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Tag [新作レビュー] 2015.02.18
1106463531.jpg小嶋ララ子「星くずドロップ」(1)



転校初日
桜の中で出会ったのは
ちょっと不思議な女の子




■星のかみさま、お願い。運命の人に出会えますように……!
鳩ヶ谷しの(♂)、高校1年生。転校初日、桜の花びらが舞い散る中、美しい少女・苺と出会います。不登校気味だという彼女には、何か秘密が……。そんな彼女を追いかけ、しのがたどり着いたのは、個性的な面々が集まる天文部で!?天文部を舞台に恋と友情がキラめく青春ストーリー!

 小嶋ララ子先生のARIA連載作です。天文部を舞台にしたボーイミーツガールな青春グラフィティ。主人公の鳩ヶ谷しの(こんな名前ですが男の子です)は、親が世界旅行が当たったことで不在となるため、おばあちゃん暮らす茨城で生活することになります。ドキドキしながら迎えた転校初日、自転車で息切れし倒れたところを美しい少女・苺に助けられ、ちょっとドキドキ。「どんな子なんだろう……」と名前も知らずに探した末にたどり着いたのは、天文部の部室。天文なんて詳しくないけれど、もう一人入ってくれないと廃部だからと懇願され入部することに。星のことはよくわからないけれど、天文部の面々は個性的で楽しそう。気になるあの子の名前も知れて、新たな学園生活に心躍らせるしのでしたが…というお話。


ほしくずドロップ0001
入学初日に一目惚れし、そんな彼女を追いかけて同じ部活に入部する……という部分だけ見るとなかなかなアグレッシブボーイですが、性格はどちらかというとおとなしく、典型的な巻き込まれ型の不運くんという感じがする男の子です物語も、彼が色々なイベントやトラブルに巻き込まれていくことで進んでいきます。そんな中で好きな子にあれこれとアプローチしていくのですが、そのどれもが真っ直ぐで、見ているこちらが気恥ずかしくなるぐらい。青春を振り絞っている感じがしていいですね。そしてそういった行動が全力で肯定される空気感がこの作品には流れており、読んでいて実に心が現れる感じがします。


 遅くなりましたが、憧れの子の名前は世良苺さんと言います。小動物のような見た目で、無口で、不登校気味というなんだかとっても守ってあげたくなるような女の子。表情もあまり変わらないので、何を考え何を感じているのかがわかりにくいミステリアスなキャラクターです。たいていこの手のタイプって付き合い悪くなかなか連れないのですが、その分誘いに乗ってくれたりしたら嬉しいもので、主人公もそういう少ない喜びを糧に恋に頑張っている感じです。

 天文部の面々はみな個性的。先輩2名に1年生4名という構成で、男女入りまじっての活動です。真面目メガネやチャラ男系、不器用男子にふわふわ女子など、なんでもござれのラインナップ。1巻時点では本編にがっつり食い込んでくる感じはないのですが、物語が進めば色々と背景が明らかになって物語の彩もいっそう鮮やかになるのではないでしょうか。


ほしくずドロップ0002
主人公もそうなのですが、どの子も全く嫌味がなく見ていて非常に気持ちいいですしまぁみんな魅力的なんですよ。なんて、やっぱりこの中で一番好きなのは世良さんなんですけれどもね。まあかわいいかわいい。


 なんとなく土台が固まったかという所で1巻完結…と思いきや、最後の最後にものすごい設定を放り込んできており、2巻以降どう転がっていくのか想像つかず。とはいえ作品が放つ雰囲気には変わりないと思いますし、こういった大きな転換を受け入れる下地は、比較的低年齢向けであるARIAならではだとも思いますので、優しく見守りたいと思います。


【男性へのガイド】
→女の子かわいいですし、男の子主人公ですし、男女入りまじっての青春グラフィティは結構好きな方多いのではないかと。
【感想まとめ】
→ストーリー的に何かあるかというとそういうわけでは全然ないのですが、キャラ達がみな生き生きと動いている所が素敵な作品でした。優しい気持ちになれますね。


作品DATA
■著者:小嶋ララ子
■出版社:講談社
■レーベル:KC ARIA
■掲載誌:ARIA
■既刊1巻


■試し読み:第1話

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