
雨 去って
飛び立つ鳥の
みずしぶき
■大学に入って知り合った彼氏と別れた七海は、痛手を癒すために登った富士山で、クジラを捜す男2人組と遭遇する。彼らは海洋動物の行動を観測する研究者だった。彼らと海に出ることになった七海がそこで見たものは…。魅惑の海洋動物と恋の世界へようこそ…
「本屋の森のあかり」の磯谷友紀先生の新連載になります。ちなみに磯谷先生はmotto!で掲載されていた「恋と熱病」も単行本が発売されており、2冊同時発売となります。こちらも機会があればレビューをできれば良いですね。
というわけで、「海とドリトル」のご紹介に参りましょう。今回の舞台となるのは、海洋動物を研究している大学の研究室。ヒロインの七海はとある大学で心理学を専攻していましたが、失恋し傷心している中、ひょんなことから「クジラを捜している」2人組の男性に出会い、その後本当にクジラとご対面。その出来事に感動した七海は、彼らを追ってその大学の研究室に編入、海洋動物学の道を歩みはじめることになるのですが…というお話。

興味の対象はクジラ。実際にその姿を目の当たりにして、その魅力に一気に引き込まれてしまう。
描かれるのは、海洋動物学というジャンルでの四方山に絡んだヒロインの「成長物語」と、研究室を舞台にしたいわゆるラボプラス的な「恋愛模様」の二本立て。海洋動物学はおわかりの通り理系で、研究室は当然男子が多め。理系研究室なので院生やポスドクなどもそれなりにおり、年齢層も割と広めです(要するに選択肢は多い)。女子も少数おりますが、それぞれキャラが立っていて、またなんとなくクセがありそうな匂いがしています。男性陣も主要メンバーは主張しすぎない中でもきちんとキャラ分けはできており、イイ線行ってる理系男子の集団という印象。
「本屋の森のあかり」も仕事と恋愛のバランスがいい塩梅だったのですが、本作も絶妙なバランスで物語が進みます。海洋生物学の初心者にもわかりやすい知識解説と、魅力の描き出し。さらにヒロインを中心に個性的なキャラ達が織り成す青春模様。知的欲求と性的(恋愛)欲求の両方が満たされていく感じが良いですね。このKISSのワンテーマと恋愛のバランス感って結構難しいイメージがあって、突拍子もない業界とかを取り上げちゃうと途端に出オチ感が強くなってしまったりするんですよね。これは海洋生物学というチョイスが良かったのか、はたまた磯谷先生だからこそできるのか。えーと、なんというか、好きです。
海洋生物学と言っても魚ばっかり研究しているわけではなくて、鳥や浜辺の生物なんかも研究対象になります。そのためフィールドワークは海ばかりというわけではなく、陸地で過ごすことも多いという。お泊まりしながらの研究とか、楽しそうですよね(実際はそうじゃないのでしょうが)。私は学部こそ農学部なのですが、こういったフィールドワークは殆どすることなく卒業してしまったので、なんだか羨ましくもありました。

ヒロインは興味だけでやって来た子ではあるものの、元フィッシング部でそれなりに実地調査で役に立てる素養はあるという。なので足手まとい感とか、そういうのはあんまりないです。
登場人物で一番気になるのは、研究室のボス・准教授の烏丸先生でしょうか。30代後半という若さで准教授になっている出世頭なのですが、バツイチという経歴持ちなのが、どうにも気になる存在にさせていると言いますか。1巻を見るかぎりではヒロインとそういうことにならなそうな感じが強いのですが、いや一番美味しいのは彼だと思いますよ、はい。なんて他の男性陣もそれぞれに魅力的で、どのルートに行ってもそれなりに盛り上がりそうではあるのですが。
【男性へのガイド】
→恋愛色はそこまで強くなく、また草食系男子多めで、少女漫画がお好きな男性には良いテンションなのではないでしょうか。
【感想まとめ】
→面白かったです。こういう大学生活送りたかったですね。勉強も、恋もっていう。
作品DATA
■著者:磯谷友紀
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:429円+税
■試し読み:第1話