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Tag [オススメ] 2009.05.15
halfandhalf.jpg那波マオ「ハーフ・アンド・ハーフ」(1)


大好きだった初恋の男の子が
オカマになって
帰ってきた。



■2巻発売、完結しました。
 故郷で共に育った、幼なじみのいつきちゃん。いじめられっこだったヒナのことを、いつもなぐさめてくれた。それは間違いなくヒナの初恋で、そのときかけてくれた「お嫁にもらってあげる」という言葉は、今でも大事に大事に胸の中にしまってある。それから13年、あのいつきちゃんが帰ってきた!と思ったら、なぜだか絶世の美女になっていて…。昔の面影は皆無で、むしろちょっと毒舌になったいつきちゃんに、最初は幻滅したヒナだったけど、気がつけば、なんだか胸がときめいていて…。究極のアンバランスラブ、発進!

 初恋のあの人は、オカマになってました。衝撃の再会を果たしたいつきくんとヒナ。女(まだ付いてるけど)になったいつきくんは、親に勘当されて、逃げるように田舎の祖母の家に。ヒナの大切にしていた初恋の思い出は、みるみる崩れ去っていきます。それでもいつきくんは、多少(人として)逞しくなったけれど、面倒見のよさを見せ、ヒナのことを何かにつけて守ってくれます。それによりヒナの恋心は再燃。決して叶うことのない想いを抱えながら、いつきくんと対峙していくことになります。


ハーフ&ハーフ
やっぱりいつきくんは、いつきくんだった。


 見ためは美女で、良い男には目がない、ちょっと毒舌気味で、さっぱりとした性格、そして、多少のことではへこたれない。そんな逞しい女(?)になって帰ってきたいつきくんに、ひなは思わず恋してしまうわけですが、それは初恋のリソース(自分を助けてくれた)を呼び起こさせる出来事が再び起こったため。そうなるともうしょうがない。とはいえいつきくんは完全にオンナなわけですから、この想いが叶うことはありません。結局の所、この想いにどう決着をつけるか、というところに話はいきます。とはいえ設定が設定だけに、話はオカマネタを混ぜ込んだコメディ展開で、基本的には明るく進みます。そんな中、ふいに落とし込んでくる、気持ちを切に表したモノローグや台詞が、妙に胸に響きます。これは作者さんのウデでしょうね、すごい。コメディを描きつつも、伝える所はしっかり伝える。そういうの、私は大好きです。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→結構読みやすいと思います。甘々じゃないですし、コメディも良い感じ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→どうしようか迷ったのですが、2巻できちっと締めてきたことを評価。気持ちに決着を、というところだけなので、このぐらいでちょうど良いのです。変な設定ですが、描いているのは誰しもが抱えるような気持ち。擬似的な百合を感じた部分もあるのかもしれません。次作も楽しみですね。


作品DATA
■著者:那波マオ
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート(平成20年7月号~平成21年5月号)
■全2巻
■価格:各400円+税

■購入する→Amazonbk1


カテゴリ「デザート」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

全く知らんかったです、お恥ずかしい。
2巻ということで手軽に買えそうなので近いうちに買いたいですね。
いつきといづきって似てますね(え?w)
絵柄だけでなく展開力も併せ持っているということで作者追いしてみようと思いましたっ。
From: 遠藤 * 2009/05/15 23:58 * URL * [Edit] *  top↑
気づきませんでしたが、いつきといづき、確かに似てますね(笑)

那波マオさんは前作「ハロー・グッドバイ」がなかなか良く、追いかけ続けることを決めました。
絵柄は独特で、話運びもまだまだ荒削りな感はあるのですが、いつかきっとヒット作を飛ばしてくれると信じています。
From: いづき * 2009/05/16 02:25 * URL * [Edit] *  top↑

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