
君の胸の芯から出た答えなら
僕は一字一句大切に読もう
■地味な内面と見た目から、ドイツ語で黒を意味する”シュバルツ”さんと呼ばれている大学院生・朝比奈元子(23歳)。かねてより憧れていたドイツ文学教授・榊(64歳)にうっかり告白するも、勘違いだと断言されてしまう。それでも変わらない教授への想い……。これはただの”嗜好“か?“恋“なのか?恋の定義を模索する、年の差恋愛未満ストーリー。
「アスコ―マーチ!」(→レビュー)や「ぼくらの17ON!」(→レビュー)などを描かれているアキヤマ香先生のKISS連載作です。地味目な大学院生の女子が、64歳の大学教授に恋をしてしまうという枯れセン要素を多分に含んだお話。主人公はゼミでシュバルツさん(ドイツ語で黒の意)と呼ばれている、人付き合いが少々苦手な地味女子の朝比奈さん。ふとしたやり取りからゼミの堅物教授・榊を好きになってしまった彼女は、以来密かに彼を想いつづけています。内気な彼女がアプローチなんかできるはずもなく、ゼミの仕事で会話する機会があれば嬉しいという程度。ところがある日、勢い余って自分の想いを告げると、それは勘違いだと言われてしまうのでした。“好き“って、“恋“って一体何だろう…。恋の定義に考えめぐらす、朝比奈さんの苦悩の日々が始まるのでした。
「アスコ―マーチ」や「ぼくらの17ON!」はいずれも高校生の青春模様を描いたエネルギー溢れる作品だったのですが、本作はガラっと雰囲気を変え、静かな印象を与える仕上がりに。これまでのアキヤマ香先生のイメージとかけ離れた雰囲気だったので、「え、こんなの描けるんですか!」とまず驚いたという。
ところで年配の大学教授との恋というと、今度映画化される「娚の一生」(→レビュー)が思い出されます。「娚の一生」が完結し、海江田先生的な枯れセン成分を渇望していた方々(いるのか?)からしたら、本作の榊教授はまさにうってつけの存在と言えるのではないでしょうか。あっちほどギラギラしていないですけれども、これはこれでジェントルでヨロシイ。

苦手分野に関しては慌て赤面するような一面もあり、こちらの方が人間味があって可愛げでしょうか。
ドイツ文学のゼミということで、私立文系のチャラい研究室を想像していたのですが、教授筆頭にドイツ語・ドイツ文学に真面目に向き合う面々が揃っており、どちらかというと国立大学っぽい雰囲気も。とか思ってたら、取材先立教大ですって。私の父が私大のフランス文学のゼミ出身で、しゃべるの大好きな営業マンだったことから、勝手に私がそういうイメージを勝手に抱いていただけかもしれませんね…。

物語は、真面目な朝比奈さんが「恋とは、好きとはなんぞや」と思い悩み、あれこれ奮闘することで進んでいきます。
出発点は恋なのですが、それをきっかけに女子としてレベルアップしたり、また人間関係も広がりを見せたりと、一人の人間としての成長記的な側面も。肝心の恋愛ですが、恋の駆け引きやアプローチという段階には全くいかず、帯にある「恋愛未満」という表現がぴったりな状況。一生懸命がんばっている朝比奈さんがもう可愛らしくて、応援してあげたくなるキャラクターなんですよ。
恋のフィールドは基本的にゼミ内で閉じるので、わき役たちを交えて恋の矢印が飛び交っているという状況。表だった動きはないものの、伏線はばっちり張られているので、2巻以降面白くなってきそうです。
【男性へのガイド】
→鼻につくようなキャラもいないですし、ヒロインも良い人ですしハードルは低めかとは思います。一方で華やかさに欠けるので、あとは好み次第でしょうか。
【感想まとめ】
→ゼミものは好物ですので、はい。現状で面白いですが、色々と動きだしたらさらに面白くなりそうで、2巻への期待感も込めてのオススメ。
作品DATA
■著者:アキヤマ香
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■試し読み:第1話