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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.12.08
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なんかイヤな予感…


■「おかしいな。俺の足元、知らぬ女児。」
ネガティブだけど根は前向きな大学生、路地静流。とある休日、彼が出会ったのは運命の恋…ではなく、見知らぬベイビー!?なんとその子は、同じ大学で想いを寄せている、憧れの奈々さんの親戚の子だった…!人付き合い苦手系男子と、ぐいぐい来るちびっこ・心のあったかコメディ。

 最近新刊を出しまくっているコミックポラリスからの単行本です。本作は第1弾になるので、発売はちょっと前ですかね。作者は奥山ぷく先生。作品経歴を見ると、主にBLで描かれている漫画家さんのようです。もちろんですが、本作はノーマルです。
 
 主人公はちょっと暗めの男子大学生・路地静流。根は前向きではあるものの、ネガティブでインドア派。印象としては群れられずに少数の友達と静かに日々を過ごす、理系学部でよくいそうな男子って感じでしょうか。そんな彼の専らのトレンドは、同じ大学ではじめて好きになった女の子・奈々さん。「付き合うなんてそんな突飛なことは考えない、けれども、連絡先…いや、せめて名前くらいは覚えてもらいたい!」と、彼女がよく出没するという公園で待っていたら、何やら見知らぬ幼女が隣に。離れようとしても付いてくるし、無下に扱えば泣かれそう。どうすることもできずにあやしていると、なんとその子は奈々さんの親戚の子であるということが判明。幼女の異様な懐きっぷりから、子供好きのあやし上手と奈々さんにご認識された結果、以降何かと子供を交えつつ交流を持つことになるのですが…というお話。


Baby,ココロのママに1−1
 子供なんて別に全く興味がないけれど、好きな子とつながりを持てるのであれば、甘んじて受け入れよう…そんなスタンスの男の子が主人公。そしてこういうタイプのキャラってのは、往々にして巻き込まれ体質なんですよね。何かと子守りに巻き込まれ、受け入れちゃって、心で叫びつつも根は真面目なので結構頑張っちゃっうという不憫さ。でも終わってみればまんざらでもなかったな、という。見よ、この体の張り具合。


 巻き込みの源泉となるのは圧倒的に奈々さん。いつも笑顔で清い心の持ち主であるのですが、ド天然の気があり、善意のトラブルメーカーとして活躍。さらに親戚の幼女・米田(苗字です)も非常にアクティブな子なので、これまた色々と物語に動きをもたらします。そのため主人公が安らげる時間というのは作中でも本当に一瞬だけで、終始慌ただしく駆け回るという。頑張り具合がすごいんですよ。
 
 恋愛発進ではあるものの、メインは子育て(子守り)。そういう意味では「ひなたま」(→レビュー)や「flat」(→レビュー)あたりと同じ系統と言えるかもしれません。ただこっちの場合は体の張り具合が一歩抜けていて、またテンポも速くアクロバティック。あぁ、先の2作品の様相と呈しつつも、つまるところエッセンス的に近いのは「ママはテンパリスト」(→レビュー)なのかも。変に類型化するのは野暮ではあるのですが、なんとなくイメージ掴めたでしょうか?


Baby,ココロのママに!
ナチュラルにこんなことをしてしまう奈々さんは優しさと天然さのかたまり。こういった行動に、路地くんは逐一たじろぐのでした。だから好きなんですよね、きっと。


 1巻時点ではドタバタコメディ一本という感じですが、恋愛も発展するだけの下地は十分。ヒロインが天然なので、なかなかその真意は読み取れず、またなかなか恋愛方面の空気を出しづらい部分はあるのですが、これだけ頑張っているのだから多少報われたっていいはず…!あと思わぬご褒美があったときに路地くんがどれだけたじろぐのか見てみたいってのも(笑)

【男性へのガイド】
→ベビーシッティングものって男性にどれくらい訴求するテーマなのかわかりませんが、男性主人公で動きのあるコメディでもありますので、割と受け入れられる下地はあるんじゃないでしょうか。
【感想まとめ】
→面白かったです。コメディ要素だけでなく、後半に恋愛要素投入の兆しもあったりで、期待が膨らみます。


作品DATA
■著者:奥山ぷく
■出版社:ほるぷ出版
■レーベル:ポラリスコミックス
■掲載誌:ポラリス
■既刊1巻
■価格:571円+税


■試し読み:第1話 【PC】/【スマートフォン】
2話目以降

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
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レビュー
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レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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BEARBEAR
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かみのすまうところ。
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レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。