このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.04.18
kyoumoashitamoo.jpg絵夢羅「今日も明日も。」(1)


言った事がすぐ影響しちゃって怖すぎる
でも
きちんと自分を持っている



■3巻発売しました。
 男だけど少女漫画家をしている桃瀬稜は、幼なじみで時折アシスタントをしてもらっているはるかから、妹を紹介される。彼女の名前はちか、小学生のような見ための女子高生で、漫画家志望、現在家族にその夢を反対されて、姉の所に家出中だという。久々の再会は嬉しいが、なぜ妹を…?と思ったら、漫画の描き方を教えてやって欲しいと言う。最初は相手にしなかった稜だったが、時折見せるセンスの良さと、何よりはるかからの脅しに屈し、結局面倒をみることにするが…!?
 
 漫画家志望のヒロイン・ちかが、幼なじみの少女漫画家・稜のもとで修行をしていくという、お仕事コメディです。漫画家志望とは言っても、投稿などの経験はなく、完全にゼロからのスタート。トーン選びや、良作を嗅ぎ分ける嗅覚などには優れるものの、テクニックは目も当てられない。そんな彼女を稜は、面倒くさがりながら指導するのですが、時折ちかが放つ純粋な言葉や行動に、逆に何かを学び取り、だんだんと信頼関係を築いていきます。コメディの様相を呈しているものの、同時に漫画家マンガにもなっており、巻ごとにテーマが掲げられ、仕事についての解説がされます。


今日も明日も
ベタ塗りだって最初はこんな状態。


 漫画家志望の女の子の成長物語というよりは、純粋で明るいヒロインから、逆に稜が何かを感じとり、漫画家としての道を確かめる、人として成長・充実していくというお話になっています。何となく、作者さんの願いとか、理想のようなものが感じられます。多分ちかを描くことで、自分を鼓舞し、正しい姿勢を忘れないようにしているんじゃないのかなぁ、と。ただそのせいかどうかは分からないのですが、「きれいごと」と感じてしまうシーンが多かったように思います。でもそれがこの作品の魅力でもあるわけで…。理想を掲げるのは大切です、けれども、現在「バクマン。」という大作が連載されている中では、どうしても「きれいごと」と感じてしまう所が出てきてしまう。根幹は「マンガが好き」で「良い作品を描きたい」で共通してるんですが、どうなんでしょう。でもコレが本来、漫画家さんが描く漫画道なわけで…。

 だとしたらやっぱりコメディとして楽しむのが正解なのでしょう。ただコメディの割には情に訴えかけるような真面目展開が多いので、(読み手として)その辺の折り合いをどうつけるかが大切。


【オトコ向け度:☆☆   】
→男性に読むためのガイドを示すとしたら、ヒロインのちかでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆   】
→どうにも「薄い」感じが否めません。笑いとシリアスのメリハリをもっとつければ、また違ったのかな、と。とはいえ明るく楽しい日常系のお話が好きな方は、十分楽しめると思います。


作品DATA
■著者:絵夢羅
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(平成20年5月号~連載中)
■既刊3巻

カテゴリ「花とゆめ」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。