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2014.11.03
1106451972.jpgかねもりあやみ「この街は神さまの庭~四神の京都・町家暮らし~」(1)



きっとこの時が
いつか美しい思い出になるはずだ




■京都の街は、東西南北の四方を四人の神様に守られている。そんな青龍、白虎、朱雀、玄武の四神が京都の町家で念願の人間暮らしを始めたら?ある日、光熱費を取立てに来た大家の宮子さんに一目惚れした朱雀は、酒屋でバイトしながらデートを夢見て彼女を祇園祭に誘うのだが……!?京都の神様と人間の女の子たちとの恋を描いた、愛しくも切ない、恋愛ファンタジー第1巻!

 京都の街で4人の神様が人間暮らしをしながら送る、日常&恋愛ラブコメディ。山で遭難していた男を助けた京都の4神(青龍、白虎、朱雀、玄武)は、助けたお礼にと人間として暮らすことを望み、以来京都のとある場所にある家で4人同居しているのでした。時は流れすっかり人間としての暮らしに慣れた4人は、俗世の欲にまみれた神様らしからぬ暮らしぶりをするように。さらには人間の女の子とも、なんだかいい感じに。。。けれども神様と人間の恋は、許されない関係。さてさてどうする!?というお話。


この街は神さまの庭1-2
こんな緩さ。完全に人間として日常に溶け込んでます。でも一応、行事の際などは神様としてお仕事するんですよ。


 神様が人間の姿で日常生活を送るというと、「聖おにいさん」が思い出されますが、本作もあちらと同じくらい緩い雰囲気が流れる日常ものとなっています。ただ本作の場合、軸となるのは神様と人間の女の子との恋愛であり、いい塩梅でシリアスシーンも落とし込まれます。緩くなり過ぎず、かといってシリアスになり過ぎず、このバランス感が結構難しいと思われ。

 神様と人間の恋愛は禁止されているわけではないのですが、人間は神様に比べ寿命が短く、また過去に「神様をやめる」という選択をした者がいたため、暗黙の了解的に人間と関係を持つのは避けられています。けれども長く人間界で暮らしていると、人間とかかわりを持たないわけにもいかず、期せずして急接近してしまう場合も。そうした中でわたわたする4人の姿が面白いのです。


この街は神さまの庭
長い年月暮らしていていきなり集中的に恋愛イベントが起こるのかとも思われるかもしれないですが、あらすじ紹介にあった通り、背景を知らない大家の娘・宮子が家賃(正確には光熱費)を取立てに来るようになり、その工面のためにアルバイトを始め、その結果出会いが増えるという寸法。また表紙に大きく描かれている男子・朱雀はあろうことか宮子に恋をしてしまい、唯一積極的に人間に近づいていくという状態で、彼が一番微笑ましくも危なっかしいという。


 4人はそれぞれキャラ分けがきちんとされており、朱雀は真っ直ぐな体力バカ系。メガネの玄武は家事全般をこなすしっかり者のオカン系。表紙左下の白虎はチャラいオネエ。右上の青龍はとにかく働きたくない怠け者ショタ。個人的に好きなのは青龍ですかね。神様らしからぬ欲にまみれた姿が素敵すぎます。あとあんまり何事にも動じない姿とか、いいですね。

 先ほど「聖おにいさん」と言いましたが、シチュエーションが似ているだけで、作品の雰囲気的には全く異なります。むしろファンタジックな要素に加えて、京都という場所柄を存分に活かしたお話作りは、同じ秋田書店から出ている「京都ゆうても端のほう」(→レビュー)に通じるものがあるかもしれません。あちらが好きな方はこちらも気に入ると思いますし、逆に本作が気に入った方は、「京都ゆうても~」も気に入るかと思いますので、ぜひダブルチェックをば。しかしながら秋田書店の謎の京都押し、素敵です。

 
【男性へのガイド】
→神様は女子受けしそうなキャラで、また物語も割と恋愛特化な感じもあるので、そこがどう出るか。
【感想まとめ】
→面白かったです。日常コメディ、恋愛、ファンタジーとどれもちょうど良い塩梅でMIXされていて、ものすごく読み心地が良かった。


作品DATA
■著者:かねもりあやみ
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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From:  * 2014/11/06 10:53 *  * [Edit] *  top↑

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