このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.05.19
07213438.jpgももち麗子「いのち」(1)


バイバイことり……
バイバイ アタシ



■2巻発売です。
いたずらっ子の「のばら」と、良い子を絵に描いたような「ことり」。見ためはそっくりだけど、性格は全く違う双子の姉妹。小学生の頃、のばらが川で溺れたところを助けようとして、父親が亡くなり、以来のばらは祖母の家で、ことりは母と共に生活するようになっていた。それから数年、高校生になったのばらとことりは、時折入れ替わり、お互いの生活を楽しむようになっていた。そして、いつものように入れ替わっていた最中、ことりが事件に巻き込まれ、殺されてしまう。絶望にうちひしがれた母を見たのばらは、入れ替わっているという真実を打ち明けられず、そのままことりとして生きていくことを決める…

 「いのち」の大切さを説くド直球感動ものと見せかけて…。まずは父の死からこの物語が始まります。忠告を聞かずに川に入り溺れてしまったのばらを助けようとしたところ、自分が激流に飲み込まれ、命を落としてしまいます。最愛の人を失った母は、思わずその感情をのばらにぶつけてしまいます。結果的に気まずくなり、家を出て祖母と暮らすことにします。それから数年、それでも母が恋しいのばらは、時折双子の姉・ことりと入れ替わり、母親に会いにいっていました。そんな最中に起こった、ことりの殺害事件。入れ替わったままだったので、殺されたのはのばらと認定されてしまいます。自分とことりを天秤にかけ、落ち込む母親を支えられるのはことりだと考えたのばらは、入れ替わったままことりとして生きていくことを決めます。1巻はそこで終了。2巻以降、殺人事件を巡るストーリーが展開されていきます。
 

いのち
入れ替わりの事実を唯一知っている優羽。彼の存在があることで、ちょっとした恋愛要素も追加される。

 
 こんなタイトルなので、お涙ちょうだいの感動物語かと思いきや、フィクション臭全開のお話で驚きました。入れ替わりがバレないなんてそんなことあるまいとは思うものの、一晩にして母親の髪が真っ白になったりと、基本的にはリアリティ追求じゃないのね。メインとなるのはタイトル通り「いのち」についてなのですが、入れ替わりという設定が組み込まれることで、2度美味しい構成に。またそのことを知っている人物(のばらの彼氏)を用意し、ドラマチックな空気感に拍車をかける形になります。これをどう取るべきか。個人的にはこの設定は面白いと思うのですが、なぜこの設定を組み込んだのかと聞かれると、確かに疑問符はつきます。

 展開が劇的で、感情の揺れ動きも激しいですが、フィクション臭を強く出すことで上手くバランスが取れています。ただこのストーリーでデザート連載ですか。別フレで丁度、下手したらなかよしに載っててもいいんじゃない?という感じがするのですが、そうなるとケータイ小説臭さが出てしまうのか。


【オトコ向け度:☆☆   】
→入れ替わりの部分は結構楽しめるのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ストレートなタイトルの割に、内容は良くわからない状況。オススメとなると厳しいですが、このある種カオスな展開は、取りようによっては面白い。


作品DATA
■著者:ももち麗子
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート(平成20年9月号~連載中)
■既刊2巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「デザート」コメント (7)トラックバック(0)TOP▲
コメント

初めまして。


私はそこまで酷くないと思いました。
一晩に白髪は、嘘みたいに思いますけど、歴史上の人物で言うとマリー・アントワネットの例が有名です…。
入れ替わりはばれない筈はないのでいずれ話が展開すると思いますが、この漫画の主軸は犯罪に巻き込まれた親族と最も近しかった人間の心情です。
その中で浮上してくる「いのち」こそ本題ではありませんか?
まだ今の時点でそこまで批評を下せる内容ではないと思います。


From: ゆう * 2009/09/06 22:17 * URL * [Edit] *  top↑
 はじめまして。
 コメントありがとうございます。

 まず白髪についてのお話ですが、髪の毛が一晩にして白髪になるというのは、生物学的にまずありえないといわれています(髪の毛の色素が作られるメカニズム上)。一晩で白髪というと、マリー・アントワネットがいわば代名詞となっていますが、それも、彼女の悲劇性を演出するために作られたお話だというのが通例です。

 そういったことからも、白髪化に関する描写を含め「リアリティがない」と表現したわけですが、私はそれを決してマイナス評価としているわけではなく、むしろどちらかといえば、プラスに受け取っているということを、わかっていただきたく思います。こういった演出があることで、メインとなるヒロインたちの心情(ゆうさんのおっしゃる、“犯罪に巻き込まれた親族と最も近しかった人間の心情”)をより浮き立たせることができ、物語としても一層面白くなる、と。その部分を伝えきれなかったのは、私の腕の無さゆえ。「酷い」と評したつもりはないのですが、結果としてそう感じさせてしまったということで、多少の至らなさもあったかもしれません。これからの課題にさせていただきたいと思います。
 
 また、この評価というのはあくまで2巻了読までの、それも私個人の私見に依るものですので、そこはご了承いただきたいと思います。
 
 貴重なご意見ありがとうございました!
From: いづき * 2009/09/06 23:36 * URL * [Edit] *  top↑
私もいのち買ってまーすv-237めっちゃ2おもしろいでなーv-10ヤバス、はまってもたーv-2384巻はよ出てほしーわv-222てかさーのばら可愛いやんなv-150ゆうわ、何でのばらの事分かったんやろv-236まあ、愛のちょっかんちゅうやつかなv-236(笑)良いわーこのマンガv-25命のとうとさが、よく分かってv-237いのちこれからも集めまーすv-10          by奈那v-22
From: 奈那 * 2010/02/12 20:24 * URL * [Edit] *  top↑
コメントどうもありがとうございました!
From: いづき@管理人 * 2010/02/12 21:55 * URL * [Edit] *  top↑
このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2011/06/18 21:21 *  * [Edit] *  top↑
めっちゃおもいろい!
ちょーなけるー


From: ひかる * 2011/08/19 11:20 * URL * [Edit] *  top↑
うけるv-14
From: ~名もなきお * 2012/03/30 20:24 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。