このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] 2009.04.18
shibuyakumaruyamachou.jpgおかざき真里「渋谷区円山町」


ねぇ あたしたちには
キスより 買い物より 放蕩より 冒険より
学校より
こーして抱き合うことが必要だったんだね
あたしたちはずっと
いっしょに泣く場所を捜していたんだね…



■第3弾、「浪人吾郎」が発売されました。
 駅から放射状に道がのびる街、渋谷。道玄坂の先には、ラブホひしめく、迷路のような円山町。恋、友情、偶然の出会い、そして別れ。それぞれの想いが、色鮮やかに描かれた珠玉のオムニバス・ストーリーをお楽しみください   
 
 渋谷道玄坂の先にあるラブホ街・円山町。ここを舞台に、恋愛、友情、出会いと別れ…様々な想いを描き出していきます。ラブホテルなのだから、当然エロ展開が!?なんて思われるかもしれませんが、与えられたものをそのまま使うなんて漫画家魂が許すはずありません(知らんけど)。ラブホは要所要所で登場しますが、使用方法は様々。そこは時に心身の全てをさらけ出す空間になったり、単なる入れ物として機能したり、はたまた過去を回想させる装置になったり…。この街独特の雰囲気を、きっとあなたも感じることができるでしょう。


渋谷区丸山町
円山町に限らず、渋谷全体が舞台となる。


 オムニバスですから当然読切り形です。それでも毎度毎度高い完成度のお話を描いてくるのはさすが。やっぱり描ける人は読切りでも面白いんですね。おかざき作品特有の、ややドライな空気感のなかに見せる希望とか優しさといった感覚は、この作品でも健在。基本ハッピーエンドで終える所も気持ちが良い。切なさや喪失感といった負の感情から出発することが多いので、こうやってバランスをとっているのでしょう。お上手です。
 
 私は渋谷という街がどうにも苦手で、特に週末の渋谷ともなると、あの人ごみを見ただけで辟易してしまいます。そんな私はもっぱら新宿がメインフィールド。人の量はどちらもそれほど変わらないのですが、新宿は全てが混ざりあっている感じがして、「個」を意識せずに過ごせるから楽なんですよね。それに対し渋谷は、1カ所に集まってはいるものの、各々「個」として独立し、決して解け合うことなく主張しあっている感じがして、苦手なのです。たぶん円山町もそういった流れの中にあって、だからこそこのような作品が描けるんだろうなぁ、と。これが新宿だったら成り立たなそう(歌舞伎町とか2丁目はまた別かもしれませんが、もはやそのフレーズ自体が物語を持っている感じなので比較はできない)と思いました。
  

【オトコ向け度:☆☆☆  】
→読みやすいオムニバスだと思います。おかざき真里先生の作品で男性に勧めるとしたらコレをチョイスします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→良作オムニバス。クッキー連載作ということで、対象年齢は20歳前後ぐらい。「潔く柔く」よりもカラッとした作品が読みたいという方に。

作者他作品レビュー→おかざき真里「サプリ」

作品DATA
■著者:おかざき真里
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:クッキー(連載中)
■既刊3巻

カテゴリ「Cookie」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。