藤崎真緒「1+1」(1)
あれ?
血がつながってないのなら
恋もしておっけー?■7巻発売しました。
幾見めいと、幾見たけるは、学校でも評判のラブラブな双子の姉弟。二人とも容姿端麗で、モテる。両親が海外赴任中で、今は二人で暮らしている。天然でお気楽なめいとは対照的に、弟のたけるはしっかり者で、もっぱら姉の世話に追われている。そのため彼女も作らずにいる。そんなある日、めいは生徒会長からの告白をきっかけに、たけるへの想いが、家族愛とは違う、恋心であることを自覚する。決して叶うことのない恋に、正面から向き合っていくことを決めためいだったが…!?
終始明るく進む、双子の恋の物語です。学校でも評判のブラコンっぷりを発揮するめい。そして、それに仕方なく付き合うたける。そんな構図で捉えられていた二人でしたが、めいが自分のブラコンっぷりを今更ながら自覚し、さらにそこから恋心までも自覚することから、二人の関係に変化が生まれていきます。決して叶わない、それでも大好き。報われない恋心とじっくり付き合っていくことを決めた矢先、ひょんなことから二人に血のつながりがないことを知り、驚くめい。しかしそのことはたけるも知っており、さらにはたけるもめいのことが姉としてではなく、好きだという。晴れて両想いになった二人ですが、戸籍上は姉弟なわけで、障害はたくさん。それでも明るく、前向きに、乗り越えていきます。

こんな距離感。手をつなぐ、抱きつくなんて当たり前です。
お気楽+天然というキャラ説明がされているめいですが、実際はそういったキャラ属性では収まりきらないほど、判別の難しいキャラになっています。まず、たけるとの距離感がとても近い。かと思えば突然距離を取ってみたり、ものさしでは計れないような行動の仕方。さらにお嬢様系の天然かと思いきや、洋物ポルノを観て爆笑、果ては解説まで入れるといった設定が。いったいどこに向かおうとしているのだろう。また叶わないとは分かっていても、独占欲的な気持ちは強く、まただからといって自分は特に何かしてあげるってことはありません。悪く言えば「身勝手」なのですが、それこそが「天然」なのかもしれんなぁ。とにかく何か一つの括りでは表せないほどぶっ飛んだキャラです、めいは。
妹持ちの自分からすると、この二人の距離感は正直キツいです。加えてめいのキャラも掴みづらく、馴染めない。不安定というか、なんというか。しかしこのキャラがひとつの魅力なワケであって、また距離感に関しても、実は双子ではなかったって設定があるから良いのかなぁ。白泉社ですし明るく行くにはこれぐらいの方が、ってことなのでしょうか。
とはいえ「血がつながっていなければ万事OK」という流れはどうなのだろう。いや倫理云々ではなく、そこを抜け道にすると、どうしても軽い内容になってしまうというか。血のつながりがあろうとなかろうと、一緒に家族として過ごした時間というのは確実にあるわけで、やはり乗り越えるなら、真っ正面から行って欲しいな、と。そうすると当然明るくない展開になるわけですが、兄妹ものはそれを描いてなんぼだと個人的には思います。仙石寛子「背伸びして情熱」に収録されている「赤くない糸」しかり、直木賞作品の村山由佳「星々の舟」しかり。また、青木琴美「僕は妹に恋をする」も、安易な方向に流れなかった所は評価したい。ま、単純に兄妹ものが苦手ってだけなのかもしれませんけれど。
【オトコ向け度:☆☆ 】→白泉社らしい明るいラブコメ。男性にも読める下地はあるとは思いますが、ヒロインのキャラがどうなのだろう。カワイイのですが、属性云々で片付けられないキャラというのは、むしろ男性は苦手なんじゃなかろうか、と。
【私的お薦め度:☆ 】→個人的にこのシチュエーション&キャラが決定的に合わなかったというだけで、評価が低いというわけではありません。悪しからず。ストーリー自体はしっかり作られており、上記のような要素が苦手な方でない限りは、十分楽しめると思います。
作品DATA■著者:藤崎真緒
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ花とゆめ(平成15年12/1~平成18年6/1号),別冊花とゆめ(平成19年8月号~連載中)
■既刊7巻