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Tag [新作レビュー] 2013.12.01
1106329274.jpg神尾葉子「いばらの冠」(1)


となりには
悪魔が笑う



■深海のばら、通称“いばら”。昔から不思議なものが見え、しかも歯に衣着せぬ発言ばかりだから、周囲からは孤立してばかり。16歳の誕生日が近くなったある日、突然目の前に現れた美しい謎の男。その男は自分を“悪魔”だと言い…!?悪魔と女子高生の最凶コンビ、誕生!?

 「花より男子」の神尾葉子先生の新作です。別冊マーガレットでの連載と、まだまだ中高生向けの媒体で活躍されており、すごいですね。さて、今回はこれまでのお話とはちょっと趣向の違う作品となっています。何が違うかというと、明らかにファンタジーという。ヒロインは普通の人間で、その性格からちょっと浮いている女子高生・のばら。昔から霊感体質で変なものが見え、それによりいつも孤立。またそれに弱るのではなく、むしろ反発して、思ったことをなんでもストレートにぶっ込む性格に。そんなある日、彼女の目の前に現れたのは、宙に浮く美麗な見ための男。彼は自分のことを“悪魔”と言い、のばらの家に居座るようになったのですが…というあらまし。
 
 霊感体質の女子が悪魔と同居するというお話。コメディではありません。あらすじ説明をさらに補強すると、実はのばらは幼い頃に亡くなるはずだったのですが、彼女の祖父が強く願ったことにより悪魔が召還され、命を助ける引き換えに、のばらが大きくなったら悪魔の“エサ”を集める仕事をさせる約束をした…という経緯があったもの。その仕事の開始期間が16歳の誕生日というわけ。また悪魔のエサとなるのは人間の負の感情。それをのばらの体を通して物質化するのですが、負の感情を持つ人達と関係しなくてはいけないので、都度都度トラブルが起こるという形で物語は転がっていきます。


いばらの冠
思い切ったファンタジー設定で、別冊マーガレットよりもマーガレットの方がしっくりきそうな印象があります。またファンタジーと言えど、その文法は神尾葉子作品のソレ。一本気な性格のヒロインがクセのある相手役(今回は悪魔なので相手役となるのかはわかりませんが)に振り回されるも、対等に張り合うように頑張るという構図で、またその周りには明確に悪意のある存在がいるという。そしてこれらもヒロインとのバトルを通して後に仲間になってくれるのでしょう(予想)。基本振り回されっぱなしですが、それでも言うときは言う。今回も強いヒロインです。

 
 正直悪魔に巻き込まれたという以上の物語背景の説明がないことから、これから本格的に物語は動いてくるものと思われます。現時点ではキャラクターの成りが分かった程度なので、全貌も面白さも語るまでにはなかなか。別マでは色モノ的なポジションになるとは思いますが、神尾葉子先生ですし、巻数を重ねてキッチリまとめあげてくるはずで、目下の心配は本誌でウケるのかという所でしょうか。


【男性へのガイド】
→神尾葉子作品に触れたことがある人なら、ああいう雰囲気まんまですよという。
【感想まとめ】
→変わり種であれど文法は神尾先生のそれ。ヒロインは悪いやつに監禁されたり、やられっぱなしでなくズバッと口で対抗したり。相変わらず気持ちの良いヒロインでございます。


作品DATA
■著者:神尾葉子
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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