
側にいたい
たとえ その先にあるものが
いばらの道だったとしても
■メイドのプリシラは、「魔王」の異名で呼ばれるクレイブン伯爵家の城で働いている。ここにはとある変わった掟があった。それは「使用人は主人と目を合わしてはならない」こと。それゆえ、メイド達はみな主人の顔を見たことがなく、プリシラも当然その一人。ところがある日、休日で城下に出かけたときに、偶然伯爵に出会う。どうやら城を抜け出してきたらしく、そのまま街を案内させられる。実物の伯爵は、「魔王」という異名とは似ても似つかない、とても誠実で心優しい青年だった。以来お互いの身分を隠し、休みの度に会うようになった二人だったが…!?
作者さんの初コミックスです。伯爵とメイドという、身分の異なるふたりが恋に落ち、それ故に様々な障害が立ちはだかるという、センシティブ・ラブロマンスです。身分の違いを乗り越えて、というのは、少女マンガではかなり昔からある定番中の定番の設定。けれども描く人が違えば、全く異なる仕上がりになるから少女マンガは面白い。とにかく余計なことはせず、ふたりの関係、心情を映し出すことだけに専念。登場人物もそれなりに登場するのですが、役割がはっきりしており、無駄を感じさせません。新人さんとしてはかなり良く出来た内容だと思います、非常に好印象でした。また、絵もカワイイですね。

やっべカワイイ…。なんとなく「君に届け」のくるみちゃんに似てる。
使い古された設定でも、描く人が描けばちゃんと物語として機能し、楽しめるということを再認識させてくれました。白泉社にしては、少々感情がドラマチックに走りすぎという感じも受けましたが、近代ヨーロッパを思わせる舞台設定にすることで、ちゃんとカモフラージュできてるのか。絵柄がかわいらしく、ストーリーもしっかり押さえてきているので、いずれヒット作を飛ばすだろうなぁと、なんとなく思いました。青田買いで今から注目しておいても、損はないと思いますよ。次の作品は要注目ですね。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→モチーフはもろに少女マンガです。作画にピンと来た方は、ストーリーを踏まえた上で手にすると良いでしょう。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→新人さんでこの出来は立派。次への期待も込めてオススメにしておきます。
作品DATA
■著者:雪村ゆに
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成20年3,7,9月号)
■全1巻
■価格:400円+税