
…僕の質屋はね
普通の品物を扱う店じゃないんだ本当は
取り扱う質草は
人の感情の結晶
■人目につかない所にひっそりと佇む質屋。そこには、人間よりも妖怪の客が多く訪れる。店主の凍雨は、人間の若い男にしか見えないが、実は高名な妖怪と人間の間に生まれたハーフ。彼の能力はただ一つ、客が持て余す感情を結晶化し、質草として預かること。そんな不思議な質屋の凍雨と、なぜかその下僕となっている、元殺し屋の男・黄龍の元には、今日も新たな客人が訪れる…。
人間、幽霊、妖怪…客として訪れる彼らの持て余された感情を、結晶化して取り除く質屋。そんな不思議な力を持つ主人・凍雨と、その友人(下僕)・黄龍を描いたファンタジーです。元殺し屋で現在は泥棒をしている黄龍が、何故凍雨に良いように使われているかというと、今は亡き最愛の妹の感情の結晶が、凍雨の元に質草として預けられているから。それにつけ込み凍雨は、面倒な用事から雑用まで黄龍に押しつけます。

父の質問の本当の意味に、凍雨は気づかない。
一見「獏-BAKU-」(→レビュー)のような方面に流れるのかと思いきや、本当に描こうとしているのは二人の関係についてか。我が侭放題に育ったというわけではないのですが、成長期に人並みの人間付き合いをしていない凍雨は、黄龍を「友達」と言いつつも、便利な存在として認識。そのズレについては、黄龍も凍雨の父も認識しており、その状態から本来の「友達」の状態へ、依頼を通して変えていくのではないかな、と。
妖怪や幽霊や人間が入り交じり、結構カオスな状況ではあるのですが、ストーリーに深く絡めてくるわけではないので問題無し。淡いタッチと優しげな物語、そこを通して描かれる二人の関係は、不思議な心地よさを与えてくれます。ただ突き抜けるほどの面白さや魅力があるわけではないので、続刊購入は考えるところ。だらだら続けられたらやだなぁ…なんて思っていたら、これ小説
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→男祭りにならず、終始この人数で展開してくれるのであれば、男性でも余裕でいけるのでは。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→雰囲気が良い作品。表紙は良く作品の世界観を表していると思うので、ピンと来た方はチェックしてみてはどうでしょう。
作品DATA
■著者:前田とも/前田栄
■出版社:新書館
■レーベル:WINGS COMICS
■掲載誌:Wings('08年5月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税
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