
岬凛子 27歳
伝える努力の入り口に立つ
物語ははじまったばかり
■化粧品会社の開発で働く岬凛子は、無味無臭の研究室で、毎日数字とにらめっこ。それでも、五感をフルに使う開発は楽しく、天職だと思っている。そんな彼女に、突然告げられた異動。広報部で、開発に詳しい人間が必要とされているのだという。天職だと思っていた開発から、全く畑の違う広報へ。開発として評価されなかったから?広報でなんてやっていけるのだろうか?そんな不安が頭をよぎりながらも、やるしかないと腹をくくる。そして広報としてのはじめての仕事…けれどそこには思わぬ試練が待ち受けていて…
27歳、仕事も形になってきて、そろそろ評価が欲しい年齢。そんな時期に、まさかの異動。それも開発から広報へ。全く勝手が分からない職種に、戸惑いつつも食らいつき、やがて楽しみとやりがいを見出していくというお仕事モノです。女性誌に載るようなお仕事モノは、男性の作品に比べて、自分と仕事というのが強くリンクしているんですよね。それで努力が比較的簡単に報われる(あくまでイメージですが)。この作品もその傾向が出ており、仕事で描かれる部分は狭く、また人間関係や自分についての描写も多くなっています。目指すところは、広報としてのサクセスストーリー。といっても全1巻なので、気持ちを広報に向けて努力し、やりがいを見出すという流れになっています。

理系男子の鍵山くん。そこで一歩出ないところが良いよね。でもそのネクタイの柄はどうだろう。
作者の河内遥さん、一挙4作でデビューという超大型新人で、太田出版の「ケーキを買いに」
原案として、化粧品会社広報に異動した女性の成長物語という枠組みがあったんでしょうかね。そこにドクターシーラボが協力してくるため、当然商品PRのページも入り込んできます。それゆえに結構制約が多いんじゃなかったのかな、と。ただ落としどころは「成功してハッピー」ではなく、「頑張ってみるか」という所なので読んでいて気分が良いですし、PRもそこまで目につくような感じはなく、比較的読みやすかったです。てか化粧品会社が一枚噛んでいるのに、作中で「美しさの秘訣は化粧品じゃなく、愛とセックス。それが真理だ」という表現が。男なんで化粧しませんが、私もこれには概ね同意。しかしそれをバシッと言ってしまうあたり、すごいなぁ。
キャラで気に入ったのが、開発で同僚だった鍵山くん。典型的な理系男子(スマートだけどね)で、凛子へのアプローチもなんだか変わっている。素直じゃないというか、一歩押しが足りないというか。でも変なところで積極的だったり。そういうキャラの不意に優しい言葉は、なんだか恥ずかしくて笑えるんですが、同時にすごい心に沁みるんですよね。こういうキャラを描ける人が増えてくれると、個人的にはうれしい。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→化粧品会社のことも広報の仕事も良く知らんので、これがリアリティ溢れてるのかどうかは判断しづらい。とはいえ流れとしては女性向けの仕事モノ作品そのものなので、男性としては少し物足りないと思うかも。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→素直な評価として、このぐらいが妥当かな、と。全1巻でスッキリまとめてあります。
作品DATA
■著者:河内遙 原案:墨染蓮 協力:ドクターシーラボ
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(2008年12月号~2009年5月号)
■全1巻
■価格:419円+税
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