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2009.05.16
edennotoril.jpg藤田麻貴「楽園のトリル」(1)


部外者は口を出すな
ソイツは俺のペアだ



■6巻発売しました。
 自他共に認める、超不幸体質の高校1年生・鹿谷律。母の再婚に受験、双子の弟たちの世話、さらに母親の代わりに家事を自分がこなすというハードな毎日を送り、ついに胃に穴があいてしまった。これは良くないということで、家から一旦離れ、寮で暮らすことに。けれど何故か、送られた先は超セレブな特別寮。加えて音楽家に転科!?そこで待っていたのは、優秀だけど変わり者揃いの寮生たちと、学園でも超有名な天才児にして問題児の篁映里。律の受難の日々は、まだまだ続く…!?

 不幸体質のヒロインと、セレブな特別寮の寮生たちが繰り広げる、学園ラブコメディです。過去にヒロイン・律が、問題児・篁とやりあっているところを目撃した奈良先輩の計らいで、音楽科への転科&特別寮への入寮が決定、ヒロインの受難の日々が始まります。この寮ではペア制度というものを採っており、男女関係なくペアがあてがわれ、一緒に生活することに。要はシェアリングのような状態になるのですが、律のペアは超問題児・篁。彼の扱いには奈良も困っていて、律にその光明を見出したというわけ。寮には篁、奈良以外にも個性的な面々が揃っており、物語を彩ります。


楽園のトリル
最初はこのように、篁に振り回される律ですが、気づけば篁が振りまわされるように。


 「メイちゃんの執事」(→レビュー)や「花ざかりの君たちへ」などで、セレブな学園生活や、男子との寮生活ってのもさほど珍しい題材ではなくなってきましたね。さてこちらの作品もセレブな寮に、イケメン男子との同居という、まさにファンタジーな設定のお話。ヒロインは真っ直ぐですぐにはへこたれない気性の持ち主で、相手役は素行に問題のある天才児と、鉄板の組み合わせとなっています。設定が設定だけに、そこに持っていくまでの話運びはやや強引ですが、大切なのはそこからいかに楽しい物語を紡ぎ出すかということ。そこは実績ありの作家さんらしく、しっかりと描き上げてきます。また秋田書店らしく、キャラたちはややアクが強め。特に篁くんはいかにもこのレーベルという感じの男ですね。

 プライベートを尊重するのに同居で、しかも男女関係なくってのは寮としてどうなんだという感じもするのですが、だからこそ生まれる話というのもあるんでしょう。またそれだけでなく、音楽科に転科という所もストーリーに効いてきます。全て「不幸体質」で済ませてしまうのは可哀想ですが、それに負けないだけの強さがヒロインにはあるので、しっかりと物語として機能。ちょっとクセはありますが、面白い話に仕上がっていると思います。


【オトコ向け度:☆☆   】
→寮の男子との同居ものですが、いわゆるハーレムものとは一線を画します。その分読みやすくなっているとは思いますが、それを打ち消すように、男たちのキャラはクセが強い…。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→このレーベルらしさが出た学園ラブコメ。既視感のある設定も、取りようによっては鉄板となるわけで、こういう作品が好きな方は十分楽しめると思います。


作品DATA
■著者:藤田麻貴
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(2006年12月特大号~連載中)
■既刊6巻

■購入する→Amazonbk1


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