
全身をかけめぐる
心臓の音
ああ これは
恋の音なんだ…
■5巻発売、完結しました。
中学3年の夏休み。海沿いのおばあちゃんの家に泊まりにきた苺は、夜、不思議な男の子・光輝くんと出会う。キレイな風貌で、からかって来て、そうかと思えば一緒に流星を見てくれたり、突然人が変わったように海に入っていこうとしたり…。聞きたいことがたくさんあった。けれど、もう会うことはできない。一夏の思い出と、心にしまっておこうと決めた苺だったが、入学した高校で彼と偶然再会。初めての恋が、苺をさらってゆく
中学のときに出会った男の子と、高校で再び出会うことから始まる、ピュアラブストーリーです。高校で再会するも、始めは苺のことを覚えていないと嘘を吐く光輝。それには、ある事情があるのですが、それについては序盤では明らかにされません。それでも苺が放っておけない光輝は、何かにつけてトラブルに巻き込まれる彼女をついつい助けてしまい、結局嘘がバレてしまいます。そこから彼の問題については触れられず、やがて二人は付き合うように。努めて明るく振る舞う光輝ですが、一緒に過ごすことで、彼の根底にあるものが気になり始める苺。そしてついに、彼の過去が明らかになっていくのですが、それをいかに乗り越えていけるかというのがこの作品のテーマとなっているように思います。

洋菓子食べてるような感じ。甘~いです。
宇佐美真紀先生の作品は、「春行きバス」(→レビュー)を以前ご紹介しましたが、今作はそれに続く本格長編連載です。「春行き」がオムニバスだったので、長編にいってどうかと思っていたのですが、しっかり描き上げてきます。宇佐美先生の作品の魅力は、女の子の恋心をピュアに描き出せるところにあるのですが、今作もバッチリ。伊達に「恋音」なんてタイトルを掲げてません。ただ一方で、設定が少し深刻すぎないかなぁ、という感も。別にここまで重たくせんでも切なさは描き出せるだろうに。等身大の恋を描くのが魅力だと思うのですが、この設定を用いることで逆に現実感のなさが出てしまっているような気もします。まぁだからといってキュンキュン効果が半減しているなんてことはないのですが。
伏線としての光輝くんの過去は、1巻の時点ではっきりと明示されていて、5巻までいってしっかり完結と、構成としてはバランス良く仕上がっています。余計な脱線をせずに、恋と彼の過去という二つのテーマで終始展開させたのは好印象。ただ余計なものを背負わせない方が、等身大の恋心が表現できるんじゃないかな、とは思います。読切りのスタンスでやって良いと思うんですがね、どうなんでしょ。とはいえ終始ニヤニヤは止まらず。甘々な恋物語が好きな方にはうってつけです。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→設定的に、女子版中二病なんて揶揄されるかもしれませんが、楽しむべきはヒロインの恋心。甘くて思わずにやけてしまうようなお話が好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→設定に違和感が。読切りの方が…なんて感想を持たれる方も少なからずいそう。ただニヤニヤしながら読み終えてしまったのは事実な訳で…。宇佐美先生の描く女の子ってほんとカワイイです。十分楽しめる出来ではありますが、うさみんの実力はこんなモンじゃないはず。次に期待です。
作品DATA
■著者:宇佐美真紀
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ('07年8月号~'09年3月号)
■全5巻