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Tag [オススメ] 2009.04.12
07213723.jpgねむようこ「午前3時の無法地帯」(1)


いやいやいや…待てももこ…
いくらなんでも
そこは超えちゃいけないってば!
女子として…女子として!!



■2巻発売しました。
 イラストレーターを夢見るももこが就職した先は、夢とはかけ離れたパチンコ専門のデザイン事務所。午前3時でも、社員全員絶賛稼働中。社泊なんて当たり前、ヤクザのような営業や、パンツ姿で男が歩いている、そんな事務所。徹夜続きに、充満するタバコの煙…女子力は下がる一方。いつかこんな所辞めてやる!!とは言ってみたものの、なかなかタイミングが掴めない。そうしてまた、ももこのハードな1日が始まる   
 
 イラストレーターを夢見るヒロインが、あろうことかパチンコ専門のデザイン事務所に就職してしまい、厳しい環境で揉まれながらも逞しく生きるというラブコメディです。え、ラブ?なんて思われた方、ラブ、ちゃんとありますよ、ハイ。専門学校時代から付き合っている彼氏がまずいるのですが、彼女の就職と共にすれ違い、やがて破局に。そんな彼女に訪れた、次なる出会いは、意外にも仕事場の近くでした。同じビル内の、別の会社で働く多賀谷というオトナの男性。日々女子力が吸い取られる仕事場の近くに、心のオアシスが出来ます。パチンコ専門の事務所と恋愛という、全く正反対のモチーフが見事に組み合わされて、何とも言えない面白さを描き出します。


真夜中の無法地帯
心のオアシス多賀谷さん。ももこの事務所キッチンでのシャンプー姿を見ても、この包容力ですよ。


 「恋も仕事も」というのは、女性向けマンガにおける一つの定番モデルになるのですが、この作品もそのラインに沿いつつも、敢えてややラインを外れるという形をとっています。仕事は、興味のないパチンコ関連で、しかも失敗ばかり。恋をするにも、恋と言えるかも怪しいような微妙な距離感。それでもやっぱり、この二つに向かっていかなくてはならない。その難しく微妙な乙女心を、ややコミカルなタッチで絶妙に表現します。いやぁ、面白いんだ、これが。
 
 FEELの作品でいえば「サプリ」(→レビュー)もそうですが、周りのキャラクター皆に説得力があって、それが全体として物語を支える原動力になっているというのが魅力なんですよね。なんだか適当な感じの者から、真剣に仕事に打ち込む者、"オンナ"をちゃんと忘れずに生きている者…ヒロインがダメになりそうな時は、なんだかんだで支えてくれる。ヒロインの恋愛だけでなく、こういった関係性を描けるかどうかってのが、オフィスものの作品の出来を左右する一つの要素になってくるんじゃないでしょうか。


【オトコ向け度:☆    】
→女性のためのラブストーリー。甘いとかってワケではないのですが、男性に向けてという感じはしません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→面白かった。もうこの言葉だけで充分でしょう。祥伝社フィールらしい良作で、パチンコ事務所っていう珍しいモチーフの組み込みが、また絶妙です。


作品DATA
■著者:ねむようこ
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング(2008年5月号~連載中)
■既刊2巻
■各価格:905円+税

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