
あたしね
聡ちゃんのことが好きです
大好きです
■下町の銭湯「すずめ湯」の娘・まめは、子供の頃からずっと幼馴染の聡ちゃんに片想い中。聡ちゃんの妻・春さんが亡くなってから一年、聡ちゃんの愛娘・優に慕われながら、恋心を募らせるまめ―――。あきらめないヒロイン・まめちゃんの一途な恋の行方は……!?
「放浪息子」や「青い花」の志村貴子先生のKISS連載作です。KISSは最近色々な漫画家さんを呼んでおり、ついに志村貴子先生の作品まで紹介できることになるとは、ありがたやありがたや。
物語の主人公はKISSらしくアラサーヒロインです。27歳独身、彼氏なしのまめ。家族で経営している下町の銭湯の手伝いをしながら過ごしています。そんな彼女が物心ついたぐらいの頃から想いを寄せ続けているのが、幼馴染の聡ちゃん。幾度となくフラれ続けているものの、未だにその想いを断ち切ることができずにいます。彼には奥さんと、そして子供がいましたが、つい最近になって奥さんが他界し親一人子一人という状態に。つかず離れず、決して付き合えるなんて思いもしないけれど、好きという気持ちは持ち続けて…という一途すぎる想いを描いたお話。

まめは背が高くて一途で、想いが溢れて時に涙を流したりするのですが、それを見て思い出したのは「ハチミツとクローバー」の山田さん。彼女に通ずる、純粋さや痛々しさ、切なさややるせなさが詰まっているキャラクターだと思います。もう、ほ
んと好き。
あらすじからだと、ヒロインのまめちゃんばかりが一途な想いを抱いているような感じに映りますが、物語が進むにつれて、決してそれだけではなさそうだということが明らかになってきます。登場人物からそれぞれ恋の矢印が伸びているのですが、その流れが複雑で根が深い。みんな30前後のいい歳なんですけれども、びっくりするぐらいに純粋で、なんだかちょっと羨ましくなってきます。もちろんその年齢なりの濁りはあるんですけれども、にしてもそこにあるのは紛れもなく「恋」でして、この媒体・年齢層としてはかなり純度の高い恋愛作品に仕上がっているかと思います。
まめの想い人・聡は、何度となくまめを振り続けているという。もちろん彼女の想いはわかっているのですが、彼にも好みがありますし、想う人がいるという。妻を亡くしたばかりという状況に加え、育ち盛りの一人娘を養い育てていかなければならず、なかなか恋愛というモードには入っていけないのが正直なところです。反応も芳しくなく、この物語の結末として、まめの想いが成就するのか、はたまた叶わず終わっていくのか、全く見えてきません。だからこそ続きが気になってしまうのですけれど。

物語を彩るのは、近所の幼馴染たち。聡の弟だったり、近所のお寺の息子だったり。彼らもヒトクセあるのですが、みないい子たちなんですよ。下町という舞台背景があることから、その人間関係は狭い範囲に留まっております。そのため、過去にちょっとした出来事や関わりがあったりと、そういったエピソードも現在に少なからず影響を与えるスパイスとして落とし込まれてきます。狭い範囲での人間関係ってのは温かさはあるものの、その狭さゆえにどこか不健全でもあり、だからこその味わいがしっかりと描かれているようにも感じます。とにかく、一度読んでみてほしい、オススメの一冊です。
【男性へのガイド】
→志村貴子先生ですから。もう、それだけで説明としては十分でしょう。
【感想まとめ】
→いや、期待していた以上に面白くて早くも続きが待ち遠しい。主人公はアラサーなんですけれども、志村貴子的エッセンスはしっかりと受け継いでおり、読んでいて時に切なく時にウキウキと心動かされました。オススメです。
作品DATA
■著者:志村貴子
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■試し読み:第1話