
この国の名前を
僕は知らない
『召霞』である自分にはどうでもいい事で
もうすっかり知りたいとも思わなくなったから
■信仰用のドレイ『召霞(サペレ)』と呼ばれる少年たち。暴力や性的虐待といった仕打ちを受けながらも、雇い主から捨てられる恐怖に怯える彼らは、仲間と身も心も寄せあい、その運命を受け入れていた。始めは自ら楽しみを求め行動しいるものの、やがてその仕打ちに病み、求める事をあきらめていく。だがその中の一人、レプ・レは、身体の自由は失っても、心の自由は奪わせなかった
信仰用のドレイ『召霞』の少年レプ・レを中心に描く、ラブ・クエスト・ファンタジーです。この世界の宗教は、苦しみを受けた分、未来ないし来世で幸福になれるというというもので、人々は皆幸せになるために苦しみを受けなくてはなりません。しかし然う然う苦しみなんて受けたいものじゃない。そこで登場するのが『召霞』。彼らは信仰者の替わりに苦しみを受けます。さらにそれによって強制的に思考に空白を作り、それを神様と繋いでその恩恵を誰かにあげる…というのが役目になります。故に心を壊す召霞は跡を絶ちません。しかしそれでも、生きていくためには召霞としての役目を全うせねばならず、日々雇い主に捨てられる恐怖に怯えながら暮らしています。

普通の「召霞」とは少し違う感覚を持つレプ・レ。
このお話はそんな召霞の少年・レプ・レが主人公。まず導入に、召霞になる前のとある出来事について描かれ、本編にて、召霞としての生活が描かれます。彼の雇い主はどちらかと言うと放任型。また売り主も(商品としてですが)レプ・レのことは大切にしており、比較的恵まれた環境にあると言えるかもしれません。物語はレプ・レが、ある日ミュライナという男と出会う事をきっかけに、大きく動いていきます(いや、そう思えただけで実際はわからんけど)。
導入部の「鍵」と、心が壊れた召霞・ロイエの存在が大きな伏線として利いており、その後の物語の展開に深く関わってくると思われます。基本はレプ・レの「心」の物語になってくるのでしょう。現時点ではまだ物語の全貌が全く見えず、舞台は整えましたよ、という感じ。「ドラゴン騎士団」で実績のある作者さんですから、時間をかけて深い物語を構築していくのでしょう。
一応ラブ・ファンタジーとあるのですが、これってBLなの?単純なセックス・キスというワケではなく、精神的なウェイトが非常に大きいので、それほど違和感なく読めますけど、「BLテイスト」ぐらいの認識は持っておいたほうが良いかもしれません。また序盤から結構な数の人物が登場します。描き分けバッチリなら良いのですが、実際のところは微妙。見分けがつきづらいキャラがおり、読むのに若干手こずりました。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→設定のわりに小さい物語ではありますが、その分深みや展開のさせ方に味が出ているので、楽しめる人は楽しめると思います。まぁBL的な要素がダメだと元も子もないんですが。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→実績ありの作者さんですし、多分しっかり描いてくるんでしょう。ただ個人的には続きを読もうとは思いませんでした。好きな人は心酔するのでしょうが、その間口は決して広くありません。
作品DATA
■著者:押上美猫
■出版社:新書館
■レーベル:WINGS COMICS
■掲載誌:Wings('08年10月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税