
ねぇ あたしたちには
キスより 買い物より 放蕩より 冒険より
学校より
こーして抱き合うことが必要だったんだね
あたしたちはずっと
いっしょに泣く場所を捜していたんだね…
■第3弾、「浪人吾郎」が発売されました。
駅から放射状に道がのびる街、渋谷。道玄坂の先には、ラブホひしめく、迷路のような円山町。恋、友情、偶然の出会い、そして別れ。それぞれの想いが、色鮮やかに描かれた珠玉のオムニバス・ストーリーをお楽しみください
渋谷道玄坂の先にあるラブホ街・円山町。ここを舞台に、恋愛、友情、出会いと別れ…様々な想いを描き出していきます。ラブホテルなのだから、当然エロ展開が!?なんて思われるかもしれませんが、与えられたものをそのまま使うなんて漫画家魂が許すはずありません(知らんけど)。ラブホは要所要所で登場しますが、使用方法は様々。そこは時に心身の全てをさらけ出す空間になったり、単なる入れ物として機能したり、はたまた過去を回想させる装置になったり…。この街独特の雰囲気を、きっとあなたも感じることができるでしょう。

円山町に限らず、渋谷全体が舞台となる。
オムニバスですから当然読切り形です。それでも毎度毎度高い完成度のお話を描いてくるのはさすが。やっぱり描ける人は読切りでも面白いんですね。おかざき作品特有の、ややドライな空気感のなかに見せる希望とか優しさといった感覚は、この作品でも健在。基本ハッピーエンドで終える所も気持ちが良い。切なさや喪失感といった負の感情から出発することが多いので、こうやってバランスをとっているのでしょう。お上手です。
私は渋谷という街がどうにも苦手で、特に週末の渋谷ともなると、あの人ごみを見ただけで辟易してしまいます。そんな私はもっぱら新宿がメインフィールド。人の量はどちらもそれほど変わらないのですが、新宿は全てが混ざりあっている感じがして、「個」を意識せずに過ごせるから楽なんですよね。それに対し渋谷は、1カ所に集まってはいるものの、各々「個」として独立し、決して解け合うことなく主張しあっている感じがして、苦手なのです。たぶん円山町もそういった流れの中にあって、だからこそこのような作品が描けるんだろうなぁ、と。これが新宿だったら成り立たなそう(歌舞伎町とか2丁目はまた別かもしれませんが、もはやそのフレーズ自体が物語を持っている感じなので比較はできない)と思いました。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→読みやすいオムニバスだと思います。おかざき真里先生の作品で男性に勧めるとしたらコレをチョイスします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→良作オムニバス。クッキー連載作ということで、対象年齢は20歳前後ぐらい。「潔く柔く」よりもカラッとした作品が読みたいという方に。
作者他作品レビュー→おかざき真里「サプリ」
作品DATA
■著者:おかざき真里
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:クッキー(連載中)
■既刊3巻