
父上 母上
一進は明日からここで
誠心誠意がんばっていきます
■時は江戸。舞台は天下泰平と謳われし徳川の治世。武家育ちの一進は、跡目争いに巻き込まれ、しばらくの間江戸の町にて身を潜めることに。そんな彼をかくまってくれたのが、江戸火消四十八組の、「く組」。身を隠す以上、普段は町人として、火消しの仕事に携わらなくてはならない。ぶっきらぼうな諸先輩と、慣れない仕事
先月発売だったのですが、手に入るのが遅れたので今ご紹介。江戸の火消の中に、武家の跡取りが放り込まれ奮闘するというお話です。跡目問題で江戸に来ることになった主人公・一進。その目的は時が来るまでその身を隠すこと。どこに身を落ち着けるか思案していた中、偶然彼らを助けた「く組」の纏持ち・狐太郎に頼る形で、そのまま一進は「く組」に所属することに。狐太郎をはじめとした「く組」の面々の中で、打ち解けあい、成長していく一進の姿を描いていきます。また同時並行的に、跡目争いについても物語が進行。現時点では水面下でいくつかの思惑が絡まりあっているという状況ですが、巻が進むごとに徐々にそれらが浮かび上がってくるのでしょう。

火の動きを読む能力を持つ(?)一進。
結局のところ、火消しとしての成長物語を描きたいのか、最終的に跡目争いに繋げていきたいのか判然としないところがあります。その要因となっているのが一進の、火を読む能力。この才に関してはハッキリとした明示があるわけではないのですが、2度ほどそれらしき描写・台詞があったので、ほぼ間違いないかと。で、この才能を物語に組み込むとするならば、どう考えても向かう先は火消しとしてのサクセスストーリーなんですよ。最終的に跡目争いにもっていきたいのだとすれば、この才能はどうしたって邪魔。この能力は別にあっても良いのですが、(跡目争いを生かすのであれば)話のバランス的に得する感じではないですよね。
とはいえ一迅社らしく、絵柄・キャラは本当に魅せる。サスペンスを絡めた町人ライフというのも、なかなか面白い設定だと思います。男性キャラしか登場しませんが、オタ女子に媚を売っているという感じもせず、非常に読みやすい話になっています。今後の課題とすれば、この設定(火消しとしての成長&跡目争い)で、どう折り合いをつけていくかという所かと。1巻ではまだ助走の段階で、これからいかに物語として味付けできるかですね。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→男だらけですけど、鼻につくようなキャラはおらず、それなりに読みやすいと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→「火を読む能力」の一点だけが釈然としないものの、それ以外は良く出来ており、なかなか面白い作品に仕上がっていると思います。スタイリッシュでいかにも一迅社という感じ。表紙に惹かれた方は。
作品DATA
■著者:乾みく
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUM
■掲載誌:ゼロサムWARD(平成20年No.004~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税
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