
まぁそうなったら
おれがまた見つけてやるよ
■女の子と話すことが苦手なヘタレ男の百合ケ丘君と、影が薄くて誰からも気づかれないステルス女の西山さん。二人の共通点は、隣の席の結城さんに憧れていること。ひょんなことから、結城さんと仲良くなるための共同作戦を行うことになるのだが…。ピュアで甘酸っぱい、青春系学園コメディ!
コミックジーンで連載されている、U-temo(ゆうても)先生の初単行本でございます。ジーンは「僕と先輩の鉄拳交際」(→レビュー)など、最近気になる作品が続々出てきているのですが、本作も面白かったです。雑誌の元々のコンセプトは「女性向けの少年漫画雑誌」ということらしいのですが、女性向けっぽさをあまり感じさせず、どちらかというと4コマ雑誌とかに載っていそうなイメージで、だからこそ余計に興味を惹きました。
主人公はクラスでもやや目立たない存在と言える草食系のヘタレ男子・百合ケ丘くん。そんな彼が想いを寄せるのは、隣の席に座っている美少女・結城さん。なんとか仲よくなれないものかと、チラチラと結城さんを見ていると、結城さんの先からこちらを見る女の子と視線がぶつかる。何度となく目が合うため、「これはこの子、俺のこと好きだな…」なんて考えていたら、実はその子も結城さんと仲よくなりたいということが判明。西山さんという苗字のその子は、クラスの誰もが認識していないレベルで目立たず、さながらステルス機のよう。だからクラスの中心にいる結城さんに憧れ、仲よくなりたいのだという。お互いの利害関係が一致した二人は、その日から、結城さんと仲よくなるための策を協力しあい行うようになるのですが…というお話。

西山さんのステルスっぷりは尋常でなく、いるのに欠席にされたり、目立たなすぎてイジメさえも起こらないような状況。視認されていないんじゃないかっていう(だからこその「ステルス」という表現)。ただそれなのに百合ケ丘くんにはやたらと高飛車で、いわゆるツンデレキャラ的な態度で対峙してきます。そのプライドはどこからくるのか(侵されたことがないからこそなのか)。
物語は想像の通り、結城さんとはなかなか接近出来ず、二人の仲がどんどんと深まっていくという展開になっていきます。自分だけが見つけることのできる、オンリーワンな存在…心くすぐられますよね。ただ当人たちはそんな恋愛の気は見せず、結城さんと仲よくなることに必死。そちらに気が取られているからこそ、奥手な二人がこれといった抵抗も見せずに距離を縮めることが出来ているとも言えるかもしれません。物語が進むにつれて、百合ケ丘くんは西山さんの部分部分(仕草や体)に女性的な部分を感じるシーンが増え、一方の西山さんも、百合ケ丘くんを大事な友達として認識していくように。後追いで意識が追いついてくるあたりが、甘酸っぱくて素敵なんです。

基本ヘタレな百合ケ丘くんは、西山さんにやられっぱなし。ただ時に男らしい行動を取ったり。これもは、足を痛めた西山さんをおんぶしてあげる百合ケ丘くん。けれどおぶってみたはいいけど、その接触感にやられるという。
恋愛的発展はこれから見られると思っているのですが、まずは1巻では二人仲よくなる過程を目一杯楽しみましょう。同じ話題で盛り上がれたり、放課後一緒に過ごせたり、友達ができて仲よくなるってだけで、とっても楽しいものです。そういった喜びみたいなものが、本作にはしっかり落し込まれていて、それだけでなんだか面白い。不器用な二人のぎこちない歩みを、優しい目で見守ってあげたくなる、そんな作品です。
【男性へのガイド】
→ジーンでなくとも、違和感ない内容。男性も是非、というか、男性に向いてると思ってます、はい。
【感想まとめ】
→女性向けという枠で見たときの物珍しさからプッシュではありますが、全方位でのマンガ作品として捉えた時も、これはかなり好みの内容。絵柄は安定せずではありますが、その初々しさもまた初々しい二人を彩るのに一役かっている感あり。2巻が楽しみです。オススメ。
作品DATA
■著者:U-temo
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:ジーンシリーズ
■掲載誌:月刊コミックジーン
■既刊1巻
■価格:533円+税
■試し読み:第1話(pixiv)