしてアニメ化もされました(テレ東で放送中のようです)。1・2巻連続発売で、かつアニメ化。単行本の帯もアニメ化の話題で、キャラ名よりも声優さんの名前が大きかったりと、アニメ化前提での作りになっている感が見受けられます。結構なプッシュがあったんじゃなかろうかと、政治的な匂いを感じたりもしますが、アニメをあんまり見ない人間からしたら、あんまり関係なかったり。そこにある単行本を、素直に楽しむだけです。

さて本作ですが、とある仲良しな2組の姉弟の日常を描いたコメディとなっています。片方の姉弟は、新本姉弟。美形で自分大好きな二人、恋愛にも積極的だけれど何故だかモテない。姉・チコは大学生ですが、男が少ないと嘆きひきこもり気味でかつガチのオタク。弟・チカは高校生で、能天気に日々を過ごす恋したい年頃の男の子。姉がモテないのはオタクが原因らしく、一方のチカはチャラすぎるのがダメなようです。

一方そんな新本姉弟と仲良しなのは、斉藤姉弟。新本姉弟とは似ても似つかぬ性格で、クール系で不思議な完成の持ち主、そしてこちらは異性にモテる。姉のマコはフリーターで、低エネルギーで効率的に生きたがる性格。そして弟のマオが大好き。弟のマオはいつもチカと一緒。無口であまり感情を表に出さないながら、密かにチコのことを思っています。
姉同士は学生時代からの親友同士で、今は活動場所ころ違えど、お互い暇な学生とフリーターでありインドア派…そのため自ずと一緒に過ごす時間は多くなります。一方の弟同士も高校生と言えど帰宅部であり、気がつけば4人揃うことも珍しくはありません。そんな狭い空間・間柄で繰り広げられる、日常系のコメディ。一応1ページごとにオチが付く形になるので、イメージ的に近いのは4コマとかそういうものかも。「君と僕」なんかに代表されるような、輝かしい青春を送れるはずの年頃の子たちが意外にも狭やかな場所で、けれどもそれが心地よいという、なんともゆるい空気が流れています。
ただ「日常系」なんて括ってしまうにはもったいないというか、そこには確かに時間が流れていて、けれどもキャラ達がそれに抗うような動きを見せるのです。言い換えるなら「モラトリアム漫画」なのだと思います。姉二人はフリーターと大学生で日々を気楽に過ごしていますが、考えなければならない将来というものがすぐ目の前に。また弟二人も高校生で楽しく過ごしていますが、こちらも高校卒業後の進路を考えなければならない。そんな問題があるのはわかっているのですが、けれども考えたくなんかないし、今この瞬間が結構楽しい。そして今すぐ考えずとも、なんとか間に合うだけの時間がそこにはあるという。2巻までの間、彼らはそれぞれに自分の将来を考えるのですが、2巻までかけてようやく半歩進んだだろうかという感じ。この一挙手一投足が遅く、時に一日二日当たり前のように消費してしまう感じ。自分の大学生活が思い起こされて、なんだかとっても不思議な気分になりました。
というわけで、表面上は変わり者同士の日常ゆるコメディを描いているのですが、その後ろには迫り来るモラトリアム期間の終焉という緊張感が見え隠れしており、なんだか不思議な雰囲気の流れる作品となっています。そして基本ゆるく流れている中で、ふと本音がこぼれる瞬間があり、それがやけにあったかかったりプチ感動を生んでいたり。

そういった感覚というのは、問題意識の有無という所に起因するのですが、能天気な新本姉弟よりも、若干真面目(な気がする)斉藤姉弟の方がそれが強め。というかもの凄く色々考えていて、如何にも一人立ちできそうな風に見せているのに、むしろ相手への依存度が強いのは斉藤姉弟なんですよね。だから余計に変化に敏感というか。前に向かって進もうとするチコ姉の姿をみてちょっと落ち込んだり、他に友達がいることを知ってイラッとしたりするマコの感覚は、ものすごく分かるので、このキャラクターが大好きになりました。
弟同士でもやっぱりマオの方が好きですかねー。というのも一途にチコのことを想っていて、人一倍青春の匂いを感じさせるのが…!静かながら何気に相手のことを思って色々やっているのですが、それが素敵。そしてあんまり報われないという。大きな一石を投じる要素を持ちえているのですが、さてそれはいつ出てくるのか。変わらぬ日々が愛おしい、けれども変わったら変わったで面白そうな、そんなお話です。
【男性へのガイド】
→メインキャラ4人の誰かしらに共感する部分はあるかもしれません。絵柄や話題は女性が好みそうなものは多いですが、コメディとしてだけでなく、モラトリアム漫画としての側面から見れば男性も好みそうな要素はあるんじゃないかと思っています。
【感想まとめ】
→先入観を持って読んだらちょっと違うテイストだったので面食らったのですが、慣れれば結構面白い。2巻は勢いそのままにキャラに共感しつつ楽しめました。
作品DATA
■著者:慎本真
■出版社:ほるぷ出版
■レーベル:ポラリスコミックス
■掲載誌:COMICポラリス
■既刊2巻
■価格:571円+税
■試し読み:第一話【PC】/【スマートフォン】
二話目以降