※まずは通常レビューからどうぞ(→小畑友紀「スミレはブルー」)
小畑友紀「スミレはブルー」新装完全版(1)
■先日ご紹介した「スミレはブルー」ですが、レビューだけでは語りつくせなかったことがあったので、続編としてお送りします。さてこの「スミレはブルー」ですが、現在「僕等がいた
」を絶賛休載中の小畑友紀先生の初の本格長編連載でした。「僕等がいた」の連載前、「ベツコミ」の前身「別冊少女コミック」で2001年から始まり、その後完結しないまま「僕等がいた」の連載が開始。以降数年間、同作は"全2巻"ではなく、①~②と表記されたままになっていました。
しかしこの作品、実は一回完結してるんです。そのことは、ベツコミHPの「まんが家WebTalk」というコーナーの、2002/9/13に掲載されたvol.5の小畑先生のメッセージ(→リンク)を見るとわかります。
■さてここで、編集サイドは「スミレはブルー」を完結と判断したわけですが、確かにこの時点で、シーンとしては区切りが良く、「僕等がいた」の連載も始まっていたので、この動きにはある意味納得できます。しかし小畑友紀は完結としませんでした。というよりも、終わりに出来ない理由があった。これは私の予想に過ぎないのですが、これは次のシーンが原因なのじゃないかな、と
通常版、第1話、冒頭
■7つのキスを数えた。これは第1話、冒頭も冒頭1ページ目に出てきます。これは完全に伏線(と言えるモノでもないけれど)なわけで、物語の進行上、どうしてもこのルート(7つのキス)を通らなくてはなりません。恐らく小畑さんはコレを指標として進めようとしたのでしょう。シルエットを良く見てみると、若干大人っぽいシルエットの様にも見えます(まずスミレは、ロングスカートを穿いている時点で制服じゃない)し、結構な長期連載を狙ってたのかな、とも。しかし、諸々あって進めなくなった。そして完全に連載がストップ。物語の道しるべとなるべき設定に、逆に苦しめられることになってしまいました。
さらには「僕等がいた」まで連載がストップ。この時点で、「スミレはブルー」の完結はほぼ絶望的になりました。だってドラゴンボールまだ一個も集まってないんですよ!?こんなん絶対無理じゃん、と。
■そんな中先月、「スミレはブルー」新装版が発売されました。しかも帯にはこう書いてある「未完の傑作ついに完結!」。か…完結!?ありえるのか!?そんなことは…。しかし帯にはそう書いてあるので、完結したと見てまず間違いないでしょう。
さてそうしたときに出てくるのが、先のドラゴンボール、じゃない7つのキス。物語全体を見渡したとき、あれだけが邪魔になっている。さて、どうするか。2巻しかないと考えるのならば、伏線回収はまずありえない。となったら道は一つ。
あのページの削除!!
恐らくこの方法が最善策。私はそう考えました。ちなみに本編中では、7つどころか1つのキスもしていません。あれさえなくなれば万事上手く行くんです、アレさえなければ①~②なんて表記にせずに済むんです!さて、編集サイドはどう来たのか…運命の一ページ目…
新装完全版、第1話、冒頭
( ゚д゚)え?
( ゚д゚ )え?
あ…ある…だって?どういうことだ!?
■こ…こうなってしまったものは仕方ない。こうなったらもう伏線回収しかありません。しかし全2巻だぞ!?通常版に比べてもページ数が増えたとは思えない。もうこうなったら伝説の「ソードマスターヤマト」ばりの伏線回収テクを見せるしかありません(ソードマスターヤマトについてはアンサイクロペディアが詳しいのでそちらへどうぞ→ソードマスターヤマト ーアンサイクロペディア)アンサイクロだけど、大体合ってる。

ソードマスターヤマト
■ちなみに「ソードマスターヤマト」の収録されている増田こうすけ「ギャグマンガ日和」と、小畑友紀「僕等がいた」のアニメの監督さんは同じ人(大地丙太郎さん)です。180度毛色が異なる両作を見事に高クオリティに仕上げてきた大地監督の手腕にはただただ脱帽。両方ともオススメなのでぜひ観てみてください。(アニメ「僕等がいた」公式HP)(アニメ「ギャグマンガ日和」公式HP)
■さて、話は逸れましたが、本題に。果たして「スミレはブルー」はリアル「ソードマスターヤマト」になったのか。結果だけ言うなら、なりませんでした。結局伏線には触れず、番外編が追加収録されただけ。
まさかのぶん投げ。やってくれるぜ、小畑さん、小学館さん。
こうして一つの作品としては最低の出来になった同作。こんな形での終わりは余りに不本意でした。しかし物語に引き込む力は、コレを気にさせなくするほどに強力で、読んでいてあまりに切なく、そして苦しい気持ちにさせてくれます。あれこれここまで言いましたが、やっぱり私はこの作品がどうしようもなく好きで、何度も何度も読み返してしまうのです。でも、だからこそ、こういう形では終わって欲しくなかった。今休載中の「僕等がいた」は、せめてしっかりとした形で終わって欲しいな、と願います。
■ちなみにこの作品でメインフィールドになっているのは、釧路のフィッシャーマンズワーフ周辺。この風景は「僕等がいた」でも使われ、この景観は11巻の表紙にもなっています。ふたりがキスをしているのは幣舞橋という橋。幣舞橋とおぼしき橋は、「スミレはブルー」にも登場しています。しかし柵や照明の装飾が若干異なっており、実際はどこなのか判然とせず。
小畑友紀「僕等がいた」(11)
幣舞橋とおぼしき橋。
■だいぶ長々とお送りしましたが、そろそろ締めですね。先月の新装版発売は、小畑友紀復帰のフラグのようです。帯の折り返しには「ベツコミにて連載再開間近!!」と描いてあり、来月号には単行本未収録の3話分をまとめたスペシャルブックが付録として付いてくるようで、その次の号も何かしらの付録がつく模様。もう復帰は秒読み状態と見て良いかもしれませんね。楽しみに待ちたいと思います。しかしどうしよう、ベツコミ買おうかなぁ…迷う。
作者過去記事
【名作ライブラリ】小畑友紀「きみの勝ち」

■先日ご紹介した「スミレはブルー」ですが、レビューだけでは語りつくせなかったことがあったので、続編としてお送りします。さてこの「スミレはブルー」ですが、現在「僕等がいた
しかしこの作品、実は一回完結してるんです。そのことは、ベツコミHPの「まんが家WebTalk」というコーナーの、2002/9/13に掲載されたvol.5の小畑先生のメッセージ(→リンク)を見るとわかります。
先月号のBetsucomiで「スミレはブルー」の特別編を描きましたが、コミックス2巻(9月26日発売)の予告で[完結]という文字が付いたため、「スミレ~」はこれで終了と思われた方がいらっしゃるようですが、予告の[完結]の文字は間違いです。引き続き、その後の2人をDERACOMIで描いていく予定ですので、よろしくお願い致します。
(小学館ベツコミ,まんが家WebTalk小畑友紀Vol.5 2行目~)
(小学館ベツコミ,まんが家WebTalk小畑友紀Vol.5 2行目~)
■さてここで、編集サイドは「スミレはブルー」を完結と判断したわけですが、確かにこの時点で、シーンとしては区切りが良く、「僕等がいた」の連載も始まっていたので、この動きにはある意味納得できます。しかし小畑友紀は完結としませんでした。というよりも、終わりに出来ない理由があった。これは私の予想に過ぎないのですが、これは次のシーンが原因なのじゃないかな、と

■7つのキスを数えた。これは第1話、冒頭も冒頭1ページ目に出てきます。これは完全に伏線(と言えるモノでもないけれど)なわけで、物語の進行上、どうしてもこのルート(7つのキス)を通らなくてはなりません。恐らく小畑さんはコレを指標として進めようとしたのでしょう。シルエットを良く見てみると、若干大人っぽいシルエットの様にも見えます(まずスミレは、ロングスカートを穿いている時点で制服じゃない)し、結構な長期連載を狙ってたのかな、とも。しかし、諸々あって進めなくなった。そして完全に連載がストップ。物語の道しるべとなるべき設定に、逆に苦しめられることになってしまいました。
さらには「僕等がいた」まで連載がストップ。この時点で、「スミレはブルー」の完結はほぼ絶望的になりました。だってドラゴンボールまだ一個も集まってないんですよ!?こんなん絶対無理じゃん、と。
■そんな中先月、「スミレはブルー」新装版が発売されました。しかも帯にはこう書いてある「未完の傑作ついに完結!」。か…完結!?ありえるのか!?そんなことは…。しかし帯にはそう書いてあるので、完結したと見てまず間違いないでしょう。
さてそうしたときに出てくるのが、先のドラゴンボール、じゃない7つのキス。物語全体を見渡したとき、あれだけが邪魔になっている。さて、どうするか。2巻しかないと考えるのならば、伏線回収はまずありえない。となったら道は一つ。
あのページの削除!!
恐らくこの方法が最善策。私はそう考えました。ちなみに本編中では、7つどころか1つのキスもしていません。あれさえなくなれば万事上手く行くんです、アレさえなければ①~②なんて表記にせずに済むんです!さて、編集サイドはどう来たのか…運命の一ページ目…

( ゚д゚)え?
( ゚д゚ )え?
あ…ある…だって?どういうことだ!?
■こ…こうなってしまったものは仕方ない。こうなったらもう伏線回収しかありません。しかし全2巻だぞ!?通常版に比べてもページ数が増えたとは思えない。もうこうなったら伝説の「ソードマスターヤマト」ばりの伏線回収テクを見せるしかありません(ソードマスターヤマトについてはアンサイクロペディアが詳しいのでそちらへどうぞ→ソードマスターヤマト ーアンサイクロペディア)アンサイクロだけど、大体合ってる。

ソードマスターヤマト
■ちなみに「ソードマスターヤマト」の収録されている増田こうすけ「ギャグマンガ日和」と、小畑友紀「僕等がいた」のアニメの監督さんは同じ人(大地丙太郎さん)です。180度毛色が異なる両作を見事に高クオリティに仕上げてきた大地監督の手腕にはただただ脱帽。両方ともオススメなのでぜひ観てみてください。(アニメ「僕等がいた」公式HP)(アニメ「ギャグマンガ日和」公式HP)
■さて、話は逸れましたが、本題に。果たして「スミレはブルー」はリアル「ソードマスターヤマト」になったのか。結果だけ言うなら、なりませんでした。結局伏線には触れず、番外編が追加収録されただけ。
まさかのぶん投げ。やってくれるぜ、小畑さん、小学館さん。
こうして一つの作品としては最低の出来になった同作。こんな形での終わりは余りに不本意でした。しかし物語に引き込む力は、コレを気にさせなくするほどに強力で、読んでいてあまりに切なく、そして苦しい気持ちにさせてくれます。あれこれここまで言いましたが、やっぱり私はこの作品がどうしようもなく好きで、何度も何度も読み返してしまうのです。でも、だからこそ、こういう形では終わって欲しくなかった。今休載中の「僕等がいた」は、せめてしっかりとした形で終わって欲しいな、と願います。
■ちなみにこの作品でメインフィールドになっているのは、釧路のフィッシャーマンズワーフ周辺。この風景は「僕等がいた」でも使われ、この景観は11巻の表紙にもなっています。ふたりがキスをしているのは幣舞橋という橋。幣舞橋とおぼしき橋は、「スミレはブルー」にも登場しています。しかし柵や照明の装飾が若干異なっており、実際はどこなのか判然とせず。


■だいぶ長々とお送りしましたが、そろそろ締めですね。先月の新装版発売は、小畑友紀復帰のフラグのようです。帯の折り返しには「ベツコミにて連載再開間近!!」と描いてあり、来月号には単行本未収録の3話分をまとめたスペシャルブックが付録として付いてくるようで、その次の号も何かしらの付録がつく模様。もう復帰は秒読み状態と見て良いかもしれませんね。楽しみに待ちたいと思います。しかしどうしよう、ベツコミ買おうかなぁ…迷う。
作者過去記事
【名作ライブラリ】小畑友紀「きみの勝ち」