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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.01.25
1106481917.jpg高野雀「さよならガールフレンド」



この町じゃ
何十年も前の喧嘩の話を引きずってるバカが
山ほど居るんだよ




■「わたしが男子だったら先輩とは絶対やりません」
 セックスばっかりしたがるうざったい彼氏。噂話しかゴラクのないクラスメイト。この町の人間が嫌いな母。ここは、どんづまりの小さな町。いろんなことに嫌気がさしてた高校3年の夏。ちほは、自分の彼氏と「やった」らしい“ビッチ”先輩と出会い……?
 心ひりつく“ガール ミーツ ガール”を描き、単行本化が熱望されていた表題作に加え、アラサー女の迷い道、こじらせ女子の憂鬱、思春期少年少女の甘酸っぱい夏など、個性ゆたかな短編5作品も収録!

 コミティア見本誌読書会第一位獲得の新人デビューと帯にはでかでかと書かれております。高野雀先生のデビュー単行本になります。表題作のほか、短編も複数収録されており、イメージ的には短編集が近いでしょうか。表題作も8話完結での構成となっているのですが、トータルでも70ページほどだったりします。ではまずは表題作についてお話しましょうか。
 あらすじは冒頭に書いてある通りで、舞台となるのはセックスや噂話ぐらいしか楽しむことがない「どんづまり」の田舎町。そんな場所で鬱屈とした日々を送る女子高生・ちほが、ひょんなことから町中の男とやっていると噂される“ビッチ先輩”と出会い、自分の進路や生き方について考えていくという物語です。彼氏は盛りのついた猿のようで、会えば必ず体を求めてくるような男で、女子たちは誰と誰が付き合っただの、噂話ばかり。町は狭く、ひとたび噂が立てばあっという間に町中に広がり、またその話はいつまでもいつまでも語り残され、またよそから来た者には一定距離を置く閉鎖的な環境。周囲の人間たちはそんな世界を何とも思わず楽しそうに生きており、そんな中で唯一自然に、一歩引いた視点で世界を捉える“ビッチ先輩”に、ちほはどうにも惹かれてしまうのでした。


さよならガールフレンド1
彼氏とやった相手ということで、出会いは最悪のはずが、話しているとどうにも惹かれ、癒されるヒロイン。なんだかとっても脱力していて自然体な先輩は、確かに素敵な女性です。


 こういった空気感は私の地元・長野にも少なからずあって、読んでいて「ああ、こういう感じあったな」と度々思わされました。この環境に適応した者たちはいわゆる「マイルドヤンキー」としてその地を我が物顔で歩くのでしょうね。一方そういう空気感が苦手な人間はその土地を去ります。その時は割と孤独で寂しい離れ方をするイメージがあるのですが、ひとつ出会いがあることで、その別れが少しだけ彩られるという。“ガール ミーツ ガール”という言葉から、出会いのイメージが強くなりますが、地元との決別という意味で、本作は別れの物語としての側面の方がより強いかと。一つの終わりを描いて、新しく踏み出せるという、そういった意思は、表題作に限らず同時に収録されている読み切りにも度々見つけることができます。そのためか、表立った大きな感動はなくとも、どの作品も心に訴えかけ、自分の思い出の端を引っ掻かれるような感覚に苛まれます。訴えかける原動力になっている一つの要素が、モノローグの強さでしょうか。なんていうか、一つ一つがむき出しの心情の表れになっているので、それ単体でのパンチ力が強いと言いますか。


 表題作のほか、気になった作品としては、「面影サンセット」でしょうか。学生時代から彼氏と付き合い、気が付けばお互い30手前。けれども彼は一向に大学の時から内面は変わることなく(悪い意味で)、外見は段々と変わっていきます。周囲も結婚し始める中、どうにも結婚のイメージが沸かないのは、おそらく彼のせい。なんとなく行き詰った感のある付き合いの中で、とある出来事が起きるのですが…というお話。これもどこか表題作に通じるところがあるのですが、マンネリからの脱却ということで、読み終わった時に色々な感情が湧いてくるお話でした。


さよならガールフレンド2
 また物語の登場人物たちの年齢は割と幅広く、たとえば最後に収録されていた「エイリアン/サマー」は中学生の男の子が主人公。クラスで特に話したこともないような女の子が突然自分の家に遊びに来て、そのまましばらく居ついてしまうという、ボーイミーツガールな青春物語。設定・シチュエーションはキラキラの青春ものなのですが、物語自体はそこまでキラキラしておらず、どこか爽やかになりきれないもやもや感が残るという(でも結構イイ話なんですよ)。これはこの漫画家さんが持ちたる空気感だと思いますので、このままでいてもらいたいところです。

 
【男性へのガイド】
→女性視点のお話が多いですし、割としょうもない男の人が多く出てくるのも…いや、これはむしろ良かったりするのでしょうか。
【感想まとめ】
→文章振り返ってみるとあんまりおもしろかったって言ってない感じがありますが、すごく良かったです。ぜひおすすめしたい作品です。


作品DATA
■著者:高野雀
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC Swing
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
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