
くたばれ
シニガミ
■満歴252年。植物が絶滅し、土が荒廃するこの時代、正体不明の奇病が発生した。人に巣食い、宿主の命と引き換えに大輪の花を咲かせる、悪夢の花。その名も、「死神の花」…。無能、ヒイキと周囲の評判は最悪の問題ドクター・一之瀬宗馬と対・「死神の花」専門の国家医療団=極楽苑の人々の活躍を描く近未来医療アクションファンタジー!!
唐々煙先生のITAN連載作になります。近未来医療アクションファンタジーということで、この言葉だけだとよくわからないと思いますので、あらすじ紹介をば…。舞台となるのは近未来の日本(っぽい所)。この世界では植物が絶滅し、草木は一切存在していません。そん中、唯一生き残っているのが、人に寄生し死に至らしめる死神の花。その花を「奇病」とし、感染者の治療・(場合によって)駆除にあたるのが、「極楽苑」と呼ばれる医療組織。主人公は、そんな極楽苑でドクターをしている青年・一之瀬相馬。実力派揃いのドクター達の中、一人仕事が回ってこず、元気を空回りさせてトラブルばかり起こしている彼の「死神の花」との戦いの日々を描いたアクション作品となっております。

咲く死神の花は一輪。ただし大輪。人をゆうに飲み込むほどの大きさとなります。風貌はグロテスクではなく、割と美しさもあるような…。
人間に寄生し花を咲かす、さながら人間版冬虫夏草のような存在は、SFやホラー作品ではしばしば描かれる題材です。自分の記憶に強く残っているのは、「他純人格探偵サイコ」に出てきたやつでしょうか。あれはグロかった…。さて、本作で登場する死神の花は、患部や枝葉が伸びゆく様子はそこそこグロいものの、感染者は苦しみを感じることは無く、また大輪の花を咲かせるというところから、グロいというよりは不気味さが先行する印象。見ため結構手遅れじゃねーのってレベルでも、花を燃やせば助かったりするので、思いの外我慢出来る病気なのかもしれません(何を?)。
そんな病気に立ち向かうドクターが、主人公の一之瀬相馬。問題児だけど自分なりのポリシーはしっかり持っている熱血漢というのは、いかにも少年漫画の主人公然としたキャラクターで、アクションが多分に含まれる物語において、その存在感を如何なく発揮します。こういうキャラはエリート揃いの中、雑草魂でのし上がる…というのがセオリーですが、彼の場合、極楽苑の院長の孫という出自である点が、面白い所。なので、周囲からはかなりやっかまれているという。そのせいか仲間も少なく、天然ボケっぽい看護師のひよちゃん(カワイイ)と、クソ真面目なお目付役の北城の3名と、割と少なめなチームで行動します。

北城さんがやっぱり抜群の存在感。怖いオッサンが、一つ物語にアクセントを加えてくれます。
唐々煙先生の作品は様々な要素を落としこみつつもカッチリ魅せてくる安定感が魅力で、今回もさすがの仕上げよう。あと特筆すべきなのは、つかみと次巻への切り方が毎度秀逸という。今回もスタートから「『死神の花』ってなんだろう?」と興味を惹かせるような幕開けで、ラストではこれまでの流れからガラッと変わるであろう出来事を投入して幕引きさせるという。これは続きが気になるし、上手い。ただ番外編がその後載っているのですが、そこと本編の切れ目が分かり辛かったのがちょっともったいなかったかな、とも。ともあれ非常に読みやすい作品に仕上っております。
【男性へのガイド】
→お色気要素が少なめなぐらいで、エッセンスは少年漫画のソレかと。男性でも割と取っつきやすいのではないでしょうか。
【感想まとめ】
→さすがの安定感。こういった設定のお話が好きな方であれば、まず満足出来る内容かと思います。
作品DATA
■著者:唐々煙
■出版社:講談社
■レーベル:KC ITAN
■掲載誌:ITAN
■既刊1巻
■価格:581円+税