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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.04.04
ibaranookite.jpg雪村ゆに「いばらの掟」


   それでも
側にいたい
たとえ その先にあるものが
いばらの道だったとしても



■メイドのプリシラは、「魔王」の異名で呼ばれるクレイブン伯爵家の城で働いている。ここにはとある変わった掟があった。それは「使用人は主人と目を合わしてはならない」こと。それゆえ、メイド達はみな主人の顔を見たことがなく、プリシラも当然その一人。ところがある日、休日で城下に出かけたときに、偶然伯爵に出会う。どうやら城を抜け出してきたらしく、そのまま街を案内させられる。実物の伯爵は、「魔王」という異名とは似ても似つかない、とても誠実で心優しい青年だった。以来お互いの身分を隠し、休みの度に会うようになった二人だったが…!?

 作者さんの初コミックスです。伯爵とメイドという、身分の異なるふたりが恋に落ち、それ故に様々な障害が立ちはだかるという、センシティブ・ラブロマンスです。身分の違いを乗り越えて、というのは、少女マンガではかなり昔からある定番中の定番の設定。けれども描く人が違えば、全く異なる仕上がりになるから少女マンガは面白い。とにかく余計なことはせず、ふたりの関係、心情を映し出すことだけに専念。登場人物もそれなりに登場するのですが、役割がはっきりしており、無駄を感じさせません。新人さんとしてはかなり良く出来た内容だと思います、非常に好印象でした。また、絵もカワイイですね。


いばらの掟
やっべカワイイ…。なんとなく「君に届け」のくるみちゃんに似てる。


 使い古された設定でも、描く人が描けばちゃんと物語として機能し、楽しめるということを再認識させてくれました。白泉社にしては、少々感情がドラマチックに走りすぎという感じも受けましたが、近代ヨーロッパを思わせる舞台設定にすることで、ちゃんとカモフラージュできてるのか。絵柄がかわいらしく、ストーリーもしっかり押さえてきているので、いずれヒット作を飛ばすだろうなぁと、なんとなく思いました。青田買いで今から注目しておいても、損はないと思いますよ。次の作品は要注目ですね。


【オトコ向け度:☆☆   】
→モチーフはもろに少女マンガです。作画にピンと来た方は、ストーリーを踏まえた上で手にすると良いでしょう。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→新人さんでこの出来は立派。次への期待も込めてオススメにしておきます。


作品DATA
■著者:雪村ゆに
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成20年3,7,9月号)
■全1巻
■価格:400円+税

カテゴリ「LaLa DX」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

こんにちは。

このサイトはすごいですね。
『雪村ゆに』でグーグル検索すると2番ヒットですよ。
他の作家さんでも、1ページ目にくること多いですし。

それはさておき・・・この作品、ほんとうにたまたま表紙が目に入って、なんだかよく分からないけど何か良さそうと直感してそのまま買ってしまいました。

これはすごく好き。
かわいくて、優しくて、トキメモですね。
思いがけずに良い作品と出会うことができてとても幸せな気分です。
(関係ないですが、今日は君に届けとちはやふるとリミットの最新刊も手に入って大漁です)

絵柄は、香魚子さんっぽいかなぁ・・・『伯爵』つながりでそう感じただけかもしれないですが。
ヒロインは髪がふわふわで(髪をおろしているときは)、くるみちゃんに通じるかわいさは確かにありますね。
From: しろくま * 2010/06/12 22:14 * URL * [Edit] *  top↑

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