衿沢世衣子「シンプルノットローファー」
今日も快晴!■モンナカール女子高等学校。何の変哲もない女子高に通う生徒達の、何気ない日常の欠片たちを、全12話の物語にのせて、お贈りします。
女子高の生徒達の、何気ない日常が描かれた連作短編集です。連載誌は「Quick Japan」。私も何度か読んだ事があったんですが、この度単行本になりました。話は続き続きになっているわけではなく、舞台だけが同じ。スポットが当てられる生徒も毎回違うので、キャラを覚えるという作業もほとんど必要ありません。というか毎回の話の冒頭を読むだけで、その子がどんな子なのか分かるように描かれています。さすが。またそれを逆手に取ってか、全12話で登場する生徒達は実に26名と多いです。もちろんそれぞれに名前があり、アダナ・部活・通学手段・今好きな事まで設定されています。そういった背景を見せずともしっかり設定しているからこそ、こういった話が描けるんでしょうね。

個人的に気に入ったのは中島あかり。こういう明るいキャラがいると、自然と話は動いていきます。いいですね。
これといった展開はありません。けれど、読んでいて全く飽きないし、面白い。女子高の日常というと「女子高生」が有名ですが、あちらが女子高生の生態をネタにしたのに対して、こちらはまんま日常をネタに昇華させた感じ。非常に読み心地が良い作品になっています。感覚としては「ヒャッコ」に近いでしょうか。こちらのほうがやや大人しめで、より「日常」を描いてる感がありますけど。
毎回毎回気持ち良い形で話を締めくくる手腕は凄いですよね。帯で女優の鳴海璃子さんが
何だろ。
女子校ってこんな感じなんだ。
学校が自分にとってこんな存在だったらいいなぁと
ゆっくりと心に染みちゃいました。
なんかちょっと憧れちゃいました。
と書いておられるのですが、そうなんですよ、ゆっくりと心に染みて、憧れる。別にこの感覚は女子校じゃないと味わえないってワケではないんでしょうが、やっぱり女子校って知らない者にとっては特別で憧れな存在なんですよね。
【オトコ向け度:☆☆☆☆☆】→これは読みやすいんじゃないでしょうか。男性誌にも見られる日常系の流れの中に、しっかり女性の色を落とし込んでいる。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】→淡々と日常を描いているだけなんですが、それだけでなんだか眩しい。これは良作。オススメです。
作品DATA■著者:衿沢世衣子
■出版社:太田出版
■掲載誌:Quick Japan(66号~79号)
■全1巻
■価格:900円+税
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