このエントリーをはてなブックマークに追加
--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリスポンサー広告||TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2014.09.13
1106402008.jpg阿部共実「ちーちゃんはちょっと足りない」



ちょっとくらい
ちょっとくらい
恵まれたって
いいでしょ私たち




■いつも何かが欲しくって。
 中2女子・ちーちゃんとナツの日々日常。

 「空が灰色だから」の阿部共実先生がエレガンスイブ増刊「もっと!」で連載していた作品です。「このマンガがすごい!Web版」の7月のランキングで圧倒的1位だったのですが全くのノーマークでして、後追いで読んでみたのですがこれがすごかった。心えぐられるというか、気力という気力が全身から抜かれる感じで、1週間くらい仕事を気合入れて出来なかったような気さえします(笑)

 描かれるのはとある町の団地で暮らす中学2年生の女の子の日常。「団地の子と遊んじゃだめよ」なんてフレーズをいつやらか聞いたことがあると思うのですが、その“団地の子“にフォーカスを当てたお話です。メインで描かれるのは、タイトルにもなっている女の子のちーちゃんと、その幼馴染であるナツ。双方の家庭共に基本的に世帯収入は低めで、欲しいものはたくさんあるけれどあんまり買ってもらえない。主人公であるちーちゃんの家は母子家庭で、姉は受験勉強をしながらバイトをしているという毎日です。それでも学校には友達もいるし、毎日楽しい。。。はずだったのですが、中学生になり自意識がいっそう強くなり、自分の「持たざるもの」を強く意識させられるようになると、日々は途端に曇りだします。そんな中で起きる、とある事件が起きるのですが…。

ちーちゃんはちょっと足りない2
言い知れぬ精神状態によって世界が歪んだり、当人がまっ黒になったりといった阿部共実的表現は健在です。


 序盤は単なる中学生の日々日常を描いただけのお話なのですが、話が進むにつれてだんだんと雲行きが怪しくなり、そこからはめくるめく展開に。これはズルいっす。何度だって読み返したいし、何度読み返してもダメージ受けるんでしょうねこれは。既読作については他人の感想って興味を持つことはないのですが、本作はこれを読んだ人がどう感じたのかめちゃくちゃ気になります。ちょっと今までにない感覚です。基本ネタバレ多めの当ブログですが、今回はかなり多いと思いますので、未読の方はご注意ください。

 さてさてここからは本編に踏み込んだ感想です。ちーちゃんは恐らくですが、描かれ方を見るに、軽度の知的障害を持っているんじゃないでしょうか。ゆえに自分が「足りない」ことに対してあまり自覚的でありません。一方ナツは、そんな自分の境遇に引け目を感じ、その理不尽さに絶望をするようになります。どちらの方が幸せなのか。


ちーちゃんはちょっと足りない10008
足りないのは、単にお金だけじゃなく、たとえば勉強であったり、人付き合いであったり、「箸の持ち方」といった所にも。それをトータルすると、自分の明るい未来を思い描く材料が足りないってことになるんですよね。そしてそのことを想い描かれるナツの言葉がグサグサ刺さる。「貧乏は罪なの?」「未来がせまいよ」と。


 このどうしようもない理不尽さを、ナツを通して読者も味わう形になっているのですが、物語のラストまでいっても明るい未来が見えず、もやもや感の捌け口がない親切仕様。ちょっとしたボタンの掛け違いみたいなものなんですけれど、それをどうにも対処できない。そういった対人関係の築き方の下手さも含めて「足りない」ということなのでしょう。この事件だって、誰が悪いってワケでもないんですよね。行動を起こしたのはちーちゃんなのですが、それを焚き付ける形になったのはちーちゃんのお姉ちゃんですし、そしてその大元となったのは、大声で自分の願いを叫んでた他でもないナツなのですから。そこで自分を省みれるとまた違うのかもしれませんが、絶望している中学2年生にそれはきつい。

 なんだか着地点が見えなくなってしまったのでそろそろ締めますが、とにかくすごい作品ですので、ぜひとも読んでもらいたいです。年末のムック本はこれが本線ですかねぇ。。。巻数表記がないのでこれで完結と思われますが、続きを読みたいような読みたくないような…。

 
【男性へのガイド】
→阿部共実先生の作品ですし、女性向け感も特になく、男女問わずオススメできますです。
【感想まとめ】
→これだけ書いておいてなんですが、本当は何も言わず先入観なしで読んでもらって、その感想を聞きたかったりするという。もう全力でオススメです。


作品DATA
■著者:阿部共実
■出版社:秋田書店
■レーベル:motto!
■掲載誌:もっと!
■全1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

カテゴリ「もっと!」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。