
ねぇ
オレのこと
忘れないでいてくれる?
■中学3年生の夏休み、受験勉強に励む主人公の前に現れたのは、生後間もなく亡くなった双子の弟の幽霊。母の故郷に帰らなかったために、逆に弟のほうから来たのだという。何かとおせっかいな弟の幽霊は、兄の勉強の面倒を見ているうちにお墓に帰りそびれてしまう。そんな折、母親の再婚を知らされた弟は―――。
気の弱い主人公、正反対の性格の弟、霊感の強い幼なじみの女の子に、再婚相手の娘まで巻き込んで送るハートフル・サマー・メモリーズ。久世番子というと「暴れん坊本屋さん」で有名ですが、あの絵柄とは異なりこちらは正統派少女マンガのタッチ。ちょっと意外です。
兄弟の絆・親子の絆を描くだけではちょっと定番過ぎて薄いかな、とも思えるのですが、そこで終わらないのがこの作品の魅力。家族内だけの閉じた関係の中に、幼なじみという第三者が関わることでうまく風穴を開けてバランスをとってくれます。さらに、幽霊である弟に恋してしまう再婚相手の娘がいることで恋愛要素もカバー。しかも風邪をひかないと弟を視ることができないという設定がなかなか切ない。多少の寄り道があるからこそ、ありきたりなテーマが深みを増して生きてくる。読み始めた時点ではあまり期待していなかったんですが、気づけば感動している自分がいました。良い意味で期待を裏切られた作品だったと思います。
この他にデビュー作の読み切り一遍を収録。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→男が食いつける要素はそんなにないように思えたかな、と。かといって「少女」が好んで読む内容でもない感じ。個人的には女キャラ二人が心を掴んで離さないのですが。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→好きだけど、お薦めしづらい。いや、失敗はないんだろうけども。だからといって大ウケもないような。上にも書いたけど、男や少女ではなく、マンガ好きな大人の女の人が好んで読むような作品なのでは。
作品DATA
■著者:久世番子 作者サイト→「大西電電」
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングス・コミックス
■掲載誌:サウス('00年6月号~'01年6月号)
■全1巻
■定価:530円+税
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