このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.04.23
tennoryuutinosakura.jpgすもももも「天の竜・地の桜」(1)


単刀直入に言おう
君の中にある竜の実を目覚めさせ
我々竜の一族を救ってほしい



■3巻発売、完結しました。
 兄の宝と、姉の珠の3人で、毎日仲良く暮らしていたサクラ。しかしそんな平穏な日常は、ある日突然崩れさってしまう。夜中、宝と珠の話を偶然聞いてしまったサクラは、自分が二人と血がつながっていないことを知る。そのことにショックを受けていた矢先、今度は何者かが自宅を襲撃してきた。あまりの事態に全く状況が飲み込めないサクラに、兄と姉はこうなった理由を立て続けに説明してくる。サクラは事故で唯一生き残った子供で、弱っていた彼女を二人が見つけ、助けるために「竜の実」という実を食べさせたというのだ。そして、襲撃してきた輩たちは、その「竜の実」を狙っているらしい。そのことだけを伝え、輩に立ち向かっていった二人は、突然光りに包まれ、石化されてしまう。そして、気づいたときには二人の姿はなく   
 
 竜の一族と、竜の実を食べた少女の、ファンタジー作品です。とにかくめくるめく事態が展開していくので、上記のあらまし紹介でも全然足りません。さて、兄と姉が連れ去られ、茫然自失のヒロインでしたが、彼女の前に宵闇という竜(姿は人間)が現れます。彼女に「竜の実」を食べさせたのがこの宵闇。こうなってしまった責任の一端は自分にもあると、彼女の兄と姉探しの手伝いを申し出ます。そして辿り着いた先が「竜ヶ淵学園」。人でないものが、人の姿をして多く集まってくるこの学園に、石化された二人が囚われているというのです。何としても二人を助けるべく、竜ヶ淵学園に乗り込むサクラでしたが、そこにはさらに大きな想いが渦巻いていて、彼女はそれに飲まれる形で巻き込まれていきます。


天の竜地の桜
意外と簡単に宝と珠の居場所は判明。その後、どう助け出すかに焦点が当てられ、話が進む。


 これで半分ぐらいですかね。とりあえず、大元になるのは「兄と姉を助けたい」ということ。そのために、竜の宵闇の助けを受けながら、竜ヶ淵学園でなにやら厄介な問題に首を突っ込んでいきます。その厄介な問題というのが、竜の一族の存亡について(ちなみに竜ヶ淵学園の理事長は竜の一族です)。竜の一族は現在存亡の危機に立たされており、それを救えるのが「竜の実」というアイテム。しかし竜の実のなる木はすでに枯れており、現存するもので何とかするしかない。そこでターゲットとして浮上してきたのが、サクラというわけ。竜の実が目覚めると、一族が救われるだけでなく、兄と姉の石化も解けるということで、サクラもそれに協力することに。とりあえず実を目覚めさせる方法として、竜と王子と接触が提示され、彼女は王子達に近づいていきます。
 
 とまぁこんなお話なのですが、さらにここに新体操部のストーリーや、宵闇と一族との関係なども話に絡んできて、非常に込み入った状況になります。しかし読みづらいかというとそうではなく、説明的な台詞がしっかり差し込まれてくるので、むしろ分かりやすい部類に入ると言えるでしょう。ファンタジー漫画ではあるのですが、イメージはむしろRPG。ストーリーに澱みがなく、次々イベントが用意されている所とかはまさにという感じ。RPGの醍醐味は、謎解きやストーリー分岐だというのが一般的だとは思いますが、攻略本読みながらサクサクという人達も結構いるわけで、そういう意味では十分楽しめる作品に仕上がっているのかもしれません。ちょっと味気ないですけどね。
 

【オトコ向け度:☆    】
→男性にも読める下地はあるとは思いますが、わざわざ読まんでも良いかな、という感じですかね。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→説明は長くなりましたが、いざ読んでみると思いの外スッキリしていますよ。絵柄も秋田書店系にしてはクセがなく、入り口としてはちょうど良いかもしれません。


作品DATA
■著者:すもももも
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(2008年1月号~2009年3月号)
■全3巻

カテゴリ「プリンセス」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。