
一生ものの
お買い物よ
■鍼灸師のリタは、往診で行った先のライブハウスで「ワンダー」と歌うあやしい男と出会った。ブルースのミュージシャンでギターを弾く森田という名のその男は、リタに超接近!そして二人は……!?これが、今一番キュートで奇妙なケッコン・コメディ!!
「ちくたくぼんぼん」(→レビュー)などを描かれている勝田文先生のCocohana連載作です。それではあらすじをご紹介しましょう。ヒロインは鍼灸師として色々な場所を車で往診に回っている女性・リタ。ある日往診で訪れたライブハウスで見かけたギタリスト・森田になぜか気に入られた彼女は、以来彼から猛烈アタックを受けるように。素性は謎に包まれていて気まぐれ、けれども自然で居心地は悪くない。なんだかついつい彼のペースに乗せられてしまい、気が付けば同居し、果てには婚姻届けを渡されます。余りの急展開に戸惑うリタでしたが、これも何かと縁と、結婚を決意して……というめくるめく物語です。

謎多き男森田。ギタリストとして食べてはいるものの、安定した仕事はなくしばらく不在になることもしばしば。人間的にはかなり魅力的で、誰とでもすぐに仲良くなります。いわゆる“人たらし”的素養があるように見られます。住むところも不定で、リタと出会ってようやく彼女の家に居つくようになったという。とにかく自分の生きたいように生きているので、ストレスはゼロ。それが本人の魅力にもつながっているのかもしれません。物語は基本的に彼のペースで進みます。
「ちくたくぼんぼん」もそうだったのですが、目まぐるしくシーンが変わり、休むことなく物語が転がっていく様子が本当に気持ちよくて、奇妙に感じつつも気が付けばグッとこの世界に引き込まれているんですよね。マンガを読んでいるというよりは、テンポの良い音楽を聴いているとか、戯曲的な印象に近いでしょうか。森田という謎に包まれた、けれども非常に印象的で魅力的なキャラクターを筆頭に、キャラや展開はどこか現実離れしているのですが、だからこそ楽しくて面白い。普通にしてたらポップスターと出会ったり、手に汗握るカーチェイスをしたり、なかなか無いではないですか。
一応物語の舞台は現在になるのですが、登場する人やモノのせいなのか、抱いている雰囲気はどこか昭和的で温かさと古臭さを感じさせます。ライブハウスだったり、森田がブルース好きだったり、リタが古い車に乗っていたりするからかも。人と人のつながりかたも、ご近所づきあい的な昔ながらの匂いを感じさせたり。
リタは常識人的ではあるのですが、かなり慌てんぼうだったり、決断が思い切っていたりと、どこか普通とは外れた感じのある人です。そういうリズムが、森田には合うのかもしれません。

いきなりこんなのに巻き込まれたりするという。この非現実感というか、浮遊感が好き。
いやー、この空気感やテンポは恐らく実際に読んでいただかないと伝わらないとは思うのですが、ともかく面白くてオススメですよっていう話です。「ちくたくぼんぼん」を読んでいる方がいたとしたら、もうそのまんまの雰囲気を想像してもらえればいいかもしれません。ちょっと慌てんぼうなヒロインが、謎多き男に振り回されつつも愛を育むという、構造的にはそう変わらない物語になっているんじゃないかと思います。この後どう転がっていくかはわかりませんが、どこまで行っても基本的には陽気に進んでいってくれるんじゃないかと。
【男性へのガイド】
→勝田文先生の作品は割と男性女性関係なく楽しめる内容になっているかと思うんですが、いかがでしょう。
【感想まとめ】
→文中で書ききった感はあるのですが、とにかくテンポが良く読んでいて楽しいです。オススメです。
作品DATA
■著者:勝田文
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:Cocohana
■既刊1巻
■価格:419円+税
■試し読み:第1話