このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2015.04.06
71N9M2md8uL.jpg加々見絵里「それは色めく不協和音」(1)



お前のおかげでめちゃくちゃ楽しくなりそうだ



■「音」がつなぐ、僕らの過去と未来。
明誠学園・ピアノ科に入学した、小心者の奏一郎。彼は、ピアノ男子に目がない音々という女子生徒に目をつけられる。はじめは彼女から逃げていたが、音々のピアノ男子好きには理由があるようで……。

 加々見絵里先生のシルフ連載作です。気弱なピアノ男子が主人公の学園ラブコメディ。物語の主人公は、メガネで前髪深めな奏一郎。明誠学園のピアノ科に入学するも、気弱な彼は新生活に不安を覚えていました。そんな彼は、なぜか普通化の秀才でお嬢様の藤岡音々にひょんなことから目をつけられ、以来ことあるごとに一一緒に過ごすように。一見、見目麗しい美少女の彼女なのですが、なにやらピアノ男子というものに目がないらしく、ピアノ男子の話をすると途端に「ハァハァ」と気持ちの悪い感じに。数居る男子の中でなぜ奏一郎なのかというと、入学試験の際に彼女が好きな曲を見事に弾いたからだという。押しの弱い奏一郎は、度々彼女の無茶ブリに巻き込まれてしまうのですが、、、というストーリー。


それは色めく不協和音
この巻き込み力。一応本人は良かれと思って行動しています。


 主人公は気弱でメガネで前髪深め、ヒロインはちょっと変態チックな美少女黒髪お嬢様と、その設定だけ見れば女性向け作品というよりは、オタク系の男性向け作品のようにも見える本作。この組み合わせでどの程度の需要があるかは定かではないのですが、ばっちり巻数がついて連載されているように、一定の人気を得ていることが伺えます。あらましのみでは単なる巻き込まれ系のラブコメ。けれども、彼がかつてお世話になったピアノ講師と、彼女がピアノ好きとなったきっかけを作った人物が同じという繋がりがあり、まだ明らかになっていない関係性が今後浮かび上がってきそうです。

 ラブコメの体は成しているものの、奏一郎は音々のことを「残念な女子」として見ており、恋愛感情は時間を重ねてゆっくりと形を帯びてきそうな雰囲気。一方の音々もピアノ男子は好きではあるものの、奏一郎のことを恋愛対象としてとらえているかというと決してそうではなく、お互いが想いあってくっつくまでにはそこそこ時間がかかりそうな感じがあります。また物語としては単なる巻き込まれ系ドタバタラブコメとしての側面だけでなく、奏一郎が人前で全くピアノを弾けない(弾けるときは何かが乗り移ったようになり記憶が飛ぶ)というコンプレックスを抱えており、それを音々とのつながりによって克服(していくであろう)というちょっとした再生の要素も落とし込まれています。

 恐らくそこに、彼のピアノ講師との関係性が関わってくるのですが、1巻時点では驚くほど何も明かされておらず、そこを強みに本作を推すのはなかなか難しいという。そのためキャラの個性を強調材料とせざるを得ないのですが、主人公もヒロインもこの手のレーベルらしく味付けが濃いので、かなり好みは別れそうな感じがあります。ヒロインの音々なんかは、照れたりした表情とか見てみたいんですけれども(個人的欲求)。


【男性へのガイド】
→設定的には男性向けの色が強いのですが、主人公含めキャラの作り的には女性向けの色が強く、難しい所。
【感想まとめ】
→個性的なキャラクターたちが自由に動き回れるような舞台設定で、やりたいことをやっているんだろなぁという楽しさが伝わってくる作品でした。あと本編に全く関係ないですが、表紙素敵ですよね。色使いといい、構成といい。



作品DATA
■著者:加々見絵里
■出版社:角川書店
■レーベル:シルフコミックス
■掲載誌:シルフ
■既刊1巻
■価格:580円+税


■試し読み:第1話

カテゴリ「シルフ」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。