桑佳あさ「片想いフィーバー」(1)
……ごめん俺
里沙じゃ勃たない■全員アウト!好きって言えばいいもんじゃない。
小学校からずっと仲良しで、同じ高校に進学した幼なじみの里沙、友弘、詩也。でもある日、友弘が前田先輩にひと目ぼれして大変なことに。焦った里沙は思い切って友弘に告白。だけど前田先輩へのアピールに必死な友弘には、相手にしてらえない。そんな中、もう一人の幼なじみ・詩也が里沙に告白してきて……。恋の熱に浮かされた高校生たちの捨て身で素敵な全力投球!全員が片想いなこの恋のラビリンスに、出口はあるの…!?
桑佳あさ先生の初単行本です。全員片想いな青春グラフィティ。主人公は表紙にも描かれている女の子の里沙。彼女には小学校の時からずっと一緒に過ごしてきた幼馴染が二人いました。一人は友弘、里沙がずっと好きな相手。けれども里沙の想いも虚しく、友弘はツンツン美人な前田先輩に夢中で全く相手にしてもらえません。その横で、里沙に想いを寄せるのがもう一人の幼馴染の詩也。それぞれが思い思いの相手に恋の矢印を伸ばしているものの、決して交わることのない状況に、やきもきしつつも頑張る彼らですが…というお話。
片思いの応酬というと、切なさが前面に押し出されて胸が苦しくなるような作品を思い浮かべると思うのですが、これはあんまりそういう感じを受けません。むしろコメディ一直線という感じすらあります。その源泉となっているのが、登場人物が割と全員ロクデモナイからというのがあるかもしれません。みんな真面目に片想いしているのですが、全員想いがフルオープンである楽さ加減があるのに加え、こんな感じなので……

ひどくオープンエロな友弘(爽やかエロ)

友弘の想いを引き寄せたいがゆえに胸を触らせる里沙(アホ)

優しくしておいて出し抜こうとする詩也(ゲス)

ツンツンどころか……な前田先輩(ドS)
四六時中こんな感じではないのですが、こういったネタがちょいちょい挟まれてくるので、十代の恋愛を切なく描いた同系の作品とは一線を画する雰囲気を持っています。むしろ上記の個性とネタの強さと、定期的にオチが来る感じは、学園4コマ漫画に近いものがあるかもしれません。4コマ好きの人にちょっとおすすめしたいちょっと変わった雰囲気の物語。
恋愛ものとして見るならば、それぞれが驚くほどに真っ直ぐに相手にぶつかるので、ストレートで気持ちが良くとも、それがやや単調に映ってしまうところはあるかもしれません。これから巻数が重なるに従い、切なさ成分も増えてくるような気もしているのですが、このままコメディ調で明るく推移することも十分に考えられ、展開はちょっと見えず。ひとまずは明るくテンポ良く読める学園ラブコメとして楽しんでいただければと思います。
【男性へのガイド】→ほとばしる4コマ感は男性が読むのにあたっても良い後押しになるんじゃないかと思います。あと前田先輩、イイですよね。
【感想まとめ】→読後に何か残るかというと別に何も残らないのですが、それが良い所なんだと思います。肩ひじ張らずに読める、デザート連載としては一風変わった雰囲気のコメディ。
作品DATA■著者:桑佳あさ
■出版社:講談社
■レーベル:KC DESSERT
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■試し読み:
第1話