
さあ…ただ
オレはあなたのものだから
あなたのおおせのままに
■3巻発売しました。
クリスマスはいつもひとりぼっちのくるみ。母親は小さいときに亡くなり、父は仕事が忙しくてなかなか会えない。でも、もうそんなことは慣れっこだ。そんな彼女の前に突然現れたのは、「あなたのトナカイだ」と訳の分からないことを言う男の子・カイト。あまりに突拍子もないことを言われ、呆然とするくるみだったが、よく見ると手綱で結ばれているし、くるみの命令にも体が勝手に動き、応えてくれているみたいだ…。どうやら彼はホントにトナカイらしい…。ってことは私がサンタ!?
トナカイといっても基本的には人間で、サンタの命令によってのみトナカイの姿になることが出来ます。サンタとしての活動は、当然クリスマスの間しかありません。しかしトナカイとの主従関係は常時効力をもっており、くるみが命令すれば、カイトはその通りに動きます。ひとりぼっちだったくるみにとって、カイトや、その家族との触れ合いはとても楽しいもの。カイトもくるみに好意を持っており、結局クリスマス以外も一緒に過ごすように。サンタとしての仕事を、物語の進行に使い、その中でふたりの関係を描いていきます。

こういう関係を描けるってのは結構すごいことなんじゃないかな、と思います。
カイトがくるみに好意を持つのは、トナカイとしての本能であり、本物の感情ではない。という問いかけがあり、それを越えて、お互い想いあえるのか、というところがポイントになってきます。素直じゃないくるみと、いつもニコニコしていて感情が読み取りづらいカイトの関係は、恋愛感情と、主従関係からくる心情が混ざりあって、なんとも言えない優しい物語を紡ぎ出します。サンタとしての仕事も、良い子にプレゼントを配るというものなので、自然と優しい話になっていきます。
LaLaDX不定期連載ということで仕方なかったのかもしれませんが、1巻発売時は巻数表示が付かず、驚いたのを覚えています。胸をえぐるような悲しみや切なさはありませんが、その分極上の温かさや優しさを味わうことができます。こういう作品があるから、白泉社はやめられない。ファンタジックで優しい物語を、心行くまで味わってください。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→こういうの好きな男の人、意外と多いんじゃないだろうか。少々恥ずかしくなるような要素もあったりしますが、ベタな優しさは素敵です。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→白泉社の魅力が大いに発揮されている良作だと思います。人によって評価のブレはあると思いますが、個人的に大好きなので。オススメです。
作品DATA
■著者:筑波さくら
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成16年1月号~連載中)
■既刊3巻