みつきかこ「ソラログ」(1)
いつから同じ空を見上げていたんだろう
なみだを宙に映して
星の夜 耳をすませば
あの日出会った偶然は
運命というのかもしれない■天文部員の光は、昼も夜も関係なく、空を見上げるのが大好きな女の子。観測会のあった日の夜、学校ですれ違った背の高い男の子に、公園で偶然再会する。不思議と彼に目が奪われ、いつしかまた会いたいと想うように。その後、学校で彼とまた再会。彼の名前は麻生くん。その風貌から、悪い噂の絶えない生徒だという。しかし、時折鳴る鈴の音が不思議と心を掴み、無口ながらも優しく接してくれる彼に、光はどんどん惹かれていく…
空をめぐる、切ないラブストーリーです。いや、切ないかはまだ分かりません。でも、多分そういう方向に流れます。さて、ヒロインの光ですが、とにかく空が大好きな女の子。そんな彼女にべったりなのが、兄のくま。そして、ある日突然光の前に現れ、あっという間に心を奪っていったのが、麻生くん。とりあえずのメインキャラは以上です。単なる学園ラブストーリーかと思いきや、彼らが過去に関わりを持っていたという設定があり、伏線として描かれています。そのキーとなるのが、鈴の音。麻生くんが持っている鈴の音に、不思議と興味が湧き、やがて彼自身を想うように。やがて鈴の音をきっかけとして、忘れていた過去を思い出していきます。

星の音=鈴の音が、忘れてしまった過去を思い出させる鍵になる。
みつき先生の前作「月のワルツ」(→
レビュー)の時に、次の連載が正念場ということを書きましたが、さて今作の出来はどうだったのでしょうか。まず、みつき先生の持ち味である、切なさミックスのキレイな物語は高い安定感と共に十分出ています。しかし、相変わらず突き抜けるところまでいきません。そろそろ代名詞となるような作品が欲しい頃だと思うのですが、ちょっとこじんまりとした印象。ただ、単調な物語として落ち着く気配はなく、しっかりと伏線を用意。1巻最後でそれが発動と、次への引きはバッチリ。この設定如何では、良作の仲間入りも十分ありえるわけで、期待してみたいですね。とにかくその伏線がいかに機能するかという所に懸かっていると思います。
基本はひとりの女の子の恋物語。しかし、彼女を取り巻く物語の全体像は、1巻時点では見通すことはできません。この作者さんですから、しっかりまとめてくるのでしょうが、果たしてどんな展開になるのでしょうか。物語の続きも気になりますが、作者さん自身の今後も懸かってくるような気もするので、その辺含め、次巻に注目。購入してみることにします。
【オトコ向け度:☆ 】→みつき作品は女性向けの色が強いです。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】→安定感のあるラブストーリー。展開次第ではさらなるジャンプアップもありえるかもしれません。
作品DATA■著者:みつきかこ
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ(2008年12月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税