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Tag [オススメ] 2009.04.30
aoihana.jpg志村貴子「青い花」1巻


私のは
多分それなのだ
生まれてはじめての恋だったから
私はいつまでもそれにとらわれてしまう



■アニメ化(→公式サイト)も決定、4巻発売しました。
 鎌倉の進学校・松岡女子高校に入学した万城目ふみ(通称ふみちゃん)は、入学式に行く電車の中で、10年ぶりに幼なじみの奥平あきら(通称あーちゃん)に再会する。あーちゃんは、同じ鎌倉のお嬢様学校・藤が谷女学院に通うらしい。同じ方向への通学ということで、程なく二人は一緒に登校するようになる   

 あらすじ紹介の切りどころが難しい作品ですね。「放浪息子」でおなじみ(?)の志村貴子先生が描く、女子高生たちの恋と友情の物語です。要は百合作品ですね。幼なじみに10年ぶりに出会うという所からこの物語は始まりますが、それぞれ別の女子高に通うというのが一つのミソになっています。背が高く内気な性格のふみちゃんは、小さいけれど強気で明るいあーちゃんが初恋のお相手。ちなみに従姉と付き合っていて、この度彼女の結婚で、捨てられるように別れたという設定があります。根っからの百合気質です。そんな彼女は高校で、ひょんなことから文芸部に入部。お目当ては3年の杉本先輩。目当てと言うと表現が悪いか、憧れて、ですね。で、とりあえず序盤は、ヒロイン2人の関係と同じ位、杉本先輩とふみ、その周辺について描かれます。


青い花
あーちゃんはこのスタンスだからこそ可愛いと思うのですが…。でも恋する姿も確かに見てみたい…。


 2校が舞台となるので、結構な人数が序盤から登場します。そのためしっかり人物を掴んでおかないと、読み進めるのに苦労するかもしれません。舞台と人物が入り乱れるんです。各人それぞれに恋やら何やらの悩みを抱えており、物語を彩ります。本線はふみちゃんとあーちゃんの恋模様…になるはず。しかしあーちゃんはノン気。個人的にはそんなノン気なあーちゃんが大好きなので、このままのラインを保って欲しいな、なんて願いがありつつも、実際はそうは行かないのでしょうね。だってそれじゃあ話が進まないもの。
 
 「百合だから良い」というよりは、「志村貴子だから良い」という感じの作品です。雰囲気で読め!とはいかにも粗雑な言い回しになってしまいますが、志村貴子作品に関して言えば、それ以上の推薦の言葉が見つかりません。この作品も、本来持ちたる志村作品の雰囲気に加え、鎌倉という舞台設定が非常に良い形でマッチ。また、全ての登場人物が、自分の意志で動いている。誰一人として、物語のために動かされている人がいない印象。百合が苦手な方でも読める良作だと思います。当然オススメ。

 ちなみに「青い花」というタイトルは、ノヴァーリスの小説から来ているそうで。この作品で「青い花」は永遠の理想の象徴として描かれていおり、それを踏まえつつ読むとまた物語の世界が広がるかもしれませんね。っていうかこれって未完だったんですね、知らなかった(そもそも内容もほとんど覚えてないんですが)。何故この作品が、フランス文学だらけの父の書斎にあったのだろう(ノヴァーリスはロマン主義のドイツ人)…謎です。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→男も余裕でいけるけど、造り的には女性向けな感じです。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→まぁとりあえず読んでみれば分かるよ、と。


作品DATA
■著者:志村貴子
■出版社:太田出版
■レーベル:f×COMICS
■掲載誌:マンガ・エロティクスF(2004年vol.30~連載中)
■既刊4巻
■各952円+税

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