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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.04.06
amenotihare.jpgびっけ「あめのちはれ」(1)


新生活に胸躍る高校入学の日
春の嵐は俺たちに
とんでもない試練を運んできた



■名門男子校・雨谷学園の入学式の日、昼過ぎから雨が降り出し、やがて強い嵐に見舞われた。あまりに強い嵐の中、校舎に取り残されたのは5人の新入生。とりあえず、これから毎日を過ごす校舎を見て回る。その時突然、激しい春雷が彼らを襲う。そして気がついたときには、すでに異変が起きていた。なんと、新入生5人全員が女子の体に変化していたのだ!!

 雨が降ると女子の体になってしまうという、高校生5人を描いた青春ファンタジーです。女子化するのは、長時間雨が続いたときで、一度女子化してしまうと12時間ほど元に戻らない。似たイメージは「らんま」ですかね。突然の事態に戸惑った4人(もう一人は後に合流)は、とりあえず近くにいた寮監に助けを求める。それを信じた寮監は、秘密を守ると同時に彼らを出来る限りサポートします。その第一歩が、全員を寮住まいにすること。そして、女子化したときは、隣にある雨谷学園女子校の授業に出られるように便宜を図ってくれます。


あめのちはれ
女子校舎が物語のメインフィールドになるのでしょうか。


 5人の中でも主人公として扱われるのは、表紙の男の子・葉月。他のメンバーもしっかり描かれますが、基本的には葉月視点で話が進みます。さて、かなりファンタジックな設定を用意してきたわけですが、大切なのはどうやって話を転がすか、ということ。この作品では、女子として授業に出ることで知り合ったクラスメイトと仲良くなり、それをきっかけとして物語が動いていくようです。5人だけの輪の中で終始することなく、外部のキャラクターをしっかり絡めてくるところは好印象。今後は「恋」を中心に描いていくようですが、1巻時点での掴みはバッチリ。次巻に期待させてくれます。
 
 びっけの作品はいつも安定感があって面白いよなぁ、と。先日「獏-BAKU-」をオススメ作品としてご紹介(→レビュー)しましたが、舞台や時代背景を異ならせても、しっかりとファンタジックな要素を織り込んで物語を紡ぎ出してしまう手腕は本当に見事だと思います。今作は日本の青少年たちが主人公となっているので、BL作家の強み(=繊細で微妙な心の揺れ動きを、センシティブに描き出せる特性)を存分に生かせることが出来るでしょう。これは期待。オススメです。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→これは読みやすいと思います。ファンタジックな設定が気に入るかどうかかと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→1巻ではまだジャブ程度か。2巻以降さらに面白くなってくると思います。要チェック。


作品DATA
■著者:びっけ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's LOG COMICS
■掲載誌:B‘s LOG(2008年7月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:620円+税

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
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BEARBEAR
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