
あたし
ここでの40日飽きない気がしてきた…
■東京で合コン祭りのはずが、夏休みをお婆ちゃんの家で過ごすことになった理緒。電車に乗って数時間、お婆ちゃんの家があるのは、山と川と畑に囲まれた田舎。夏休み中ずっとという長さに不安を覚えていた中、そこで理緒が出会っのは、硬派だけど少し意地悪な男子で…!?蟬の声と川のせせらぎの中、青春よりもっと青くて熱い、夏空みたいな恋、はじまる…!!
「隣のあたし」(→レビュー)や「スプラウト」などを描かれている南波あつこ先生の新作です。タイトルがなんか凄いことになってますね。今回描かれるのは、田舎での夏休みに生まれた恋物語。主人公は、高校生となった今でも“運命の出会い”を夢見ている女子・理緒。合コンに連れられても、イマイチピンと来ない。運命の出会いもないままに迎えた夏休み、両親からの要請で、夏休み中ずっと田舎のお婆ちゃんの家で過ごすことに。東京での夏休みはきっと楽しかったはず、40日も友達に会えないなんて…落ち込みながらスタートした夏休みは、一人の男の子との出会いによってキラキラと輝くものへと変貌を遂げます。その村の酒屋の倅という彼・吟蔵くんは、理緒に田舎ならではの魅力を教えてくれます。しかしあることをきっかけに、彼は何やら冷たい態度を取り…というお話。

山と川に囲まれた田舎の夏は、遊び場がたくさん。山には草花が咲き誇り、川で泳ぎ、夜になれば満天の星空。一人で見ても良いですが、気になる人と一緒だったら、さらに違った魅力が…。
南波あつこ先生の作品って、こう好きになるきっかけであるとか、好きになっていく過程がありありと伝わってきて、すごく良い気分になるんですよね。本作も爽やかな青春の匂いを一杯に感じることのできる作品になっております。今となってはもう戻ってこない、大事な時間・青春の輝きがそこにはありました。1話目読んだ時点で「今回もさすがです」と。これまでの作品が好きならば、まず間違いありませんので、はい。
あらまし紹介で、吟蔵が突如理緒に冷たくなると書きましたが、それは誤解によるもの。吟蔵は理緒のおばあちゃんと仲が良く、なかなか田舎にやってこない理緒のことを「あんな優しい婆ちゃんを放っておいている悪い奴」と思っていたという。東京住まいの理緒がなかなか東京にやってこれないのは事実ではありますが、二人の関係は良好。一時ギスギスした関係になりますが、すぐに打ち解けます。あとは田舎での生活で、吟蔵の友人たちとも触れ合いつつ、日々を過ごして行くという流れ。至極真っ当なイベントたちと、ちょっとした事件が起きつつ、その中で相手への想いを強めていくという、ストレートな青春恋愛ものの様相を呈します。
南波あつこ先生の作品というと、相手に彼女や彼女っぽい存在がいて、ギスギスとしたライバル関係になりながら、最後はこっちを振り向いてくれるというパターンが定番(個人的に「南波節」と呼んでいます)。今回も、そういうポジションに置かれている子が一人。吟蔵の家の近くで同じ商店をやっている家の娘で、両親は二人をくっつけようとしているという。ただ彼女の場合、恋愛関係にあるわけではなく、今までのライバルのようにギクシャクとした関係に拍車がかかりそうな性格の持ち主でもなさそうです。というのも現時点でものすごくサッパリとした性格で、あんまり恋愛に固執しなそう。そして何より巨乳(関係のない話題)。

この子絶対良い子だもの、既に惹かれております、はい。
本作のポイントは、40日間というタイムリミットが明確に切られていること。最初こそ1日1日が普通に流れて行きますが、この土地、ここで暮らす人たちとの関係が強まっていくごとに、1日1日がもったいなく感じてくるはず。恋愛で言えば答えをしっかりと出さないと行けないわけで、焦りを感じつつの恋愛模様になるやもしれません。40日間という期限設定は、夏休みで1日中使えるということを差し引いても、恋愛を成就させるにはやや短めかも。そのため変に深みにはまるようなドロドロとした雰囲気にもならず、物語が展開してくれるのではないかなぁと期待しています。
物語の舞台は架空の土地ですが、イナゴを食べる描写があることから、長野がモデルになっているんじゃないかと思います。私も故郷は長野なのですが、イナゴは食べましたよ。佃煮なので、味は甘いだけですし、意外と美味しいのです。故郷愛もちょいとくすぐられる本作、安定の出来で、今回ももちろんオススメです。
【男性へのガイド】
→少女マンガがお好きな方にはうってつけ。
【感想まとめ】
→青春期のキラキラした恋愛模様、爽やかの一言に尽きます。物語を楽しむと共に、戻ってこない日々を懐かしんで、少しセンチメンタルな気分になりました。
作品DATA
■著者:南波あつこ
■出版社:講談社
■レーベル:KC ベツフレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:429円+税
■試し読み:第一話