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Tag [新作レビュー] 2014.05.08
1106352002.jpg兎原シイタ「島カレ。」(1)


やってけんのかな
あたし…



■父親の転勤で、男ヶ島にやってきた一花。そこは、『東京都』とは思えないほど不便な孤島だった。同級生・碧は無愛想でぶっきらぼうだし、後輩の空夜はドSの俺様…しかも、島で女の子は一花だけ。一筋縄ではいかない男の子たちとの島暮らし。こんなところでやっていけるの!?!?

 コミックポラリスの連載作です。既に2巻まで出ておりますが、1巻までしか読んでいないので、そこまでのレビューになります。ご了承を。というわけで、あらましから。物語の舞台となるのは、東京都の離島である「男ヶ島」。羽田から飛行機で45分、さらにフェリーで2時間半という絶海の孤島とも言うべき場所に、父親の仕事の事情から引越しすることになったのは、普通の女子高生である一花。コンビニも服屋も何もないこの島で、高校生は一花を含めてたった3人。二人ともイケメンだけど、同級生の碧は無愛想で心が見えないし、後輩の空夜はオレ様ドSで、それぞれ性格に難アリ。生活も、人付き合いも何かと問題ありそうなこの島で、一花の新生活がはじまったのですが…というお話。
 
 火山性の島で断崖に囲まれており、島外への出入りもなかなか大変な東京都の絶海の孤島…これだけでピンと来る人ももしかしたらいるかもしれませんが、男ヶ島は実在する青ヶ島という島がモデルになっています。少し前に、東京最後の秘境なんていって話題になりましたが、ここは歴史的にも興味深いエピソードを持っている島で、Wikipediaの「還住」の項目は非常に読み応えがあります。興味があれば、こちらも是非。


島カレ。1-1
相手候補2人。左のメガネくんが後輩で、右の前髪重めの彼が同級生で、ちょっとだけ同居人。学年は違いますが、分校方式で同じ教室で過ごします。


 さて、物語の方ですが、閉ざされた環境でイケメン男子二人と学生生活を送るというお誂え向きなシチュエーションでの青春モノ。タイトルから、ガッツリハーレムものかと思っていたのですが、そこまで相手候補は増えません。一応先生がイケメンだったり、中学生の愛すべき不思議系な後輩がいたりするのですが、脇役に収まっている感が強く、恋愛方面で絡んでくることはなさそうです。相手役候補二人はどちらとも一筋縄ではいかない性格の持ち主で、けれども環境上、一緒に過ごさざるを得ないという状況、その中で徐々に打ち解けていき、やがて恋心が…という流れ。その上で、恋の駆け引きがなされていきます。
 
 実在するモデルであることに加え、どうやら作者さんは実地に取材に行かれているみたいです。近場ならわかるのですが、前述の通り非常に交通の便が悪くなかなか行き来できない場所ということで、それでも行くだけの覚悟と愛があるのかな、と。そのためイベントも青ヶ島というフィールドを存分に活かした内容となっています。恋愛メインだと割とシチュエーションからしておざなりになりがちな設定なのですが、こちらは多少の恋愛要素は削ぎつつもそういったネタを投入してくるので、それが逆にベタ甘苦手な男子などにもとっつきやすくなっているんじゃないでしょうか。ちゃんと、「島」と「カレ」が併存できていますよ、と。


島カレ。1−2
 こういう作品でもついついヒロインの友達の脇役女子に目移りしてしまったりするのですが、年頃の女子はヒロイン以外に登場しません。なおヒロインは割と切り替えの早い前向きな性格の持ち主で、島生活にも驚くほどのスピードで順応していくという。そのため見ていてとても気持ちよいです。リアクションもよく、転がし甲斐がありそうな性格です。
 

 1巻時点では三角関係ですが、これからさらに駒が増えるってこともないことはないのか。ただ途中参戦でかっさらえるほど、関係性が脆弱でもなさそうで、やはり基本はこの3人で回すことになるのでしょう。面白いのは同級生ではなくて、ドSメガネが後輩というところか。大抵こういう場合って同級生たちだったりするのですが、これが一人後輩になるだけで、微妙なパワーバランスとなり、色々と変化が生まれるのですよ。人物配置や舞台設定、諸々興味を惹かれる作品でした。


【男性へのガイド】
→先述の通り、ハーレムものの体を取っていますが、同系統の作品と比して割と男子も受け入れやすい仕上がりなのではないかと思います。
【感想まとめ】
→タイトル、表紙から受ける印象とは異なり、とても読みやすくて面白い作品でした。気になったらまずは試し読みを!


作品DATA
■著者:兎原シイタ
■出版社:ほるぷ出版
■レーベル:ポラリスコミックス
■掲載誌:コミックポラリス
■既刊2巻
■価格:571円+税


■試し読み:第1話

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