
好きなのかも
■泣いたり切なくなるのに、なんで、みんな、恋するの?
多歌は「恋」がまだわかっていない高校2年生。バイト先で女子が苦手な年下男子・咲良と出会う。咲良の片想い中の女子の話を聞くことで、恋に興味が出てくるが…!?女子力は高くないけど、多歌なりの初恋がはじまる……。
以前ご紹介した「ハル」(→レビュー)を書かれていた綾瀬羽美先生の初となるオリジナル連載作でございます。個人的にここ1年くらいのデビュー漫画家さんの中では特に注目している先生なのですが、 何といってもそのこなれっぷりが凄くてですね。抜群の安定感。本作も初オリジナル連載とは思えないほどの安定っぷりでございました。
物語で描かれるのは、まだ恋を知らない女の子が男の子と出会い、恋を知るというボーイミーツガールなストーリー。ヒロインは、黒髪ツインテでおてんば感のある少女・多歌。姉や友達、たくさんの人を泣かせる「恋」というやつに、すこしばかり興味が出て来た高校2年生。シングルマザーになる姉を助けるためにバイトをはじめることにした多歌は、バイト先で年下の男の子・咲良に出会う。女子が苦手でいつも職場で弄られている彼は、実は密かに片想い中。そんな彼の話を聞いて、益々興味が出て来た多歌ですが…というお話。

恋を知らない女の子が、一人の男の子と出会うことで恋を知り…という、実にオーソドックスな恋愛感情無自覚型のストーリー。大体そういう子って中学生だったり高校1年とかだったりするのですが、彼女の場合は高校2年とかなりの遅咲きでございます。高校2年なのにこれっていう。「こんなのありえない」という感もあるかもしれませんが、これは言わば少女漫画の定型課題であり、様式美なのですよ。
さらにお相手となるのは、恋の酸いも甘いも知るイケメン男子…ではなく、密かに女子に想いを寄せる奥手な頼りない年下男子という変わり種。この設定からしてなかなか恋愛が発展しないこと請け合いなのですが、そこは4話完結(そこ?)、しっかりと転がります。あ、もちろん無理なく展開してますからね。

ひとつひとつ恋の良さを知って行く。まずは他人の様子を見て。そしてやがて、自分自身が恋をして…。
ヒロインは年上ではあるのですが、割と何も考えずに自由に動いてしまう節があり、見ていて結構危なっかしいのです。そんな彼女を上手いこと御してくれるのが、年下男子の彼。ヒロインが巻き込み動かし、最後は彼がフォローするという、ちょいど良い関係は見ていてとても安心感がありました。
同時収録の読切り「ユメミナイト」は、王子様を夢見る女子が、理想とは正反対のチャラい男子と出会い恋するお話を描いた作品。こちらも好きになる→ちょっとした戸惑い・反発→一悶着からの懐柔といったお約束がキッチリと詰め込まれており、「あー、少女漫画読んでるなぁ」と改めて実感させてくれる内容となっております。
どちらも特筆すべき設定や展開はないのですが、その中で押さえるべき点はおさえており、トキメキ成分はばっちり。ヒロインの多彩な表情から、心の揺れ動きがダイレクトに伝わってきます。なんていうか、箱の中にものが偏らずにきちんと収まっている状態と言いますか。読んでもらえればわかると思うのですが、なかなか伝えるのが難しいのです…。
【男性へのガイド】
→少女漫画好きは、是非読んで欲しい。
【感想まとめ】
→新作楽しみにしていたのですが、はずさないです。“少女漫画感”を堪能できました。
作品DATA
■著者:綾瀬美羽
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税
■試し読み:第1話