
10年後も待ってるよ
みんなで
■4巻発売しました。
未来からの手紙は貴子・アズ・萩田にも届いていた。そして、手紙に書かれていた行動と別の選択をして翔と一緒に体育祭のリレーに出場することにした菜穂たち。この選択は翔を救うことにつながるのだろうか?菜穂と翔の距離も近づいていく第4巻―――。
~アクションの2冊目です~
高野苺先生が集英社を離れて「もうOrangeの続きは読めないんだ……」とあきらめていたのですが、アクションでこうして続きを読める幸せ。アクション自体は女性向けの媒体ではないのですが、もともとの連載誌が女性向けだったので、本作については引き続きレビューをしたいと思います。このマンガがすごい!でもオトコ編としてランクインしているんですよね、これ。
~終わりなんてないという話~
4巻では、実は全員に未来からの手紙が来ていたということが明らかになり、全員協力体制での翔救出作戦が敢行されます。とにかく翔のことを気にかけて優しく接するその様子は、少しばかり過保護にも映るのですが、これぐらいやらないと精神的に死の淵にいるであろう少年を救うことは出来ないということなのでしょうか。当人からしたら、ちょっと優しすぎる周囲の様子を変に思いそうなものですが、今のところそういった感じは見られず。もしかしたら先々で、何か変だと気づいて問い詰めるみたいなシーンがあるかもしれませんね。実はこの物語は明確なゴールというものがなくて、たとえ手紙に書かれている自殺した日を過ぎたとしても、精神的に病んでいる状況が続いていたとしたら、次の日にでも自殺してしまうかもしれない。未来を知っていたという秘密を守り通さなければならないと同時に、いつまでも気にかけ続けなければならないという大変さをはらんだ行動なのです。
~一番つらいのは須和だろうという話~
4巻で最も印象に残っていたのは、須和の語りでしょうか。自分が菜穂と結婚した未来を知っていつつも、決してこの世界ではそこにつながる行動=告白はしないというもの。当人からしたら、やっぱりしたいと思うんですよね、告白だって結婚だって。でもそれはしてはいけないし、しないと決めた。で、こんなことを話すんです……

この世界と、手紙を送ってきた世界は直接関係ない
「未来を変えることはない」というのは、この世界で翔を生かす行動をとることを正当化する理由になるとともに、「菜穂と結婚して幸せな家庭を持っている」という自らの望みを未来の自分に託しているようにも見えるんですよね。諦めというわけではないですが、手紙が未来から過去に想いを託しているのとは逆に、須和だけは逆方向の矢印が飛んでいる感が。自分の想いを殺すか、友達を殺すかの二択ってのは、ちょっと想像するだけでも気が重くなります。
~本当につながっていないのか~
須和はパラレルワールドの概念を説明し、両者間に直接的な影響はないと話していますが、実際のところはどうなのかわかりません。もし未来を変えることになったとしたら、菜穂と須和の間に生まれた子供がいなくなることになったりしそうなのですが、どうなのでしょう。仮に直接つながっていなかったとしても、生まれるべき命が生まれてこないことになるのですから、難しい問題です。そんな双方のつながりも意識しつつ、5巻を楽しみに待ちたいと思います。
■関連記事
作品紹介→16歳、10年後からの手紙がつなぐキセキ:高野苺「orange」1巻
2巻レビュー→二人分の自分の想いを背負って:高野苺「orange」2巻