高梨みつば「紅色HERO」(1)
白いボールが好き
落ちるボールをみんなで必死に追いかける
あの瞬間が好き
あたしはバレーボールをしに
ここへ来たんだ■いよいよ最終章突入、15巻発売です。
高級料亭の娘でありながら、バレーボールに全てをかける、男っぽい性格・風貌ののばら。親の反対をよそに、バレーの名門校へ入学するが、女子部は廃部しているという。どうやら強いのは男子部だけで、女子部は折からの人数不足と実績のなさから、今年廃部に追い込まれたらしい。加えて、料亭の跡継ぎ修行をさせたい親が、彼女を束縛しようとする。しかしバレーをするためだけにここへ来たのばらは諦めることができない。そしてついに、ある行動に。家を出て、男子部の寮で寮母の仕事を務めることに。さらに部員を集めて女子部を再建させようとする…。果たして、のばらの未来は!?
バレーに懸けるヒロインの、熱血青春ストーリーです。話の軸は二つあります。まず、部員を集めて部活を再建→春高を目指すという部活もののストーリー。そしてもう一つが、住み込みで働くことになった男子バレー部員との関わりという、恋愛展開。なぜ男子部の寮で働いているかというと、のばらの叔母が寮母をしており、彼女を頼ってのばらが訪ねてきた時、コレは良いと仕事を任せてしまうことから。男子寮には同学年の特待生4人がおり、その中の一人はのばらの昔の知り合いだったりします。一方部活に関してですが、のばら自身が非凡な才能を持っている上、ケガ持ちながら、中学時代の天才セッターがいたり、運動神経抜群な生徒が加入したりと、戦力は十分。また指導者として、途中から春高経験者が加わり、さらに成長していきます。

凛としつつ、恋愛では長い間一方通行の想いを抱えている、天才セッター桜坂さん。素敵すぎます。
恋愛と部活、2足のわらじということで、若干の物足りなさは残るかもしれません。このヒロインであれば、恋愛は程々に、部活メインで話を展開させてもらいたいのですが、実際の所は6:4で恋愛という感じ。ただその4の部活はかなり熱い。高梨先生は、脇役を本当に魅力的に描くのですが、特に女子部の面々は本当に皆キャラに説得力があります。中でも私は桜坂さんが好き。普段は凛としているのに、恋に関しては、叶わぬ想いをずっと抱えているという、その健気さ、最高です。少女マンガなので恋愛も描かないと、ということなのでしょうが、やっぱり私はバレーが見たい!これから最終章突入ということで、バレーのお話が増えそうなので、楽しみ。
正直この作品読んでて2回ぐらい泣いてしまったんですよね、不覚にも。実際もっと熱い、感動的なスポーツ作品はあるのですが、なんででしょう、不思議。特に11巻、愛友学院戦はヤバかった。ここで玲奈を持ってくるか、と。中々戦力になれない子が、人知れず懸命に努力して、報われる。出来過ぎではあるのですが、やっぱり嬉しいじゃないですか、そういうシーンって。少女マンガで、恋愛も描いてはいますが、やっぱり根底に流れるのはスポーツ漫画のソレ。だからこそ、もっと部活を!とね。
【オトコ向け度:☆☆ 】→恋愛云々は必要ないだろと言う男性が大半を占めそう(部活女子だった妹は、それが良いって言ってましたが)。でもスポーツ漫画としての息吹はしっかり感じることができると思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→女子バレーものでは、「少女ファイト」という名作がある事を踏まえつつも、あえてオススメしてみたい。キャラの魅力と、部活時の熱さでは、こちらだって負けてない…はず。ただそれが出てくるのが限られるってのがネックなのですが。
作品DATA■著者:高梨みつば
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成15年1月号~連載中)
■既刊15巻