東村アキコ「東京タラレバ娘」(1)
いくつになっても自分が主役
人生という長い脚本のヒロインは私自身
それって幸せなことだと思ってた■独身、彼氏ナシ、女子会中毒の全国タラレバ女に捧ぐ!!
「キレイになったらもっといい男が現れる!」
「好きになればケッコンできる!」
タラレバばかり言ってたら、あっという間に33歳。
私たちの明日はどっちだ!?
東村アキコ先生のKISS連載作です。この人ほんと幾つマンガ描くんだろってくらい単行本出してますよね、すごい。本作は独身アラサー女のちょいとイタ辛い生き様を面白おかしく描いたコメディとなっています。物語の主人公は、鎌田倫子・33歳。脚本家を志しガムシャラに働いて、気が付けば独身のままいい年齢になっていました。今ではネットドラマの脚本を中心に、独立して表参道に小さな事務所を構える程度には食えています。独身の友達たちとの女子会が、何よりの楽しみ。やりがいのある仕事に気の置けない友達、東京での暮らしは楽しい……のですが、結婚の予定は未だ無いのが気になる所。なんとなく結婚の匂いを感じてはしゃいでみるも、それは全くの勘違いでした。そのことを居酒屋(女子会)で愚痴っていたら、年下の美青年に「行き遅れ女の井戸端会議」「タラレバ女」とののしられる始末。腹は立ったけれども、どうやら自分たちに時間がないのは本当らしい。折しも近づく東京五輪、そのころには自分は40歳。果たしてその時、どうなっているのか。危機感を覚えつつも、なかなか道は見えてこないアラサー東京生活なのでした。

物語はその後、居酒屋の暴言青年が売り出し中のモデルであることが判明し、脚本家である倫子は敵意むき出しに彼と対峙するという形でころがっていきます。
33歳とはいえ、仕事もしっかりしてきたし、これまで積み上げてきた自負がある。タラレバ言うなと言われても、今の自分をありのままに承認してくれるパートナーはいないわけで、過去を振り返りつつ、自分で自分を愛でるか同じ立場にいる友達同士で傷をなめ合うしかないわけですよ。そうなると自ずとタラレバってしまうわけで。私は男性ですけれども、普通にタラレバ的な想像をするときありますもの。私も年代的にもアラサーで、男女の違いはあれども身につまされる話ではあるのです。
物語の基本は、タラレバしがちなアラサーを嗤うスタンスなんですけれども、時折それがシリアスな方向に倒れることがあり、それが良いスパイスとなって物語を引き締めてくれます。ただこき下ろすだけだったら読んでて辛いんですけれども、こういう味方のような視点が入ることで、「あ、ただただ貶めるだけじゃないんだ」という安心感をもって読めるとでも言いますか。この強弱の付け方は東村アキコ先生のうまい所ですよね。

婚活パーティに少し顔を出して知る現実。現実は、思っている以上にシビアでした…。
また本作では、イケメンの青年がヒロインの脚本を「30過ぎたおばさんが都合よく男に言い寄られてリアリティがない。夢見てるのか。」なんて痛烈に批判しているのですが、1巻ラストの方では本作自体がシチュエーション的にそういう状態になっているわけで(明らかに狙っている)、さてこれはどっちに倒すのだろうと早くも落としどころが気になる所です
【男性へのガイド】→東村アキコ先生の作品ですから男性も読みやすいと思っているのですが、ネタがネタだけに他作品と比較するとどうだろうとも。
【感想まとめ】→相変わらずの東村アキコ節でやはり普通に面白いです。一方で一巻ラストからどう転がるのかはちょっと気になるところ。
作品DATA■著者:東村アキコ
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:
■試し読み:
第1話