
緑くんは私の延長線上にいる人
緑くんの延長線上に
私はいる?
■珠玉の読切り集。
では表題作をご紹介。玉緒には最近、気になる存在がいる。毎日通う図書館に現れる男の子。思い切って、友達になってくださいと声をかけたら、すんなりOK。以来、図書館でよく一緒に過ごすように。彼の名前は緑くん、同じ中学2年生。不思議な雰囲気をまとう彼と、楽しい毎日を過ごす玉緒だったが、緑くんにはある秘密が…
昨年話題になりました、珠玉の読切り集のご紹介です。表題作含め、読切り4編を収録。とにかくみんな切ない。思春期の、少年少女の微妙で繊細な心を、絶妙に描き出します。少女マンガにありがちな、派手目で甘々な恋愛展開は一切ありません。なかには恋愛要素が登場しない作品も。でもその分、深みと温かみ、そして静かな切なさを、心いっぱい感じられるようになっています。

雪の日の図書館が、緑くんの放つ不思議な雰囲気をさらに強調する。
図書館と雪ってどうしてこうも素敵にマッチングするんでしょう。雪+図書館というモチーフの読切りといえば、ジョージ朝倉の「恋文日和」にも収録されていましたが、やはりどこか叙情的で、素敵な印象を受けました。雪と図書館で共通するのは、「静寂」という要素。全てから隔絶された、特別な空間を、雪がさらに多い包み、自分(と好きな相手)だけがそれを楽しんでいる。そんな感覚を、マンガを通して感じているのかもしれませんね。
また作中にテグジュペリの「星の王子さま」が登場し、ひとつのキーとして使われますが、これも個人的にストライク。上京する際に持ってきた本の中の一冊が、「星の王子さま」でした(今考えると痛い奴ですが、いいんですよ、好きなんだから)。思い入れが非常に強い作品が、物語に登場すると、それだけで心証は良いですね。
そんな作品を、見事に下世話なネタに変化させた先生が。竹内先生、アンタ最高だよ!なんか全く関係ない話になってしまいましたが、オススメですよってことです。

竹内元紀「シスター・ルカは祈らないで!!」より。「星の王子さま」の珠玉の名台詞が…。そんな発想ができるあなたが羨ましい。新連載、期待してます。
【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→優しく、切ない物語。派手さがないぶん、男性にも読みやすくなっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→非常に雰囲気の良い作品。オススメです。
作品DATA
■著者:羽柴麻央
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:ザ・マーガレット(平成18年6月号,平成19年11月号,平成20年4月号),別マスペシャル(平成17年春の増刊号)
■全1巻
■価格:400円+税
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