
でも
名前を呼ばれるって
悪くないね
■その声で、恋を呼ぶんだ。
時にやさしく、時にせつなく…。
「名前」をテーマに、あなたのハートを甘くくすぐる
18粒のラブ・キャンディ
水元ローラ先生のスピカ連載作でございます。「名前」をテーマにおくる恋愛ものの読切りを18編収録しています。帯にはいがわうみこ先生の推薦文が。これが非常に良いチョイスだと個人的には。いがわうみこ先生が好きだったら、多分間違いなく好きだと思います。
日常の中で織り成される恋の瞬間を切り取っているのですが、どのキャラもどこか変わっていて、切り取る“間”も若干シュール目でいい味出しているのです。いがわうみこ先生ほどぶっ飛んでいないですが、その分親近感のあるキャラ達になっており、いい感じに地に足ついているといいますか。

一口に「名前がテーマ」と言ってもその使い方は様々。変わった名前だったり、単に名前を呼ばれることに着目したり、同じ名前だったり。
描かれるのは中学生から社会人まで幅広く、またその内容も、青春の香り感じる爽やかなものから、ちょいとやさぐれた社会人ならではのビターな人間関係まで様々。またどれもバッドエンド的な終幕はなく、希望が見える形で終わっているので、短いながらも読後感が非常に良いです。…とここまではこの単行本全体を通しての感想。要するにオススメなんですが、ここでレビューを終わりにしても味気ないので、個人的にお気に入りだったエピソードを幾つかご紹介したいと思います。
まずは「エピソード04.川口健」。彼の名前は本編では全く重要でないのですが(笑)高校生の男の子が、通学路一緒の他校の女子(名前まではわかってる)が気になっているというお話。通学バスや電車が一緒だと、顔は当然わかってて、名前もひょんなきっかけで分かっちゃったりするんですよね。男の子が主人公なのですが、青春ならでは勢いに加えて、透けブラに目が行っちゃう哀しき性がよく現れていて、良いなぁと。
次は「エピソード09.吉田莉亜夢」。女の子が主人公です。これは名前から分かるように、一風変わった名前がコンプレックスになっている女の子のお話。それが逆に思わぬ縁を運んで来たりするわけですが、名前にまつわる物語としては非常にオーソドックスかつストレートな作りで素直に物語を消化することができました。自分自身、本名がちょっと変わっているので、こういうのも少し共感めいてしまったり…。

最後は「エピソード07.濱本亜紀」これはエッチの最中に間違えて元カレの名前を呼んでしまったことから喧嘩になるという話。軽いノリで付き合った大学生のカップルなのですが、のらりくらりと付き合ってしまっている脱力感が素敵。別れるのって結構エネルギーを使うじゃないですか、だから案外別れないっていう。こういうノリのカップル、微笑ましくて好きです。
【男性へのガイド】
→男子目線の話もあって、それが意外と共感できるのです。面白かった。
【感想まとめ】
→よかったです。どれも素敵なお話でした。ちょっとした掘り出し物に出会えた感。
作品DATA
■著者:水元ローラ
■出版社:幻冬舎コミックス
■レーベル:スピカコレクション
■掲載誌:スピカ
■全1巻
■価格:630円+税
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