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Tag [新作レビュー] 2015.03.12
1106500720.jpg田中メカ「君のコトなど絶対に」(1)



僕が越えるべきものは
未来ではなく過去にある。




■幼少期、老舗百貨店の娘・天真にプライドをズタズタにされた成金アパレル企業の息子・礼央。復讐を誓ってアメリカで過ごして早10年……。帰国後再会した天真は、一文無しになっていて……!?リリカル★復讐ロマンス第1巻!

 「キスよりも早く」の田中メカ先生の新連載です。「おとめとメテオ」(→レビュー)は2巻で完結していたのですね(2巻買ってなかったので知らなかった)。どの作品も比較的ぶっ飛んだ設定・キャラの多い田中メカ作品ですが、今回も非現実的な要素を投入してのラブコメとなっております。ではでは内容のほうをご紹介…

 主人公は国内有数のアパレル企業の息子・礼央。高校生となり10年ぶりに日本へと帰国した彼の目下の目的は、幼いころに一緒に過ごした老舗百貨店の娘・天真に復讐をすること。幼いころお転婆な天真に振り回され続け、大きなトラウマを植え付けられた彼は、彼女と再会し自分に恋をさせたのち、こっぴどく捨てて屈服させてやろうという野望を持っていたのでした。しかし帰国して彼女の家に向かうと、そこは差し押さえ済に。なんと彼女の家の百貨店は、倒産していたのでした。一文無しになり親類の間をたらい回しにさせられていた彼女を、礼央は保護し手元に置くことに。優しくしておいて、最後の最後で手のひらを反すという、描き続けた野望を実現せしめんとするのですが……というお話。


君のことなど絶対に0002
 主人公の礼央は、外見がかなり良く、外面もばっちり。天使の笑顔の持ち主なんて言われたりもしております。家も成金とはいえ国内有数の企業であり、将来は安泰。向かう所敵なしという感じで、唯一克服したいのが自身の持つトラウマ。そのトラウマ克服のアプローチとして、植え付けた当人である天真に復讐しようとしているという背景があります。


 一方の天真は世間知らずのお嬢様で、外聞なんてまったく気にしないプライドゼロの空気読めない系。会社の倒産で行き場を無くし、礼央の家のお手伝いというポジションに落ちてしまうのですが、そこに悔しさや恥ずかしさなんて全くなくて、むしろ彼に感謝しているくらいだったりします。その反応が礼央からしたら気に食わない。プライドをズタズタにして…なんて思っていても、当人がそのプライドを持ち合わせておらず、むしろ新しい環境に興味津々なのですから、調子が狂うというものです。


君のことなど絶対に0001
 天真は一人で何もできないどんくささを持っている癖に、好奇心ばかり人一倍あるということで、周囲から見ているとかなり危なっかしい存在と言えるでしょう。そんな彼女が放っておけない礼央。というか、自分がいじめるのはいいのですが、誰かがそうしているのは気に食わないという捻じれた愛情がそこにはあります。
 つまるところ構図的には「ラストゲーム」に近い所があるかもしれません。主人公の男の子は気張って相手を貶めようとするのですが、当人には全く響かず空回りし続け、いつしか恋心を持つように…と。ただラスゲと違って、こちらはより大きなスケールで事が運ぶため、より非現実感を楽しむことができるという感じでしょうか。


 学校は国内でも有数のお金持ちたちが集まる学校というだけあって、なかなか濃いキャラたちが揃っています。主人公の礼央も大金持ちとは言いつつも、成金という部類に入るためヒエラレルキー的には上位ということでは決してありません。上には上がおり、1巻でも後半にものすごいのが登場してきたりと、かなりハチャメチャしそうな要素はあり。1巻時点でかなり賑やかに散らかっている感があるのですが(いい意味で)、これが2巻以降増していくことになるのでしょう。

 ともあれお金持ちな環境で貧乏なヒロインが奮闘するという少女漫画の教科書的なラインをしっかりと踏んでおり、そういった作品が好きな方はまず手に取って間違いない内容になっているかと思います。


【男性へのガイド】
→お金持ち系の学校でのラブコメって少女漫画ではよく見られるのですが、男性はどうとらえているのでしょうか。
【感想まとめ】
→おとめとメテオより全然とっつき易いと個人的には思っています。田中メカ先生最大の売りであるトキメキが1巻時点ではほとんどなくちょっと肩透かし食らった感はあるのですが、人間関係が深まってくる2巻以降ではしっかり投入されてくることでしょう。



作品DATA
■著者:田中メカ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:LaLa
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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