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Tag [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2009.05.10
irodorimidori.jpg羽柴麻央「イロドリミドリ」


緑くんは私の延長線上にいる人
緑くんの延長線上に
私はいる?



■珠玉の読切り集。
 では表題作をご紹介。玉緒には最近、気になる存在がいる。毎日通う図書館に現れる男の子。思い切って、友達になってくださいと声をかけたら、すんなりOK。以来、図書館でよく一緒に過ごすように。彼の名前は緑くん、同じ中学2年生。不思議な雰囲気をまとう彼と、楽しい毎日を過ごす玉緒だったが、緑くんにはある秘密が…

 昨年話題になりました、珠玉の読切り集のご紹介です。表題作含め、読切り4編を収録。とにかくみんな切ない。思春期の、少年少女の微妙で繊細な心を、絶妙に描き出します。少女マンガにありがちな、派手目で甘々な恋愛展開は一切ありません。なかには恋愛要素が登場しない作品も。でもその分、深みと温かみ、そして静かな切なさを、心いっぱい感じられるようになっています。


イロドリミドリ
雪の日の図書館が、緑くんの放つ不思議な雰囲気をさらに強調する。


 図書館と雪ってどうしてこうも素敵にマッチングするんでしょう。雪+図書館というモチーフの読切りといえば、ジョージ朝倉の「恋文日和」にも収録されていましたが、やはりどこか叙情的で、素敵な印象を受けました。雪と図書館で共通するのは、「静寂」という要素。全てから隔絶された、特別な空間を、雪がさらに多い包み、自分(と好きな相手)だけがそれを楽しんでいる。そんな感覚を、マンガを通して感じているのかもしれませんね。

 また作中にテグジュペリの「星の王子さま」が登場し、ひとつのキーとして使われますが、これも個人的にストライク。上京する際に持ってきた本の中の一冊が、「星の王子さま」でした(今考えると痛い奴ですが、いいんですよ、好きなんだから)。思い入れが非常に強い作品が、物語に登場すると、それだけで心証は良いですね。
 そんな作品を、見事に下世話なネタに変化させた先生が。竹内先生、アンタ最高だよ!なんか全く関係ない話になってしまいましたが、オススメですよってことです。
 

シスタールカは祈らないで
竹内元紀「シスター・ルカは祈らないで!!」より。「星の王子さま」の珠玉の名台詞が…。そんな発想ができるあなたが羨ましい。新連載、期待してます。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→優しく、切ない物語。派手さがないぶん、男性にも読みやすくなっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→非常に雰囲気の良い作品。オススメです。


作品DATA
■著者:羽柴麻央
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:ザ・マーガレット(平成18年6月号,平成19年11月号,平成20年4月号),別マスペシャル(平成17年春の増刊号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1


カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (4)トラックバック(0)TOP▲
コメント

はじめまして!
今日はじめてこのブログを読んだのですが…
いいですね(´゜Д゜`)!
あたしが読んだことある漫画、ほぼ管理人様と同じ感想でございました/(^O^)\
こんなに趣味があった感想初めてなので、嬉しいです!
まだ触りを読んだだけなので、今からもう過去のも読んでみます!
葉月かなえ先生の「堀高ハネモノライダー」はレビューされてますか?
読んだ限りでは、なかったように感じたのですが…。
個人的に葉月かなえ先生は読み切りのほうが好きです(゜∀。)
ブログ止めないでくださいね。
楽しみにしてます!
From: ちる * 2009/05/12 19:58 * URL * [Edit] *  top↑
堀高ハネモノライダーじゃなく
堀高ハネモノレンジャーでしたf^_^;
From: 先程の者です * 2009/05/12 22:23 * URL * [Edit] *  top↑
ご訪問ありがとうございました。
参考になったのでしたら幸いです。

ハネモノライダー・・・なんとなくポルノグラフィティの匂いが(笑)
えーと「堀高ハネモノレンジャー」ですが、読んだことがないので、今度是非読んでみたいと思います。後日、名作ライブラリとしてレビューをお届けできればいいですね。情報ありがとうございました!
私もどちらかというと、葉月先生の作品は短編の方が好きです。

止めないで…ですか。これは、心配されているってこと?(汗)
止めないように頑張りますヽ(*´ヮ`)ノ
From: いづき【管理人】 * 2009/05/12 23:38 * URL * [Edit] *  top↑
漫画図書館で借りたイロドリミドリに衝撃を受けて、いろんな方の感想を見てみたいと思い
辿り着いたのがこのブログです(*^^*)


自分では上手く言葉に出来なかった感情を
綺麗な文章で表現して下さっていて、凄くスッキリしたのを覚えています。


このページを見返すたびにあの感動を思い出します。


もう毎日チェックしてしまうほど
このブログのファンなのです(*´I`*)


無理なさらずに頑張って下さいね!
From: まるこ * 2012/05/09 02:27 * URL * [Edit] *  top↑

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レビュー
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シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
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レビュー
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