このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2009.05.05
sennjyounovarukyuria.jpg時東穹生/セガ「戦場のヴァルキュリア-wish your smile-」(1)


そういう意味   だったんだ…
僕も
もっとがんばらなきゃ…



■臆病者の少年ミンツは、国民徴兵制度によって第7小隊の支援兵として徴兵されてしまう。戦闘初日に、あまりの恐怖から逃亡を図るが、敵兵との遭遇であえなく失敗、それどころか命の危機に。そんなピンチを救ったのが、同じ小隊の狙撃兵・ユリウス。冷酷な性格で、ミンツに対し「使えない奴に用はない」と言い放つ彼だったが、隊長の命により、二人はパートナーにされてしまう…

 人気ゲームソフト「戦場のヴァルキュリア」のコミカライズ作品です。コミカライズはエンターブレインだけでなく、角川でも行われており(鬼頭えん「戦場のヴァルキュリア」(1))、あちらはより原作に忠実に、そしてこちらはオリジナルの物語が展開されているようです。またアニメ化もされ、現在放送中だとか(→公式HP)。
 
 話は、徴兵制によって招集された少年兵・ミンツの、第7小隊での成長を描いたお話となっています。初っぱなから逃亡を図り、あえなく失敗したミンツは、結局潔く軍人として生活することを決めます。そんな彼の仕事は、仲間のサポートをする補給兵。気が弱く、線も細い少年兵の成長と、個性派揃いの隊員たちとの関わりあいを描いていきます。


戦場のヴァルキュリア
最初は嫌がっていたミンツも、やがて目標を見つけ奮闘するように。


 単純な軍人ものというわけではなく、もう一つ物語を彩る要素が。彼が、差別を受けている少数民族(ダルクス人)だという設定があり、いかに隊のなかで自分のポジションを獲得していくか、というテーマが同時に描かれます。当然彼を良く思わない輩もいれば、全く気にせず仲良くしてくれる隊員もいます。また彼の所属する隊は義勇軍の一隊なので、その出自が謎に包まれている隊員もチラホラ。ミンツのパートナーのユリウスもその一人で、その過去についての話も、物語の中で展開されます。また女性兵士や少年兵、年くったオッサン兵も登場し、キャラの幅はかなり広いです。
 
 面白かったです。私は原作全く知らないんですが、これを読んで、原作プレイしてみたいと思いました。戦争が題材になっていますが、描かれるのは兵士一人一人について。壮大なテーマをぶち上げて展開させるのも良いですが、よりリアルな戦争観て、むしろこっちなんじゃないかな、と。全体のことなんか把握できずに、放り込まれた環境で、自分のことで精一杯。「となり町戦争」みたいな感じですかね。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→ナヨっとっした主人公や、やけにシュッとしたキャラ描写と、手を出しづらい要素はありますが、読み始めると全く気になりません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→ゲーム原作の漫画は、初見の読者に不親切な場合が多いのですが、この作品はすぐに話に入り込めることが出来ました。話の展開のさせかたも上手。これは次も読みたいです。


作品DATA
■著者:時東穹生/セガ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:B's-LOG(2008年12月号増刊~連載中)
■既刊1巻
■価格:620円+税

■購入する→Amazonbk1


カテゴリ「B's LOG」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。