
「まぁでも
『送る』ってゆーのはもともと
もうちょい一緒に居たいって意味だから」
「そうなの?」
「そうだよ」
■12巻発売しました。
入学以来、クラスで一番仲が良いかのりと坂上。ある日一緒に参加した合コンで、それぞれ別の男の子と仲良くなり、結局二人ともつき合うことになった。けれど恋愛というものすらいまひとつ理解できていないかのりは、浩太と付き合っていることに、今ひとつ実感が湧かずにいる。それに対し、新しく出来た彼氏・江奈にどんどん夢中になっていく坂上。それをきっかけに、ふたりの仲は、だんだんギクシャクしてきて…
恋愛に友情、青春時代を過ごした人なら、誰しもがぶち当たるモンダイを、リアルな空気感で描き出していきます。合コンしたその日=出会ったその日にいきなり告白してきた浩太。かのりは、なんとなくOKを出してしまい、付き合うことに。それと同様に、かのりの友達・坂上香澄と、浩太の友達・江奈もその日の合コンをきっかけにつきあいはじめます。出会いとアプローチはそんな感じでしたが、意外と真剣な浩太は、かのりに合わせるように少しずつ距離を縮めていきます。それに対し、江奈にどんどん溺れていく香澄。しかし江奈は女癖が悪く、度々他の女といる所をかのりに目撃されます。友達のために言った方が良いのか、言わない方が良いのか…。また香澄も、江奈の態度などから、不満を募らせ、やがてその矛先はかのりに向くように。恋愛を描きつつも、真に描こうとしているのは女の友情の部分なのかもしれません。

モノローグやフキダシを頻繁に使い、ヒロインの心情を細やかに伝える。
かのりの家は家庭不和。また過去に友達と上手くいかなかった経験があり、それがずっと引っ掛かっている。他にも妊娠、中絶、レイプ、二股といった話が出てきます。一見ケータイ小説のように思えますが、雰囲気は180度違います。まぁいわゆるリア充とかDQNサイドの話が進むのですけど、ヒロインの心情が常に多めに描かれるので、意識の同化や感情移入がしやすくなっています。またそれに伴うように、物語が非常に淡々と流れる。少女漫画やケータイ小説では、何かしらの事件や出来事が起こると、これでもかと盛り上げにかかるのですが、この作品にはそういった部分がほとんどありません。ヒロインの心情は完全にオープンに伝えられつつも、それに反するように、空気感はドライで、一歩引いた位置から観ているような感覚。この感じがいかにも「cookie」だなぁ、と。「潔く柔く」もそうですが、Feelと並んでこざっぱり(だけど浅くない)した印象のある雑誌ですね。
結局はかのりと香澄の友情的なところに帰結するのかな、と。それでも恋愛というファクターを通してでないと、それが成り立たないというのは、やはり女性は恋愛ありきなのかなって気もします。女性同士の友情を否定するわけではないですが、やはり男性のソレに比べて、ひどく脆く、アンバランスな印象。だからこそ男は、そういった物語に惹かれるんですけどね。って私だけかもしれませんが。ってか香澄はしんどいなぁ…。幸せにとは言いませんが、もうちょい救いのある形にしてあげても良いんじゃなかろうか。程度の差こそあれ、香澄みたいな女の子っていますよね、結構。だからどうしたって感じですけど。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→ストーリーだけ見れば、男性にお薦めするような作品ではありません。けれどこの空気感は一度体感して欲しい。受け入れられる人はきっと多いと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→そろそろまとめに入ってもらいたい。これ以上重たくしてもねぇ、という感じ。とはいえ非常に引き込まれる作品です、是非一度手に取ってみてください。
作品DATA
■著者:藤末さくら
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックスCookie
■掲載誌:クッキー(平成15年11月号~連載中)
■既刊12巻
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